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オカリナ
しおりを挟むロンベルをオーガ集落へ送り届けた時だ。
「イサムさま、どうかオーガ達にも音楽と言うものを聞かせてやって下さい」
頭の何度も下げて頼み込むロンベル。
え!そんな風にされたら、断れないじゃぁーないか・・・
しかし、ハーモニカはもうないぞ。
あれなら出来るかも・・・
良さそうな土を探して粘土ぽい土があったぞ。
その土に手に取ってねってみた。
「これなら出来そうだ」
土に土魔法を念じて流す。
イメージは決まってる【オカリナ】だ。
近所のおばさんから教えてもらった記憶を頼りに製作だ。
すると土はコネコネとねられて、いい状態だ。
そして徐々に形らしくなったぞ。
出来上がったオカリナに、お決まりの穴をナイフで「この辺だったな」と開けてゆく。
そして固まれっと念じる。
「プー、ピー」ちょっと違うな、ナイフで穴を広げて調整だ。
「プー」まだダメか。
「パー、ピー、プー、ヘー」ここも違うな。
ヨシ「パー、ピー、プー、ペー、ポー」いいな。
G線上のアリアを吹いてみるぞ。
「ピーーーー、ピー」と昔を思い出して吹き続けた。
なんていい曲だ。
ああ、淡い恋心を思い出してくるぞ。その子も引っ越してしまったな・・・
ようやく1曲が終わったな。
あれ!なぜ大勢が聞き入っているんだ。
「ご覧ください。皆が自然に集まって聴き入ってます。故郷と違った感動をうけました。もう1曲、お願い出来ないでしょうか」
あっちこっちから凄い眼差しで「お願いします」と言われるなんて初めての経験だよ。
俺より上手い奴って、ゴロゴロいたのに・・・
気を良くした俺は、もう1曲を吹いた。
シューベルトのアヴェ・マリアだ。
この曲もゆっくりな曲だから、俺には吹きやすかった。
なんだかオカリナの音色だけが支配したような光景が広がってるぞ。
そんなに気にいったのか・・・
大勢のオーガが静かに聴き入ってるぞ。
あ!押し間違えた。
初めて聴く曲だ。間違っても分からないからいいぞ。
もう、どれだけのオカリナ製作をしてるんだよ。
「キリがないぞ」
隣では、ロンベルが必死に「ピー、ピー」と吹いて調整中だ。
それでも、まだかまだかと待ちわびる数は100人ぐらいも居るぞ。
俺が手を止めた事で、悲しそうな表情で見られても・・・そんな顔をするなよ。
「イサムさま、もう少しです頑張りましょう」
ロンベルは、そんな事を言ってニコッと笑ってぞ。
遠くのあっちこっちでオカリナが鳴り止まない中で、麦畑を案内さていた。
集落の代表、青いオーガにもハンクって名を付けてやった。
見事に麦畑を完成させた褒美として・・・
「名なんか勝手に付ければ良い」って言ったのに、それをしないオーガ。
名は俺からもらう物だと決め付けてる。それも認められた証らしい。
勝手に付けてくれって何度も言ってもダメだった。
あ!麦畑が見えて来たぞ。
更に畑を広げたようで、麦を刈り取っている風景がいい感じだ。
なんだか落穂拾いの洋画を思いだしたよ。
旧約聖書「レビ記」19章9節から「穀物を収穫するときは、畑の隅まで刈り尽くしてはならない。収穫後の落ち穂を拾い集めてはならない。・・・これらは貧しい者や寄留者のために残しておかねばならない。」とある。
そんな説明を洋画全集を開いて、じいちゃんが話してくれたっけ。
「どんな意味があるの」と聞いたな。
「それは、大きくなれば分かる事だな」ってはぐらかされた。
大きくなった今の俺でも、ハッキリした答えはでなかった。
なんか湿っぽくなってきたな。
水車小屋も案内された。
「もう出来上がったのか・・・」
「総出でやりました。こんな画期的な物は始めてです。それも自分達の手で作りあげたなんて誇りです」
その隣には立派な倉庫もあった。
「ネズミの被害ってないのか・・・」
「ねずみ・・・分かりません」
あれ!ここにはネズミは居ないのか・・・
ハンクを鑑定し続けて、理解した。
ネズミに似た山ネズミは居るらしい。しかし、オーガに探知されて素早く抹殺されている。
え!探知ってなんだ。
色々とハンクから聞いたぞ。
ハンクが言うには、気を放出するらしい。
その気を読み取って何が周りに居るのか理解してるらしい。
「すると小さな生き物でも探知できるのか」
「はい、1度見た生き物ならすぐに何か分かります」
「それをやって見せてくれ」
「やりますよ」
あ!そうか・・・マナと繋がって感じてるのか・・・これはいいぞ。
俺も真似てやる。お、反応してるぞ。
ロンベルが走りながらこっちに向かっているぞ。
「イサムさま、大変です。子供が崖から落ちて気を失って・・・助けて下さい」
「それは大変だ。ロンベル、イサムさまを急いで案内しろ」
見た瞬間に思い出した。この子は、毒に犯された子だ。
それも体力回復が苦手な子だ。だから治りが遅すぎるんだ。
鑑定の開始だ。
右足と右腕の骨がポキッて折れていた。
外見の症状は軽い打撲程度で、オーガならの丈夫さを発揮したようだ。
癒しの光を発動。
骨もガッツリとつながって、打撲も完治。
「もう!この子ったら・・・」
母親が抱きついて、小言を言ってるぞ。
「ロンベル、これは【やく草】の種だ。これを栽培して絞った液は体を治すポーションになるんだ。1度試してくれ」
「分かりました。イサムさま」
これで俺が居なくても、ある程度の傷なら治るだろう。
オーガは、頑丈だから。
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