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人が多すぎたので、異世界に行くことになりました!
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目を覚ましたら、白かった。
天井も床も壁もない。ただ、どこまでも均一な白。
「……ここ、どこ?」
最後の記憶は、仕事帰りに寄ったスーパー。
半額シールの貼られた鶏むね肉を見て、
「冷凍しとけば一週間もつな」
なんて、極めて平和なことを考えていたはずなのに。
「おはよう」
背後から、やけに気軽な声がした。
振り返ると、そこには
白いローブを着た、性別の判別がつかない人が立っていた。
若いような、年老いているような、曖昧な存在感。
「……誰ですか?」
「神様」
即答だった。
「……神様」
「うん」
否定しない。
むしろ当然、みたいな顔をしている。
「夢ですか?」
「違うね」
「過労死?」
「それも違う」
「じゃあ……」
「転生」
その言葉を聞いた瞬間、なぜか驚きより先に
「あ、やっぱり」
という納得が来た。
不思議だった。
怖くない。取り乱しもしない。
神様は私を上から下まで眺めて、満足そうに頷いた。
「君、日本に未練なさそうだよね」
「……否定はしません」
実家には特別な事情もない。
友達は少ない。
仕事は嫌いじゃないけど、生きがいというほどでもない。
老後のために貯金して、
体調に気をつけて、
静かに歳を取る予定だった。
「それが不満?」
「不満というか……
このまま死ぬまでこれか、とは思ってました」
神様は手を叩いた。
「ほらね!」
「?」
「だから君にしたんだよ」
神様は、やたら楽しそうだった。
「日本ね、人が多すぎるんだ」
「急にスケールが大きいですね」
「多すぎる。管理が大変。
異世界は人手不足。
だから、もらうことにした」
「もらう?」
「君を」
言い方が雑すぎる。
「理由、それだけですか?」
「それだけ。
あとは気分」
「神様って気分で人の人生変えるんですか」
「うん」
即答二回目。
「でもさ、適当に選んだわけじゃないよ?」
神様は指を立てる。
「君、異世界に行きたいって真剣に考えてたでしょ」
ドキッとした。
「なろう系、好きだし」
「……はい」
「もし行くなら何が必要か、
何が怖いか、
何があったら安心か、
ちゃんと考えてた」
「……現実逃避じゃないです」
「知ってる。
だから君にした」
胸の奥が、じんわり温かくなる。
「転移と転生、選べるけど?」
「転生でお願いします」
即答した。
「理由は?」
「今の体も年齢も、持っていく理由がないので」
神様は一瞬、目を丸くしてから笑った。
「合理的。いいね」
「外見と年齢、変えてもらえますか」
「何歳がいい?」
「15歳くらいで」
「欲張るね」
「スローライフには若さが必要です」
「顔は?」
「とびきり可愛く。
でも目立ちすぎない感じで」
「注文多いなあ」
「あと髪は明るめの茶色、瞳は翡翠色で」
神様は空中に何かを書き込む仕草をする。
「スキルは?」
「生きるために必要なもの全部」
「……」
「鑑定、インベントリ、言語理解、地図」
「うん」
「全属性魔法と創造魔法」
「うん」
「精神安定、恐怖緩和」
「うん」
「病気無効、毒無効、状態異常無効」
「うん」
「悪意あるもの寄せ付けない系も」
「うん」
「ネットスーパーとChatGPT」
「……ChatGPT?」
「必須です」
神様は少し考えてから頷いた。
「まあ、いいか」
「お金も」
「はい?」
「日本で貯めた分、換金してください」
神様は笑った。
「君、本当にスローライフする気だね」
「お金がないと心が荒みます」
「正直だ」
神様は手を広げた。
「いいよ。
全部あげる」
「……いいんですか?」
「だって君、
異世界に行くのを“逃げ”じゃなくて
“選択”だと思ってるでしょ」
私は、少しだけ考えてから頷いた。
「はい」
「なら問題ない」
白い空間が、ゆっくりと歪み始める。
「準備はいい?」
「はい」
「じゃあ」
神様は楽しそうに笑った。
「異世界、行ってきな」
次の瞬間、世界がひっくり返った。
天井も床も壁もない。ただ、どこまでも均一な白。
「……ここ、どこ?」
最後の記憶は、仕事帰りに寄ったスーパー。
半額シールの貼られた鶏むね肉を見て、
「冷凍しとけば一週間もつな」
なんて、極めて平和なことを考えていたはずなのに。
「おはよう」
背後から、やけに気軽な声がした。
振り返ると、そこには
白いローブを着た、性別の判別がつかない人が立っていた。
若いような、年老いているような、曖昧な存在感。
「……誰ですか?」
「神様」
即答だった。
「……神様」
「うん」
否定しない。
むしろ当然、みたいな顔をしている。
「夢ですか?」
「違うね」
「過労死?」
「それも違う」
「じゃあ……」
「転生」
その言葉を聞いた瞬間、なぜか驚きより先に
「あ、やっぱり」
という納得が来た。
不思議だった。
怖くない。取り乱しもしない。
神様は私を上から下まで眺めて、満足そうに頷いた。
「君、日本に未練なさそうだよね」
「……否定はしません」
実家には特別な事情もない。
友達は少ない。
仕事は嫌いじゃないけど、生きがいというほどでもない。
老後のために貯金して、
体調に気をつけて、
静かに歳を取る予定だった。
「それが不満?」
「不満というか……
このまま死ぬまでこれか、とは思ってました」
神様は手を叩いた。
「ほらね!」
「?」
「だから君にしたんだよ」
神様は、やたら楽しそうだった。
「日本ね、人が多すぎるんだ」
「急にスケールが大きいですね」
「多すぎる。管理が大変。
異世界は人手不足。
だから、もらうことにした」
「もらう?」
「君を」
言い方が雑すぎる。
「理由、それだけですか?」
「それだけ。
あとは気分」
「神様って気分で人の人生変えるんですか」
「うん」
即答二回目。
「でもさ、適当に選んだわけじゃないよ?」
神様は指を立てる。
「君、異世界に行きたいって真剣に考えてたでしょ」
ドキッとした。
「なろう系、好きだし」
「……はい」
「もし行くなら何が必要か、
何が怖いか、
何があったら安心か、
ちゃんと考えてた」
「……現実逃避じゃないです」
「知ってる。
だから君にした」
胸の奥が、じんわり温かくなる。
「転移と転生、選べるけど?」
「転生でお願いします」
即答した。
「理由は?」
「今の体も年齢も、持っていく理由がないので」
神様は一瞬、目を丸くしてから笑った。
「合理的。いいね」
「外見と年齢、変えてもらえますか」
「何歳がいい?」
「15歳くらいで」
「欲張るね」
「スローライフには若さが必要です」
「顔は?」
「とびきり可愛く。
でも目立ちすぎない感じで」
「注文多いなあ」
「あと髪は明るめの茶色、瞳は翡翠色で」
神様は空中に何かを書き込む仕草をする。
「スキルは?」
「生きるために必要なもの全部」
「……」
「鑑定、インベントリ、言語理解、地図」
「うん」
「全属性魔法と創造魔法」
「うん」
「精神安定、恐怖緩和」
「うん」
「病気無効、毒無効、状態異常無効」
「うん」
「悪意あるもの寄せ付けない系も」
「うん」
「ネットスーパーとChatGPT」
「……ChatGPT?」
「必須です」
神様は少し考えてから頷いた。
「まあ、いいか」
「お金も」
「はい?」
「日本で貯めた分、換金してください」
神様は笑った。
「君、本当にスローライフする気だね」
「お金がないと心が荒みます」
「正直だ」
神様は手を広げた。
「いいよ。
全部あげる」
「……いいんですか?」
「だって君、
異世界に行くのを“逃げ”じゃなくて
“選択”だと思ってるでしょ」
私は、少しだけ考えてから頷いた。
「はい」
「なら問題ない」
白い空間が、ゆっくりと歪み始める。
「準備はいい?」
「はい」
「じゃあ」
神様は楽しそうに笑った。
「異世界、行ってきな」
次の瞬間、世界がひっくり返った。
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