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第4章:ゴブリン・スタンピード
大丈夫だよ、安心してね
しおりを挟む『オ、オ、オ、オリエちゃーん! あ、安心してね! だ、大丈夫だよっ!』
突然頭に響いた、サーチートの声。サーチートからのテレパシーだ。
でも、大丈夫だって言っているわりには、声はものすごく震えている。
「サーチート! でも、すごい数だよ! 大丈夫なの?」
『そ、それは、ぼ、ぼくらだってびっくりしたけれど、だ、だ、大丈夫、きっと大丈夫だよ!』
まるで自分に言い聞かせるような言い方だ。
そりゃそうだよね、本当は怖くて仕方がないはずだもん。
『オ、オリエちゃんが居るそっちに、ゴブリンたちは絶っ対に行かせないからね! オリエちゃんは、ぼ、ぼくが守るからっ! じゃあ、今、忙しいからまたね!』
「あ、サーチート!」
おしゃべりなサーチートにしては珍しく、早々にテレパシーは終了した。
予想以上のゴブリンの多さに驚いただろうし、その対処に忙しいんだろうな。
怖がりなのに、サーチートは頑張ってくれるんだ。
『オリエ、俺も居るよ』
「ユリウス!」
今度はユリウスの声が頭の中で響く。
『オリエ、心配しないで。俺も絶対に君を守るから。そっちには、ゴブリンを一体も行かせるつもりはないから』
「ユリウス! ユリウスとこうやって話すの、初めてだね!」
『あぁ、そうだね。いつもサーチートが居たから、俺とオリエがテレパシーで話すことはなかったね。でも、使えないわけじゃない……。俺とオリエなんだから』
「うん、そうだね」
私もユリウスも、全ての呪文が使えるとステータスに書いてあった。
それに、それだけじゃなく、テレパシーの呪文は互いの絆の強さが関係しているらしい。
私とサーチートは、相棒。
サーチートとアルバトスさんは、弟子と先生。
そして私とユリウスは、恋人同士……ううん、夫婦だ。
強い絆で繋がっているよね。
『オリエ、サーチートが呼んだら、助けてあげてね』
「うん、わかってる」
サーチートは怖がりだから、早く呼び戻してあげることになるだろう。
『じゃあ、また後でね。俺を信じて待ってて』
ユリウスからのテレパシーもすぐに終了する。
少し焦っているようだった。さすがのユリウスにも余裕がないのだろう。
心配な私は、意識を集中させて二人を探した。
今二人がどこに居るかは知っている。
このガエールから北……ベルゼフ王国までの開けた場所に、二人は待機しているのだ。
『ゴ、ゴ、ゴブリンくんたちー! み、みんな、どこに行くの? こ、こ、こ、こっちにおいでよー!』
サーチートの声が聴こえたと同時に、私は二人の姿を見つけた。
ユリウスに高く掲げられたサーチートが、必死に叫んでいる姿が見える。
サーチートの首には、可愛い蝶ネクタイ――アルバトスさんが作ってくれた、蝶ネクタイ型の拡声器だ。
『ゴブリンくんたちの馬鹿―! おしりペンペンだよー! あっかんべー!』
そしてサーチートの声を聴いたゴブリンたちは、一斉にユリウスとサーチートが居る方向へと向きを変えた。
地響きが聞こえる――ゴブリンは恐らく一万体以上の大群だ。
二人とも大丈夫って言ってたし、ユリウスが強いのはちゃんとわかっているけど、やっぱり心配だよ。
これは、二人を信じていないんじゃなくって、ユリウスのこともサーチートのことも大切だから、愛してるから、どうしても心配しちゃうんだよね。
四方八方に散らばっていたゴブリンたちは、すごい勢いで二人がいる場所へと向かってくる。
まず近くに居たらしいゴブリンたちが、二人の元へとたどり着いた。
ユリウス、サーチート、どうか無事に戻ってきて。
祈るように手を組んだ瞬間、ユリウスたちの数十メートル手前で、爆発が起こった。
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