異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央

文字の大きさ
2 / 370
第1章・異世界転移と異世界転生

一体、どうしてこうなった!②

しおりを挟む

 森の中に入って数分後、馬車が止まった。降りろと言われ、目的地に着いたのかと思ってそのまま素直に従うと、オルブリヒト兵は私に剣をつきつけてきたのだ。

「ジュニアス王子からは、お前の事は好きにしてもいいと言われている。まぁ、太った醜いお前相手は、そんな気は起こらないがな」

 兵士たちは笑いながら、私からリュックを奪い取ると、中に入れていた革袋を奪い取り、リュックサックを投げ捨てた。
 兵士たちが奪った革袋は、これからの生活のためにと、あの王子――ジュニアスが私に渡してくれたお金だった。

「これは後から山分けだ。あとは、他に何か価値がありそうなものはあるか?」

 乱暴に放られたリュックの中から飛び出たスマホと財布が、地面に転がっている。

「なんだ、これは。人形か?」

 と言って、一人の兵士が蹴ったものは、私のスマホだった。
 スマホケースがハリネズミのぬいぐるみタイプになっているもので、あまりの可愛さに、一目惚れしたスマホケースだ。
 触り心地はふわふわで、愛らしいつぶらな瞳がとても可愛いハリネズミのぬいぐるみ。
 サーチートと名付けて、いつも話しかけていた。

「その子を蹴らないで!」

 と叫んでサーチートに駆け寄ると、

「何言ってんだ、これはただの人形だろうが!」

 と笑う兵士は、サーチートを思い切り踏みつけ、私の体を突き飛ばした。
 そして、みっともなく地面に転がった私に、再び剣を突きつける。

「悪く思うなよ? 聖女様と共にここに来たお前の存在は、この国にとってかなり面倒な存在らしくてな、始末させてもらうぜ」

 くそう、兵士に指示をしたのは、あのジュニアスとかいう王子だろうか?
 それとも、王様の方だろうか?
 どちらにせよ、私は奴らに騙されたのだ。
 ものすごく悔しい。絶対死んだら化けて出てやると、心に誓う。

「では、死ねっ!」

 そう言って、三人の兵士たちは、剣を振り上げた。
 あれに斬られたら痛いんだろうなぁと思いながら、私はみっともなく頭を抱えて蹲り、来るであろう痛みに備えていたんだけど、痛みは全然来なかった。
 それどころか、

「うわっ!」

「ぎゃあっ!」

「ぐわっ!」

 と、兵士の方が悲鳴を上げている。
 一体どういう事なのだろうと顔を上げた私に、初めて聞く可愛い声がかけられる。

「オリエちゃん、大丈夫?」

「え?」

 顔を上げた私を見つめていたのは、黒いつぶらな瞳のぬいぐるみだった。
 ぬいぐるみは私を心配そうに見上げ、くい、と可愛らしく首を傾げる。

「え? なんで? どうなってるの? なんで?」

 私のスマホケースのハリネズミのぬいぐるみが、動いて喋っていた。
 ぬいぐるみは私の顔を見つめ、嬉しそうに笑い、短い手足をばたばたさせながら、

「ぼくの名前は、サーチート。オリエちゃんの、スマホだよっ!」

 と、可愛らしい節をつけながら歌い、踊ったのだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

裏の林にダンジョンが出来ました。~異世界からの転生幼女、もふもふペットと共に~

あかる
ファンタジー
私、異世界から転生してきたみたい? とある田舎町にダンジョンが出来、そこに入った美優は、かつて魔法学校で教師をしていた自分を思い出した。 犬と猫、それと鶏のペットと一緒にダンジョンと、世界の謎に挑みます!

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

孤児による孤児のための孤児院経営!!! 異世界に転生したけど能力がわかりませんでした

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はフィル 異世界に転生できたんだけど何も能力がないと思っていて7歳まで路上で暮らしてた なぜか両親の記憶がなくて何とか生きてきたけど、とうとう能力についてわかることになった 孤児として暮らしていたため孤児の苦しみがわかったので孤児院を作ることから始めます さあ、チートの時間だ

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

処理中です...