【完結】完璧アルファな推し本人に、推し語りするハメになったオレの顛末

竜也りく

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目を逸らしていたかった

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オレの言葉に、アルロード様が悲しそうに眉を下げる。

その顔を見てハッとした。

しまった、卑屈に聞こえてしまっただろうか。そんな顔をさせたいわけじゃないのに。

「あ、あのオレ」

「すまない、こんな事を聞くべきじゃないとは思ったんだ。でも、考えれば考えるほどどうしても心配になってしまって……できることならば正直に答えて欲しい」

「は、はい」

あまりにも真剣な顔でそう言われて、思わず生唾を飲む。

「ルキノ、君は自分がオメガだという事に馴染めないと言っていたね」

オレが頷くのを確認してから、アルロード様は言葉を継いだ。

「それなのに……君の言った通り、御父君は結婚相手を精力的に探しているようだ。しかも既に妻を持っている御仁を優先的にあたっていると聞いて……まだ気持ちも固まらないうちに性急に事が進むと、ルキノは辛くないのか?」

そう問われて、オレは咄嗟に声が出なかった。

アルロード様に問われたら、何でも誠実に答えようと思っていたのに、この質問はオレにとって即答できるほど簡単なものじゃなかった。

自分自身ですら、自分が本当はどう思っているのか分からない。

向き合いたくなくて、目を逸らしていたのかも知れない。

それでも、アルロード様がオレの事を心配して真剣に聞いてくれているのが分かるから、オレはこの問題に向き合わざるを得なくなってしまった。

声すら出なくて口を無駄に開けたり閉めたりしているオレを急かすでもなく、アルロード様は辛抱強くオレの答えを待っている。

「辛くない……と言ったら嘘になる、と、思います……」

絞り出した声は、そんな言葉を綴っていた。

「ただ、その……オレも本当に複雑な心境で……正直言えばオメガの自覚もハンパなのに嫁ぐなんて嫌だけど……でも学園を卒業したらオレ、就職もできなくて家族に迷惑かけるだけだし、情けなくて惨めだろうって思うと……」

学園に通ってる間は楽しくやれてるけど、同期の奴らが騎士になって活躍する姿を見たら、多分オレは奴らが羨ましくて悔しくて、きっと平静じゃいられない。

同期からは取り残されてやることもなく、家族からは不憫だと思われて腫れ物に触るように気遣われる中で、身の振り方を悩む日々を送るのは、それはそれで辛いだろう。

「もし本当に『嫁』って言いつつ護衛みたいに扱ってくれる人がいるなら、オレ、その人に嫁ぎたいかも。ちょっとは誰かの役に立ってるって思えるし」

オメガであるオレがどう扱われるのか、想像がつかないわけじゃない。

でも、あえてそこには触れない。……触れたくなかった。

アルロード様がオレをオメガだって認識したのは昨日の夜会での事だった。なのにもう父さんがどんな人に声をかけているのかまで知ってるのもびっくりだけど、わざわざ妻帯者に嫁がせようとしてるなんて聞くと、さらに気持ちは重くなる。

ただでさえ男と結婚するなんて勘弁して欲しいのに、第二夫人確定とかサイアクだろう。どう考えても十や二十は年上で話も合わないだろうし、奥さんや使用人からの目も冷たそうで、今から胃が痛い。

いやでも別に奥さんがいるなら、褥は最低限ですむかも。それは嬉しい。

ていうか、奥さんが嫌がったらもしかして褥はナシって事もありえるのか? でもそうなると逆にヒートの時は辛い思いをするのか?

この問題になると、どう転んでも自分が嬉しいのか悲しいのか、よく分からなくなる。

こんな事、考えなくて済めば一番いいのに。

何も考えず、流されるまま嫁いでしまえば、それはそれでいつの間にか時間が過ぎてたいしたことじゃないって思える日がくるのかもしれない。淡くそう期待していた。

……しまった、うっかり考え込んでしまった。

ハッとしていつの間にか項垂れていた顔を上げたら、俺よりも余程悩んだ顔のアルロード様がいて、オレは慌てる。

「すみません! 大丈夫ですから! ホントに心配しないでください」

オレの麗しの推しをオレごときの事で悩ませてしまうだなんて言語道断だ。そう思ったのに、アルロード様は寂しそうに微笑する。

「心配くらいさせて欲しい」

そのお顔がすこぶる美しくて、また初めての表情を間近で見ることができたという幸運に、心臓は勝手に踊り出す。

こんな泣きたい気分の時でも、アルロード様は微笑みひとつでオレの気持ちをギュンと引き上げてくれるんだ。

「アルロード様のおかげで、なんか元気出ました! きっとなんとかなります!」

根拠も何もないけど、アルロード様のご尊顔を見ていたら、本当になんとかなる気がしてきた。

もし結婚後の生活が辛くても、こんな風にたまにアルロード様のお顔を見ることができたなら、きっと元気でいられるのに。

いや待てよ?

高位貴族に嫁いで本当に護衛ができるなら、時々は遠目からでもアルロード様のお姿が拝めるのでは!?

普通に誰かの嫁になって邸の番人になるよりは、夜会だけじゃなく登城の時とかにも顔を合わせる可能性がなくもない!

それってだいぶいいんじゃない?

「よくよく考えたら、第二婦人で護衛、最高かもしれないです。オレ、父さんが頑張ってくれるの大人しく待ちます!」
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