246 / 370
第3章・冒険者デビュー
助けてコール
しおりを挟む翌日は何事もなく……とは行かなかったみたいだけど、サーチートからの助けてコールもなく、二人は無事にネーデの森から戻ってきてくれた。
だけど、ネーデの森にはやはり多くのゴブリンが居るらしく、邪魔をされてなかなか奥の方へと進めなくて、見つけたキヨラ草は三本だけだったらしい。
明日はいつもとは違う場所からネーデの森に入る事にすると言って、ユリウスは早めに寝てしまった。
あのユリウスが私を置いて早く寝るなんて、ちょっと驚いてしまう。
だけど、考えてみれば一人でゴブリンホイホイ状態のサーチートの護衛をしているんだもんね。
いくらユリウスでも、大変なんだろうな。
明日も何事もなく戻って来てほしい。
だけどその翌日、恐れていた事が起こってしまった。
『オリエちゃん、助けてー!』
と、サーチートからテレパシーで助けてコールが入った。
「オリエさん!」
「はいっ!」
サーチートの声は、私だけでなくアルバトスさんにも届いたようで、私は慌ててサーチートを召喚した。
「オリエちゃーん、怖かったよー!」
泣きながら飛びついてくるサーチートを抱きしめてあげると、サーチートは余程怖かったのか、ガタガタを震えていた。
あのユリウスと一緒に居て、サーチートがこんなにも怖がるなんて、一体何があったんだろう?
「大丈夫ですか、サーチートくん。何があったのですか?」
「あのね、ものすごくたくさんのゴブリンに囲まれたんだよ! それで、その中にホブゴブリンに進化したのも居たんだ!」
「ホブゴブリン?」
それは一体何なのかと首を傾げた私に、アルバトスさんはゴブリンの上位種なのだと教えてくれた。
「普通のゴブリンは、子供くらい……そうですね、オリエさんよりも少し低いくらいの身長ですが、ホブゴブリンは大人の男くらいの身長があり、普通のゴブリンの数倍強く凶暴になっています」
「え?」
その大きくて凶暴なホブゴブリンを含む、たくさんのゴブリンに囲まれたの? そんなの、想像しただけで怖い。
「ねぇ、サーチート、ユリウスは、どうして一緒に帰ってこなかったの?」
「え?」
どうしてサーチートだけが戻ってきたの? そんなに危ない状況なら、二人一緒に戻ってくればいいのに。
「ホブゴブリンって、すごく狂暴なんだよね? ユリウス、そんな危険な場所に一人残って、何かあったらっ! ユリウスは、どうしてサーチートだけを先に帰したの?」
「オリエさん!」
ユリウスの事が心配で我を失い、抱っこしたサーチートに詰め寄っていた私は、アルバトスさんに少し強い口調で名前を呼ばれて我に返った。
サーチートは小さな黒い目を潤ませて、私を見つめていた。
「ごめんね、オリエちゃん。ぼく、ユリウスくんに先に帰れって言われて、言う通りにしちゃったんだ。そうだよね、ぼくはその時、ユリウスくんも一緒に帰ろうって言うべきだったんだ。本当に、ごめんなさい」
小さな黒い目を潤ませながらぺこりと頭を下げるサーチートを見て、私はサーチートを傷つけてしまったのだと思った。
「ううん、私こそごめんね。サーチートは、悪くないよ。責めるみたいな言い方になって、ごめんね」
サーチートのふわふわの体を抱きしめて、もう一度ごめんと謝ると、私の腕の中でサーチートは首を横に振る。
「ううん、いいんだ。だってぼく、すごく怖かったから、ユリウスくんの言葉に飛び付いちゃったんだ。この怖い場所から逃げられるって、そればかりを考えて、ユリウスくんがその後どうなるかとか、考えなかったんだ」
サーチートは私の腕の中で、ごめんなさい、とまた何度も繰り返して、私はサーチートを抱きしめながら、サーチートが無事に戻って来てくれて良かった、嬉しいよ、と何度も繰り返しながら、ユリウスの無事を祈った。
ねぇ、ユリウス。お願いだから、早く帰って来て。
33
あなたにおすすめの小説
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
裏の林にダンジョンが出来ました。~異世界からの転生幼女、もふもふペットと共に~
あかる
ファンタジー
私、異世界から転生してきたみたい?
とある田舎町にダンジョンが出来、そこに入った美優は、かつて魔法学校で教師をしていた自分を思い出した。
犬と猫、それと鶏のペットと一緒にダンジョンと、世界の謎に挑みます!
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
天才魔導医の弟子~転生ナースの戦場カルテ~
けろ
ファンタジー
【完結済み】
仕事に生きたベテランナース、異世界で10歳の少女に!?
過労で倒れた先に待っていたのは、魔法と剣、そして規格外の医療が交差する世界だった――。
救急救命の現場で十数年。ベテラン看護師の天木弓束(あまき ゆづか)は、人手不足と激務に心身をすり減らす毎日を送っていた。仕事に全てを捧げるあまり、プライベートは二の次。周囲からの期待もプレッシャーに感じながら、それでも人の命を救うことだけを使命としていた。
しかし、ある日、謎の少女を救えなかったショックで意識を失い、目覚めた場所は……中世ヨーロッパのような異世界の路地裏!? しかも、姿は10歳の少女に若返っていた。
記憶も曖昧なまま、絶望の淵に立たされた弓束。しかし、彼女が唯一失っていなかったもの――それは、現代日本で培った高度な医療知識と技術だった。
偶然出会った獣人冒険者の重度の骨折を、その知識で的確に応急処置したことで、弓束の運命は大きく動き出す。
彼女の異質な才能を見抜いたのは、誰もがその実力を認めながらも距離を置く、孤高の天才魔導医ギルベルトだった。
「お前、弟子になれ。俺の研究の、良い材料になりそうだ」
強引な天才に拾われた弓束は、魔法が存在するこの世界の「医療」が、自分の知るものとは全く違うことに驚愕する。
「菌?感染症?何の話だ?」
滅菌の概念すらない遅れた世界で、弓束の現代知識はまさにチート級!
しかし、そんな彼女の常識をさらに覆すのが、師ギルベルトの存在だった。彼が操る、生命の根幹『魔力回路』に干渉する神業のような治療魔法。その理論は、弓束が知る医学の歴史を遥かに超越していた。
規格外の弟子と、人外の師匠。
二人の出会いは、やがて異世界の医療を根底から覆し、多くの命を救う奇跡の始まりとなる。
これは、神のいない手術室で命と向き合い続けた一人の看護師が、新たな世界で自らの知識と魔法を武器に、再び「救う」ことの意味を見つけていく物語。
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。
彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる