魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第三百六十三話 ボコボコにしてやんよ

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 ホウリを寄ってたかって殴り続ける事数分、満足したわしらはホウリから離れる。


「ふぅ、このくらいで良いか」
「いやドン引きなんだけど?君達ってどちらかと言えば正義側だよね?」
「正義とは見方によって変わる。だから、ホウリを殴る事も正義だ」
「暴論の極みだね!?」


 なぜか敵の方がホウリを心配しておるな。


「じゃが、これでお主を守る者はおらん」
「大人しく降参してください」
「ぼ、僕を殺すとホウリも死ぬぞ!」
「ホウリお兄ちゃんならどうにかするんじゃない?」
「雑な信頼だな!?」
「という訳で死ねええええええ!」
「それってどっちに言ってるの!?」


 わしが拳を握って近づくと、男は焦った様子で手に持っていた板を操作した。あれはゲームのコントローラー?
 気にせずに殴ろうとすると、動けなくし筈のホウリが立ちはだかった。


「な!?ホウリは動けなくした筈じゃ!?」
「僕の能力は生物を操る能力!どれだけダメージを受けようと無理矢理に動かすことが出来る!」
「そのコントローラーでゲームキャラクターのように動かしている訳か!」
「その通り!このコントローラーは僕の手から離れず奪われない!これさえあれば僕は無敵だ!」


 勝ち誇る男を守ろうと、目に光が無いホウリが立ちはだかってくる。体中に痣を作りながらも守ろうとするその姿は、従順な騎士のようじゃ。


「どうだ!これで攻撃できま…………うぐわっ!?」


 男の顔面をホウリの顔面ごと殴りぬける。


「ならば!ホウリごと殴り抜けるまでじゃ!」
「どうしてそうなる!?」


 ホウリが背中、男が頭から壁に叩きつけられる。すると、ホウリの頭に不自然に傷が出来た。男を攻撃するとホウリにダメージがいくというのは本当みたいじゃな。少なくとも男を殺したらホウリも死ぬじゃろうな。


「無茶苦茶だよ君達!」
「そこまで褒めるではない。照れるではないか」
「褒めてない!」


 男がコントローラーを操作すると、ホウリが再び起き上がった。じゃが、その動きは緩慢でゾンビを彷彿とさせる動きじゃった。正直いって気持ちが悪い。


「ホウリのように、他の者も無理矢理に戦わせたのか?」
「そうだよ……って言いたいところだけど人間はあまり操ってないかな。人間を操るのは面倒だから魔物しか操ってないよ」
「つまり、スミルのヤマタノオロチはお前が操っていたのか?」
「その通り。ロワ君とミエル君が必死に戦っているのも見てたよ?」


 男が可笑しそうに笑う。まるで、気に入った映画の話をしているようじゃ。


「あのヤマタノオロチでスミルの街を滅ぼそうとしたのか?」
「その通り。まあ、騎士団と魔王に阻止されたけどね?ヤマタノオロチを揃えるの大変だったんだよ?」
「そんなの知るか」


 ミエルが大剣を振りかぶりながら男を睨みつける。


「貴様がどういう理由でスミルやオダリムを滅ぼそうとしたのかは知らん。だが、どのような理由があっても貴様を止める!」
「良いセリフだね?でもさ」


 ミエルの言葉に男が手を広げて嗤う。


「どうやって止めるの?僕を倒しても木村鳳梨が死ぬだけだよ?」
「確かにそうじゃな」


 奴を殺しても気絶させてもホウリは死ぬ。そうなるとわしでも手出しができん。ならば……


「とりあえず、ホウリを殴るか?」
「ですね」
「は?」


 わしはホウリの新月を握って力ずくで引きはがす。そして、足を払ってホウリを地面に押さえつける。


「よし!もう一度ボコボコにするぞ!」
「よし来た!」
「よーし!」
「行きますよ!」


 再度、わしらはホウリに向かって蹴る殴るの暴行を加える。


「足じゃ!足を重点的に狙え!」
「骨を折って動きを制限するんだね!」
「なんでそこまで非情になれるの!?親の仇でもそこまでしないと思うよ!?」
「食べ物の恨みは恐ろしいということじゃ!」
「普通は食べ物のことで命は狙わないと思うけど!?」
「命は狙っておらん!死なないギリギリまでボコボコにしておるだけじゃ!」
「ある意味では死ぬよりも酷いよね!?」


 ホウリの足を殴ると骨が折れる感覚が拳から伝わって来た。


「こんなものじゃな。さてと」


 わしはホウリを壁際にホウリを投げて男に向かい直る。


「これで本当にお主を守る者はいなくなったな?」
「キメているところ悪いけど、ドン引きだからね?洗脳されている人を複数人でボコボコにするなんて、普通はしないからね?」
「わしらが普通じゃと思ったか?」
「普通じゃない自覚はあるんだ」
「次はお主じゃ。覚悟せいよ?」


 拳を鳴らしながら、わしは男に近づく。瞬間、


「ぬおっ!?」


 急に後ろから大剣が振り下ろされた。わしは咄嗟に右に跳んで回避する。


「なんじゃ!?」


 振り返ってみると、ミエルが光の無い目で大剣を振り下ろしていた。


「まさか!」
「そうだよ。木村鳳梨は弱かったから捨てちゃった。代わりにミエル君を操ってみたよ」


 まさか、ミエルが操られるとは……。
 わしは歯嚙みしながらミエルと距離を取る。


「ミエルに攻撃は出来ん……どうすれば良いんじゃ……」
「その優しさを少しでも木村鳳梨にも向けてあげられなかったの?」
「ミエルは食事制限を強いてこないしのう」
「やっぱりそこが重要なんだ」


 一人では限界がある。ノエルやロワにも助けを求めようとしたところで、衝撃の光景が目に入った。


「ノエルとロワが戦っているじゃと?」
「あ、さっきの1人しか操れないっていうのは嘘だよ。この距離なら2人までは操れる」
「フランお姉ちゃん!ロワお兄ちゃんの様子が変だよ!」


 ロワが放った矢をナイフで弾きながらロワが言う。操られているのはロワか!


「木村鳳梨とかいう雑魚なんかよりも、最初っからこうすれば良かったよ。なんでか魔王とちびっ子は操れないみたいだし」


 男がコントローラーを操作しながら楽しそうに呟く。ホウリ曰く、わしとノエルはみっちゃんにとって重要性が高いから、洗脳されんようになっているらしい。
 じゃが、ホウリやロワ、ミエルはそうも行かん。神からもらった力であれば操られてしまうじゃろう。


「魔王とちびっ子だけで来れば操られることも無かったのにね?」
「くっ……ぬかったわい……」


 わしは歯ぎしりしながらミエルの大剣を右腕で受け止める。


「負けることは無い……じゃが、わしでは洗脳を解除できん……」
「良く分かっているじゃん」


 楽しいそうな男を無視して、ノエルへと視線を向ける。


「ロワお兄ちゃん!目を覚まして!」


 ノエルの言葉を聞いてもロワは矢を放ち続ける。


「無駄だよ。この洗脳は自力で解けるものじゃない」
「そんなぁ」


 ミエルはナイフで矢を捌きながらロワと交戦する。


「くっ……どうすれば……」
「君達が強いのは知っているけど、この状況でどうするつもりだい?逃げるかい?」
「それが出来んことはお主も分かっておろうに」


 撤退してもロワとミエルは洗脳されたままじゃ。根本的な解決にはなっておらん。
 ならば、みっちゃんに頼るしかない。どうにか隙を見つけて魔法陣を使えば、なんとかなる筈じゃ。


「あ、ちなみに、こういう事もできるんだよ」


 ミエルがわしに背を向けて、ロワに向かって大剣を振りかぶった。


「……スラッシュ」


 大剣からの斬撃が飛ばされてロワに向かう。


「な!?」


 咄嗟にロワとミエルの間に割って入り、斬撃を受け止める。


「フランお姉ちゃん!危ない!」


 すると、わしの後頭部に衝撃が走った。振り向くと、わしの後頭部目掛けてロワが矢を放っていた。


「僕は同士討ちさせることも出来る。対して、君たちは守りながら戦わないといけない。更に状況が悪くなったね?」
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