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第三百六十四話 おお、こわいこわい
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「どこまで耐えられるかな?」
ロワがノエルに向かって複製トリシューラを放つ。ノエルは魔装したナイフの側面で矢を受け止めて、後ろに受け流す。ノエルの背後の壁に受け流した複製トリシューラで穴があけられた。その威力からまともに受けたらただでは済まなかったことが分かる。
「ロワお兄ちゃん本気だよ!」
「後先を考えずに全力を出して来たか!」
「君たちを仕留められば温存する意味なんて無いしね。全力を出すしかないでしょ?」
男は飄々と答える。わしは腕で大剣を受け止めながら後ろに下がる。
「悔しいがここは───」
「君たちが撤退したら、街の真ん中で大暴れしちゃおうかなー」
男が楽しそうにコントローラーを操作しながら、わしが言おうとしたことを先回りする。
ロワとミエルが本気で暴れたらどのくらい被害が出るのか分かったものではない。これでは撤退することも出来んでは無いか。
「これで撤退も封じられた訳か」
「その通り。諦めて死んじゃえば?」
「調子に乗るでないぞ?必ずやその顔に拳を叩きこむからな?」
「やれるものならやってみれば?」
舌を出して挑発してくる男を横目に、わしはミエルに向き直る。
「ノエル!なんとか耐えて勝機を見出すぞ!」
「うん!」
「僕がこの2人を操っている限り、君たちに勝機なんて無いよ」
「じゃが、お主にも決定打は無いじゃろ」
わしは言うまでも無く、ノエルも魔装を使えば早々にやられることはない。勝てんまでも負けることもない。ここは出来るだけ勝負を引き延ばして隙を見つけるしかない。
「確かに魔王を倒すことはできない。それは僕も分かっている。けどね」
男はコントローラーをノエルの方に向ける。
すると、ロワが持っていた矢を自身の胸に突き刺した。
「な!?」
ロワの胸元から血液が溢れてくる。不味い!心臓まで矢が届いておる!このままではロワの命が危ない!
「ロワお兄ちゃん!セイントヒール!」
ノエルが目を見開いて、咄嗟にセイントヒールをロワに使う。
待て、なんで奴はロワを自爆させた?近くにはノエルがいるから傷がすぐに癒えるのは分かっておる筈じゃ。セイントヒールを掛けづつければ死ぬことは……まさか!
「ノエル!セイントヒールを使うな!」
「え?」
ロワがセイントヒールを使ったノエルに向かって襲い掛かった。
「おっと!」
ノエルは間一髪でロワの手から逃れ、ナイフを構えなおす。
「神の使いはセイントヒールを使っている間は魔装が使えないんだよね?これで戦闘能力は半分以下だね?」
「くっ!やはりそれが狙いか!」
男の言う通り、ノエルはセイントヒールを使っている間は魔装が使えん。魔装が使えんとノエルのステータスは普通の子供より少し高いくらいじゃ。戦闘能力は格段に下がる。
「下種が!」
「誉め言葉として受け取っておこうかな」
わしは歯噛みしながらミエルと対峙する。このままじゃとノエルが危ない。じゃが、ミエルから目を離すと何をされるか分かったものではない。
「おっとっと!」
ロワの攻撃をなんとか避けておる。じゃが、それもどこまで持つか分からん。
ノエルは魔装が無くてもある程度は戦える。じゃが、ロワは操られており攻撃をすることもできん。このままじゃとやられるのも時間の問題じゃ。
そう思っていると、ロワがノエルに向かって矢を放った。
「まだまだ当たらないよ!」
ノエルは右に跳んで矢を回避しようとした。瞬間、
「え!?」
足元に現れた白銀の盾に矢が当たり、ノエルの足へと軌道を変えた。
空中にいたノエルは矢を避けきれずに、矢を足で受けてしまった。あれはシン・プロフェクションガード!?神級スキルの真の力まで使えるのか!
「ノエル!」
「貰った!」
ロワがノエルの首を両手で掴み、床に押し倒した。
「うぐぐ……」
「セイントヒールは窒息には効かないんだよね?このまま死ね!」
「させるか!」
わしがロワに向かって突撃しようとした瞬間、白銀の盾が部屋を二分するように出現した。
見るとミエルが右手をかざしてシン・プロフェクションガードを使用していた。しまった、これでは様子を伺うことも出来ん。
「ちぃっ!敵にすると厄介じゃな!」
このままじゃとノエルがロワに殺されてしまう。先にミエルを倒そうにも大技を使えば跳ね返される可能性もある。シン・プロフェクションガードが無いにしても、ミエルの防御力は脅威的じゃ。倒す前にノエルがやられかねん。
「はっはっは!自分が強いと思っている相手を圧倒するのは、本当に楽しいね!」
罪悪感すら出さず、楽しそうに男は笑う。それを見て、腹の底から沸々と怒りが湧いてきた。
「下種が!楽に死ねると思うなよ!」
「おお、怖い怖い。何かされる前に魔王も殺さなくちゃ」
微塵も恐怖を感じておらん様子で男は笑う。まるで、ゲームで自分が思ったように殺人が出来たような、ある意味で無邪気な笑顔。それがわしの怒りを最高潮にさせた。
「決めた、お主には死すらも生温い。生まれてきたことを後悔させてやる」
「そういうのは勝ってから言えば?」
男がコントローラーを操作すると、ミエルが右手で大剣を振り上げる。
「ま、勝てる訳ないけどね!」
男がスイッチを押し込み、ミエルが大剣を振り下ろす。
「これで終わりだ!」
ミエルの大剣がわしの眼前に迫る。あと数ミリでわしの額に大剣が命中する、そう思った瞬間。
「……あれ?」
大剣があらぬ方向へ飛んでいき、壁に突き刺さった。
「な、何が起こった?」
男は何が起こったのか分からずに、壁に刺さっている大剣を見る。そこには大剣とそれを握るミエルから切断された腕があった。
「な!?」
男が切れた右腕から血が湧きだしているのを見て目を丸くする。
「仲間の腕を切り落したのか!?いつの間に!?」
「お主、自分の体のことも分からんのか?」
「ど、どういう意味だ」
「自信の右手を見てみい」
男が額に脂汗を浮かべながら自身の右腕に視線を向ける。
「あ、ああああああああああああ!?み、右腕がああああああああああ!?」
そこには切断されて地面に落ちた自身の右腕があった。男の右腕が切断されたから、ミエルの右腕も切断された。見る事が出来んがロワも右腕が切断されておるじゃろう。
男は膝を付いて右腕を凝視する。
「一体いつの間に……俺を攻撃するようなそぶりは無かった筈じゃ」
「お前を攻撃したのは俺だ」
「え?」
男が声をした方を向くと、そこには全身に青あざを作ったホウリがいた。男は言葉を失っている隙に、ホウリに髪の毛を掴まれて勢いよく床に叩きつけられた。
「ぐあっ!」
それと同時にミエルの頭にも衝撃が走り、部屋を区切っていたシン・プロフェクションガードも消えた。その隙を突いてミエルをチェーンロックでグルグル巻きにして拘束する。
「ノエル!」
わしはノエルの方を向くと、そこにはロワをロープで縛り上げていたノエルがあった。
「無事だったか!」
「うん!ロワお兄ちゃんが近づいてくれたから、刺さっていた矢を抜けたんだ。矢を抜いたら、セイントヒールを解除して魔装でロワお兄ちゃんを制圧したの」
「そうじゃったか。成長したのう」
「ああああああああああああああああああああ!?」
ノエルを撫でようと近づこうとした瞬間、背後から男の絶叫が聞こえた。
振り向くと、男がホウリに残った左足を踏まれていた。
「は、離せ!」
藻掻く男だったが、ホウリから逃れる事はできない。
「なんでお前が動けるんだよ!あれだけボコボコにされて骨折までしてただろうが!」
「HPポーションで骨折を回復しただけだ」
「くっ……だが、お前は木刀しか使えない筈!なんで腕の切断なんて出来た!?」
「魔装で刃を作れば新月でも腕の切断が可能だ。こんな風にな」
ホウリが男の左手に向かって新月を振るう。すると、中指以外の指が切断された。
「あああああああああああああ!?」
「さてと」
絶叫が部屋に響く中、ホウリが男の腕を無理矢理に動かす。
中指がコントローラーの中心にあるボタンに触れるようにして、新月の先端で手の甲を押さえつける。
「お前の操作を見ていたが、このボタンだけには触れてなかったな?これが洗脳解除のボタンなんだろ?」
「だったらなんだ!」
「押せ」
「誰がお前の言う事なんか───」
その言葉を聞いたホウリは、新月を男の手の甲に押し込む。
魔装で刃物のように鋭くなった新月は、男の肉にめり込み血液を噴出させる。
「っぐうううううう!?」
「立場が分かっていないようだな?これがお願いじゃなくて命令だ」
ホウリが更に新月を男の手の甲にめり込ませる。
「があああああ!?」
「あと数秒で手の神経を切る。その後は足、目、耳だ。全部済んだら、針とペンチの好きな方を選ばせてやる」
ホウリが新月をグリグリと動かしながら、感情無く言い放つ。その言葉を聞いた男には、さっきの余裕は無く恐怖だけが浮んでいた。
「不穏な動きを見せたら即座に神経を切断する。お前が助かるチャンスは今だけだと思え」
神経が切断されると、手が使えんくなる。それはロワとミエルの洗脳が解除されないと同時に、男の悲惨な未来も決まってしまう。つまり、ホウリは『今解除しないと死ぬよりも悲惨な目に合わせる』と言っておる訳じゃ。
男もそれが分かったのか、中指が細かく震えだす。
「5」
ホウリが唐突にカウントダウンを始めた。それと同時に新月が男の手の甲に徐々にめり込んでいく。
「4」
「ひいっ!」
男はプレッシャーに耐え切れなくなったのか、震える手で解除のボタンを押した。
「……あれ?ここは?」
「……私は一体何を?」
ロワとミエルの視線に光が戻り、きょろきょろと辺りを見渡し始めた。どうやら、洗脳は解除されたようじゃ。
「それでいい」
ホウリは新月を男の手の甲から離す。それを見て男は安堵の表情を浮かべ───手首から上を切断された。
「な、なあああああ!?言う事を聞いたのにいいいいいい!?」
男の絶叫が再び部屋に轟く。ホウリはそんな男の口に自身の靴の先をねじ込んだ。
「ふがっ!」
「うるせえ。少し黙ってろ」
男を一睨みしたホウリはわしの方を向く。
「フラン、魔法陣を頼む」
「う、うむ……」
「どうした?」
わしは魔法陣を準備しながらホウリの質問に答える。
「色々と言いたい事はあるが、これだけは言っておく」
「なんだよ」
「こやつも大概じゃが、お主の方が外道じゃ」
ロワがノエルに向かって複製トリシューラを放つ。ノエルは魔装したナイフの側面で矢を受け止めて、後ろに受け流す。ノエルの背後の壁に受け流した複製トリシューラで穴があけられた。その威力からまともに受けたらただでは済まなかったことが分かる。
「ロワお兄ちゃん本気だよ!」
「後先を考えずに全力を出して来たか!」
「君たちを仕留められば温存する意味なんて無いしね。全力を出すしかないでしょ?」
男は飄々と答える。わしは腕で大剣を受け止めながら後ろに下がる。
「悔しいがここは───」
「君たちが撤退したら、街の真ん中で大暴れしちゃおうかなー」
男が楽しそうにコントローラーを操作しながら、わしが言おうとしたことを先回りする。
ロワとミエルが本気で暴れたらどのくらい被害が出るのか分かったものではない。これでは撤退することも出来んでは無いか。
「これで撤退も封じられた訳か」
「その通り。諦めて死んじゃえば?」
「調子に乗るでないぞ?必ずやその顔に拳を叩きこむからな?」
「やれるものならやってみれば?」
舌を出して挑発してくる男を横目に、わしはミエルに向き直る。
「ノエル!なんとか耐えて勝機を見出すぞ!」
「うん!」
「僕がこの2人を操っている限り、君たちに勝機なんて無いよ」
「じゃが、お主にも決定打は無いじゃろ」
わしは言うまでも無く、ノエルも魔装を使えば早々にやられることはない。勝てんまでも負けることもない。ここは出来るだけ勝負を引き延ばして隙を見つけるしかない。
「確かに魔王を倒すことはできない。それは僕も分かっている。けどね」
男はコントローラーをノエルの方に向ける。
すると、ロワが持っていた矢を自身の胸に突き刺した。
「な!?」
ロワの胸元から血液が溢れてくる。不味い!心臓まで矢が届いておる!このままではロワの命が危ない!
「ロワお兄ちゃん!セイントヒール!」
ノエルが目を見開いて、咄嗟にセイントヒールをロワに使う。
待て、なんで奴はロワを自爆させた?近くにはノエルがいるから傷がすぐに癒えるのは分かっておる筈じゃ。セイントヒールを掛けづつければ死ぬことは……まさか!
「ノエル!セイントヒールを使うな!」
「え?」
ロワがセイントヒールを使ったノエルに向かって襲い掛かった。
「おっと!」
ノエルは間一髪でロワの手から逃れ、ナイフを構えなおす。
「神の使いはセイントヒールを使っている間は魔装が使えないんだよね?これで戦闘能力は半分以下だね?」
「くっ!やはりそれが狙いか!」
男の言う通り、ノエルはセイントヒールを使っている間は魔装が使えん。魔装が使えんとノエルのステータスは普通の子供より少し高いくらいじゃ。戦闘能力は格段に下がる。
「下種が!」
「誉め言葉として受け取っておこうかな」
わしは歯噛みしながらミエルと対峙する。このままじゃとノエルが危ない。じゃが、ミエルから目を離すと何をされるか分かったものではない。
「おっとっと!」
ロワの攻撃をなんとか避けておる。じゃが、それもどこまで持つか分からん。
ノエルは魔装が無くてもある程度は戦える。じゃが、ロワは操られており攻撃をすることもできん。このままじゃとやられるのも時間の問題じゃ。
そう思っていると、ロワがノエルに向かって矢を放った。
「まだまだ当たらないよ!」
ノエルは右に跳んで矢を回避しようとした。瞬間、
「え!?」
足元に現れた白銀の盾に矢が当たり、ノエルの足へと軌道を変えた。
空中にいたノエルは矢を避けきれずに、矢を足で受けてしまった。あれはシン・プロフェクションガード!?神級スキルの真の力まで使えるのか!
「ノエル!」
「貰った!」
ロワがノエルの首を両手で掴み、床に押し倒した。
「うぐぐ……」
「セイントヒールは窒息には効かないんだよね?このまま死ね!」
「させるか!」
わしがロワに向かって突撃しようとした瞬間、白銀の盾が部屋を二分するように出現した。
見るとミエルが右手をかざしてシン・プロフェクションガードを使用していた。しまった、これでは様子を伺うことも出来ん。
「ちぃっ!敵にすると厄介じゃな!」
このままじゃとノエルがロワに殺されてしまう。先にミエルを倒そうにも大技を使えば跳ね返される可能性もある。シン・プロフェクションガードが無いにしても、ミエルの防御力は脅威的じゃ。倒す前にノエルがやられかねん。
「はっはっは!自分が強いと思っている相手を圧倒するのは、本当に楽しいね!」
罪悪感すら出さず、楽しそうに男は笑う。それを見て、腹の底から沸々と怒りが湧いてきた。
「下種が!楽に死ねると思うなよ!」
「おお、怖い怖い。何かされる前に魔王も殺さなくちゃ」
微塵も恐怖を感じておらん様子で男は笑う。まるで、ゲームで自分が思ったように殺人が出来たような、ある意味で無邪気な笑顔。それがわしの怒りを最高潮にさせた。
「決めた、お主には死すらも生温い。生まれてきたことを後悔させてやる」
「そういうのは勝ってから言えば?」
男がコントローラーを操作すると、ミエルが右手で大剣を振り上げる。
「ま、勝てる訳ないけどね!」
男がスイッチを押し込み、ミエルが大剣を振り下ろす。
「これで終わりだ!」
ミエルの大剣がわしの眼前に迫る。あと数ミリでわしの額に大剣が命中する、そう思った瞬間。
「……あれ?」
大剣があらぬ方向へ飛んでいき、壁に突き刺さった。
「な、何が起こった?」
男は何が起こったのか分からずに、壁に刺さっている大剣を見る。そこには大剣とそれを握るミエルから切断された腕があった。
「な!?」
男が切れた右腕から血が湧きだしているのを見て目を丸くする。
「仲間の腕を切り落したのか!?いつの間に!?」
「お主、自分の体のことも分からんのか?」
「ど、どういう意味だ」
「自信の右手を見てみい」
男が額に脂汗を浮かべながら自身の右腕に視線を向ける。
「あ、ああああああああああああ!?み、右腕がああああああああああ!?」
そこには切断されて地面に落ちた自身の右腕があった。男の右腕が切断されたから、ミエルの右腕も切断された。見る事が出来んがロワも右腕が切断されておるじゃろう。
男は膝を付いて右腕を凝視する。
「一体いつの間に……俺を攻撃するようなそぶりは無かった筈じゃ」
「お前を攻撃したのは俺だ」
「え?」
男が声をした方を向くと、そこには全身に青あざを作ったホウリがいた。男は言葉を失っている隙に、ホウリに髪の毛を掴まれて勢いよく床に叩きつけられた。
「ぐあっ!」
それと同時にミエルの頭にも衝撃が走り、部屋を区切っていたシン・プロフェクションガードも消えた。その隙を突いてミエルをチェーンロックでグルグル巻きにして拘束する。
「ノエル!」
わしはノエルの方を向くと、そこにはロワをロープで縛り上げていたノエルがあった。
「無事だったか!」
「うん!ロワお兄ちゃんが近づいてくれたから、刺さっていた矢を抜けたんだ。矢を抜いたら、セイントヒールを解除して魔装でロワお兄ちゃんを制圧したの」
「そうじゃったか。成長したのう」
「ああああああああああああああああああああ!?」
ノエルを撫でようと近づこうとした瞬間、背後から男の絶叫が聞こえた。
振り向くと、男がホウリに残った左足を踏まれていた。
「は、離せ!」
藻掻く男だったが、ホウリから逃れる事はできない。
「なんでお前が動けるんだよ!あれだけボコボコにされて骨折までしてただろうが!」
「HPポーションで骨折を回復しただけだ」
「くっ……だが、お前は木刀しか使えない筈!なんで腕の切断なんて出来た!?」
「魔装で刃を作れば新月でも腕の切断が可能だ。こんな風にな」
ホウリが男の左手に向かって新月を振るう。すると、中指以外の指が切断された。
「あああああああああああああ!?」
「さてと」
絶叫が部屋に響く中、ホウリが男の腕を無理矢理に動かす。
中指がコントローラーの中心にあるボタンに触れるようにして、新月の先端で手の甲を押さえつける。
「お前の操作を見ていたが、このボタンだけには触れてなかったな?これが洗脳解除のボタンなんだろ?」
「だったらなんだ!」
「押せ」
「誰がお前の言う事なんか───」
その言葉を聞いたホウリは、新月を男の手の甲に押し込む。
魔装で刃物のように鋭くなった新月は、男の肉にめり込み血液を噴出させる。
「っぐうううううう!?」
「立場が分かっていないようだな?これがお願いじゃなくて命令だ」
ホウリが更に新月を男の手の甲にめり込ませる。
「があああああ!?」
「あと数秒で手の神経を切る。その後は足、目、耳だ。全部済んだら、針とペンチの好きな方を選ばせてやる」
ホウリが新月をグリグリと動かしながら、感情無く言い放つ。その言葉を聞いた男には、さっきの余裕は無く恐怖だけが浮んでいた。
「不穏な動きを見せたら即座に神経を切断する。お前が助かるチャンスは今だけだと思え」
神経が切断されると、手が使えんくなる。それはロワとミエルの洗脳が解除されないと同時に、男の悲惨な未来も決まってしまう。つまり、ホウリは『今解除しないと死ぬよりも悲惨な目に合わせる』と言っておる訳じゃ。
男もそれが分かったのか、中指が細かく震えだす。
「5」
ホウリが唐突にカウントダウンを始めた。それと同時に新月が男の手の甲に徐々にめり込んでいく。
「4」
「ひいっ!」
男はプレッシャーに耐え切れなくなったのか、震える手で解除のボタンを押した。
「……あれ?ここは?」
「……私は一体何を?」
ロワとミエルの視線に光が戻り、きょろきょろと辺りを見渡し始めた。どうやら、洗脳は解除されたようじゃ。
「それでいい」
ホウリは新月を男の手の甲から離す。それを見て男は安堵の表情を浮かべ───手首から上を切断された。
「な、なあああああ!?言う事を聞いたのにいいいいいい!?」
男の絶叫が再び部屋に轟く。ホウリはそんな男の口に自身の靴の先をねじ込んだ。
「ふがっ!」
「うるせえ。少し黙ってろ」
男を一睨みしたホウリはわしの方を向く。
「フラン、魔法陣を頼む」
「う、うむ……」
「どうした?」
わしは魔法陣を準備しながらホウリの質問に答える。
「色々と言いたい事はあるが、これだけは言っておく」
「なんだよ」
「こやつも大概じゃが、お主の方が外道じゃ」
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