魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第三百六十六話 やってられるか!

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 洗脳を持っていた男を憲兵に引き渡した俺はオダリムへと戻った。理由はとある奴らの処遇を決めるため。俺としては憲兵に全て任せるつもりだったが、とある理由によりとある場所に呼ばれた。


「はぁ、面倒だが行くしないか」


 オダリムの道を歩きながら、チョコバナナクレープをかじる。スイーツ食わないとやってられないな。
 クレープを食い終わるくらいに目的地にたどり着く。


「ここがリコット領主の館か」


 3メートルほどの塀に囲まれ、塀の中には見上げるほどに高い建物がある。それは館というよりも、ビルに近い。
 オダリムの領主、リコット・カルテットの館だ。


「ここに来るのも久しぶりだな」


 この世界に来たばかりの時、一度だけこの館に来たことがある。あの時はコネを作るのに躍起になっていたっけか。そのコネのおかげで防衛戦で無茶が通せた。何事も備えは大事だな。
 門から中に入り、館の扉の横についているボタンを押す。すると、扉が独りでに開いた。


「無駄にハイテクだよな」


 MPを大量に使うくせに扉を開くしか出来ない。無駄の極致みたいな魔道具だが、リコットが好きそうだ。
 扉から中に入ると無機質で飾り気のない部屋だった。ただ、壁に1~10のボタンと扉がついていて、その他には何も無い。
 俺はボタンを押して壁に付いている10のボタンを押す。すると、ガコンという音と共に軽いGが体にかかるのを感じた。
 この部屋はエレベーターになっていて、屋敷の部屋に直接登ることができる。エレベーターはこの世界にここだけにしか存在しない。理由は単純、MPの消費が激しすぎるからだ。
 エレベーターを動かせるだけの魔石を用意するとなると、かなりの金が必要になる。領主であり大富豪リコットくらいしか、エレベーターを動かすのは無理だろう。
 数秒後、チーンという音と共に扉が開いた。扉の中に入ると、そこは1階とは違って豪華な部屋だった。
 だだっ広い部屋には乱雑に壺や絵画などの調度品が置いてある。


「集めて満足して、保管することには無頓着だな」


 調度品が散乱しているなかで、入り口から部屋の奥に続くところだけ調度品が無い。
 そして、一番奥には木製の机があり太った男が座っていた。この街の領主であるリコット・カルテット、俺をここに呼んだ張本人だ。
 リコットの前には5人の人間が立っている。ロットとジル、そして、襲撃者の3人だ。
 襲撃者はカスケットと名乗っていた男、ロットに倒された女、そしてロワに憑依していた奴だ。女は澄ました顔をしているが、残りの二人は不安で俯いている。


「揃ってるな。俺が最後か」


 俺は早歩きで部屋の奥へと歩く。


「来ましたね」
「遅くなって済まない」
「構いませんよ」


 リコットが笑顔でそう告げる。事前に遅くなることは告げていたが、嫌に上機嫌だな。


「……ホウリ?」
「やっぱりお前も来たか」
「後始末をしなくちゃいけなくてな」
「揃いましたね。それでは始めましょうか」


 上機嫌なまま、リコットは話し始めた。


「あなた方をここに集めたのは、処遇を伝えるためです」
「……俺達は死ぬのか?」


 カスケットと名乗っていた男が恐る恐る聞く。


「本題に入る前にまずは自己紹介をしてくれませんか。私は貴方達の名前も知りません」
「小口 信也だ」
「安田 美香です」
「元永 光っす」
「シンヤにサカキにヒカルですね。私はオダリムの領主をやっております、リコット・カルテットでございます」
「それで、私たちはどうなるのですか?」
「結論から言いましょう」


 リコットは笑みを深めて口を開く。


「貴方達にはオダリムに協力していただきたいのです」
「……は?」


 思っても居なかった言葉に、信也から間の抜けた声が漏れる。対して美香は冷静に聞き返す。


「どういう事でしょうか」
「順を追って説明しましょう。あなた方に、また魔物を集めて欲しいのです」
「何でっすか?」
「儲かるからですよ!」


 リコットは興奮したように身を乗り出す。


「も、儲かる?」
「その通りです!魔物を集めて効率よく狩れば素材が集まる!それを加工し売り出せば、この街は更に儲かる!」
「ええ……」


 熱弁するリコットを見た3人は軽く引いている。それに気付いているのか分からないが、リコットの熱弁は続く。


「更に!魔物を効率良く狩れればレベルも上がる!魔物狩りに参加したい者は多いでしょう!」
「あ、はい」
「参加費を徴収すれば更に儲かる!」
「つまり、信也さんの魔物を轢きつける能力でお金儲けしようってことっすか?」
「簡単に言えばそうですね。サカキさんの力で参加者のステータスを上げれば安全性も増す。ヒカルさんの偵察能力も役立ちますね」


 やっぱり金儲けが目的か。どこまでもリコットらしい考え方だ。


「協力してくれるのであれば、貴方達の罪は帳消しにしましょう」
「え!?」
「なんでっすか!?被害が少ないとはいえ、おいら達がやった事は許されることじゃないっすよ!?」


 信也と光が目を見開いて驚く。ポーカーフェイスを貫いていた美香も、密かに眉を顰める。
 それを見たリコットは座りなおして、顎を撫でる。


「ホウリ、この街の被害状況は?」
「軽症者が363人。全員HPポーションで回復済み。街への被害は0。流通が少し制限されていて、街全体の売り上げが落ちたのが最大の被害だな」
「つまり、君たちは落ちた売り上げを戻すことが償いという訳だ」
「そんなの無茶苦茶だろ!?」
「そんなことが許されるのですか?」


 真理の疑問は最もだ。1人の采配で罪を取り消すなんて、日本じゃ考えられないだろう。だが、


「許されるぞ。この世界では領主の判断で罪を取り消すことが出来る。国家反逆罪みたいな大罪でもな」
「この世界の法律はどうなっているんだ……」
「あまり深く考えない方が良いぞ」
「そういう訳です。協力していただけませんか?」


 リコットが再び笑みを浮かべつつ、3人に問いかける。だが、その口調には強い迫力を感じた。
 3人にもそれが分かっているのか、生唾を飲み込む音が聞こえた。


「断ったらどうなりますか?」
「檻の中へ逆戻りですねぇ」
「選択肢は無いって訳っすか」


 檻の中へ戻るという事は処刑されるということだ。実質、選択肢は無いと思って良いだろう。


「ですが、大きな問題があります」


 そう、この条件には1つ大きな問題がある。


「その問題とは?」
「私達のスキルは既に消えてます。力になれないと思いますよ?」


 こいつらの力はゴミクズによってスキルを消されている。条件はこいつらがスキルを使えないといけない。


「それは存じております。ホウリ」
「はいはい」


 また俺が説明するのかよ。まあ良いけど。


「お前たちの力を条件付きで使用可能にできる」
「そんなことが出来るんすか!?」
「条件を飲むのならな」
「条件とは何ですか?」


 美香の言葉に俺はジルとロットを指さす。


「1人ずつお目付け役を付けて、そいつの許可が無いとスキルが使えないようにする。お目付け役を殺せばそいつも死ぬ。洗脳や憑依も効かない」
「好き勝手に能力が使える訳じゃないのか」
「それくらいの制限を掛けないと、また反逆するだろ?」
「もうあんな事はしねぇよ。少なくとも俺達は好きでやってた訳じゃないからな」
「そうなのか?」
「ああ。神に言われて仕方なくって奴だ」


 こいつらも神に無理やり戦わされていたか。なら同情の余地があるか。


「それでどうするんだ?」
「どうするも何も、飲むしかないだろ」
「死にたくないっすしね」
「そうですね」


 3人の意見は揃ったみたいだな。
 代表として美香がリコットに告げる。


「私達は条件を飲み、オダリムに奉仕することを誓います」
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