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第5章・ゴブリン・デスマーチ
仮面の男
しおりを挟む仮面をつけた男は、ゴブリンキングと互角に戦える実力を持っていた。
ゴブリンキングに強力な魔法を撃ち込み、ジュニアスのミスリルソードで斬り込む。
仮面の男は素早く、斬り込んでは反撃される前に飛び退き、ダメージは全く受けていない。
だが何度攻撃を仕掛けても、ゴブリンキングの硬い皮膚には、傷一つ付かなかった。
仮面の男は手にしたジュニアスのミスリルソードを見つめた。
「結構丈夫な剣だな……これなら……」
と呟くとミスリルソードを強く握り直した。次の瞬間、ミスリルソードの刀身が淡い緑色の光を放つ。
特殊な金属であるミスリルは、魔法を通しやすい性質を持っている。
仮面の男はミスリルソードに、風魔法を纏わせたのだ。
風魔法を纏わせたミスリルソードで、仮面の男が再びゴブリンキングへと斬りかかる。
先程は傷一つつけられなかったが、風魔法を纏ったミスリルソードは、ゴブリンキングの硬い皮膚を斬り裂いた。
「あの男……」
仮面の男は強力な斬撃と魔法でゴブリンキングを追い詰めていく。
あの男はこのままゴブリンキングに勝利してしまうのかもしれない――そんなことを思ったジュニアスの耳に、生き残っていた兵士や冒険者の声が届く。
あれは誰だ? ジュニアス様か?
いや、ジュニアス様は、俺たちを置いて逃げたはず……じゃあ、あれは誰だ?
ジュニアス様でないのなら、今ゴブリンキングと戦っている、ルリアルーク王にしか見えないあの男は、一体誰なんだ?
今にもゴブリンキングを倒そうとしているあの男は、本当に一体誰なのだろう?
普通に考えれば、ジュニアスの元に集まった冒険者の中の一人なのだろうが、あんな男が居たら何かしらの報告があってもおかしくないはずだ。
だから、誰もあの男のことを知らなかったはず。
では、あの男は誰なのか?
今世のルリアルーク王は自分でなければならないというのに、あの仮面の男は誰なのだ?
「うわああぁぁっ!」
ゴブリンキングが体勢を崩して膝をつき、仮面の男が止めを刺そうとした瞬間、ジュニアスは仮面の男とゴブリンキングに向かって、ウインドウォールを撃ち込んだ。
自分が狙ったのが、ゴブリンキングなのか仮面の男なのか、ジュニアスにはわからなかった。
ただ思ったのは、ルリアルーク王は自分だという強く邪な気持ちだけだった。
ウインドウォールに気づいた仮面の男が飛び退き、ウインドウォールはゴブリンキングに命中した。
だがゴブリンキングは、ウインドウォールを受けながらも立ち上がり、ジュニアスを見て笑った。
その笑みはまるで、探していた獲物を見つけたとでも言っているようにジュニアスには見えた。
「ひいっ!」
巨体に似合わぬスピードで自分の方へと走り出したゴブリンキングに驚き、ジュニアスは悲鳴を上げて尻餅をついた。
ゴブリンキングの巨体が走ると、地面が激しく揺れ、周りが見えなくなるほどの砂埃が舞う。
そんな中、ガキンと何かが折れたような音の後、ズドンという重い物が落ちたような音と共に地面が揺れた。
「おい、どういうつもりだ? 俺の邪魔がしたかったのか?」
砂埃のせいでよくわからなかったが、いつの間にか仮面の男がジュニアスのそばに居た。
ジュニアスは仮面の男が居るであろう場所を見上げると、必死に、「ルリアルーク王は俺だ!」と言い放つ。
そんなジュニアスの言葉を受けて、仮面の男はぷっと吹き出した。そして、
「そんなもの、俺はいらないし、なりたくない。コレと一緒にお前にくれてやるよ」
と言うと、ジュニアスのそばに何かを転がし、姿を消した。
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