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第3章・冒険者デビュー
リュシーさんの事情②
しおりを挟む「リュシーさん、あの衣装、順調にできているんですか?」
と声をかけると、リュシーさんはまぁねと頷いた。
「順調だとは思うんだけど、もう少し客観的に見てみたいんだよね。だから、ユリウスに着てみてほしいんだ」
「あのなぁ、あの衣装を俺が着ても、仕方がないと思うんだが……」
ユリウスは嫌がっているけど、私はあの衣装を着たユリウスを、また見てみたいと思った。
だって前回、布を体に当てただけで、あんなにカッコ良かったんだよ。
順調に仕上がりつつある衣装を着たら、もっとカッコ良いに決まっているし、推し(好きな人)が素敵な衣装を纏っているのは、尊いのだ。
「ユリウス、駄目?」
上目遣いで見つめると、ユリウスはまた深い息をついたけれど、仕方ないなと頷いてくれた。
この人、ものすごく私に甘い。
でも、これっきりだと念を押された。
「あぁ、構わないさ。サンキューね。でも、タイミングが良かったよ。今日はこれから、依頼主が来るからね。最高の報告ができる」
「え? 依頼主? あんたもしかして、俺に衣装を着せてその人に見せようとしているのか?」
「うふふ、そうだよー。当たりー」
ニンマリと笑って、リュシーさんはユリウスを見つめた。
リュシーさんへルリアルーク王の衣装作りを依頼した人って、確か商人ギルドのギルドマスターだっけ。
そうか、その人が今日、あの衣装を見に来るんだ。
「やっぱり断る! 面倒事は嫌だ。衣装を見せるくらい、トルソーでいいだろう!」
部屋を出て行こうとするユリウスの腕を、リュシーさんががしりと掴む。
「まぁまぁ、衣装を着るくらい、いいじゃないか。ほら、アンタの可愛い奥さんだって気になっているみたいだしさ。それに、一度OKしたものを覆すなんて、愛しの奥さんの前でカッコ悪いとか思わないかい?」
「うっ……」
リュシーさんの言葉にユリウスが言い返さなかったところを見ると、諦めがついたのだろう。
「わかったよ」
「サンキュー!」
すっごい笑顔のリュシーさんに引っ張られ、ユリウスはリュシーさんのアトリエへと引っ張っていかれた。
「オリエちゃん、ルリアルーク王の衣装、楽しみだねぇ」
サーチートが小さな拳を握りしめて、目をキラキラさせながら言った。
私も多分、ユリウスには申し訳ないんだけど、今のサーチートと同じように、目をキラキラとさせているだろう。
リュシーさんが作った衣装、楽しみだなぁ。
サーチートに頼んで、写真撮っておかないとね。
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