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序章
エピソード? アネッサ?サイド 前編
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「う……ん」
アレここは一体どこ?
何かジメジメしている。
私は暗い部屋に閉じ込められている?
確か喫茶店のような所の御手洗いで、誰かと間違えられて何か嗅いだことない物で気を失われたよう気がする……
身体はどこも痛めてないみたいだわ。
暗闇にまだ目が慣れていないが、辺りを見渡すと女の子のような人影が倒れていた。寝息が聞こえるので気絶しているようだ。
取り敢えずこの場所から出る為に、何か手がかりがないか探さないと。
床になにか仕掛けがないか物音に集中しながら奥に見える扉に近づき、扉の向こう側にある壁掛けの蝋燭から見える。耳を澄ますと奥の方から看守と思われる人の声が聞こえてくる。
「声や足音から看守は二名ね」
私は看守たちが何を話しているのか?
扉に耳をつけて更に聞き耳を立てた。
「皇太子の誘拐も楽な仕事だったな」
「これで、あとは大金を貰って国外で優雅に暮らせるな」
「ハッハッハ、違いねえ」
「そういやよ~あの嬢ちゃんはどうするよ」
「まぁオレらで楽しむには小さすぎるから、奴隷に出したら高く売れるだろう」
成る程、私を皇太子と間違えて誘拐し、その時に出くわした運のない女の子も一緒に捕まったわけね。
さぁどうしましょう。私一人で脱出するには危険過ぎる。気絶している女の子に迷惑をかけるわ。
取り敢えず今は刻を待ち仮眠をとりましょう。
私は壁の側に腰掛けて身体を休めた。
しばらくすると、扉をガンガンと開けようとしている音に目を覚ました。
女の子が目覚めたのね。わたしは女の子の方へ目を向けると、女の子は膝を震わせながら叫んでいた。震える声で何度も何度も……
「誰かいませんか! お願いします! 命と奴隷以外の事なら何でもしますので!」
あの子完全にパニック状態だわ。
ここから逃げ出す為には落ち着いてくれないと、私はなるべく相手が興奮しないように冷静に声をかけた。
「落ち着いてくれない」
「ひぇっ」
えっ! 凄い驚かれて、この子の膝が尋常じゃなく震え出した。
驚かすつもりはなかったのだけど申し訳ないことしちゃったなぁっと思っていた。
でもこの子はまだ少し怯えながらも、私に心配掛けまいと笑顔で
「良かったぁ 一人じゃなくて」
と返事をしてくれた。
えっ! なに、この庇護欲をそそられる可愛さ!
膝も震え怯えているのに健気に頑張ってるわ。
今、私の顔を見られるのは不味い! 少し離れないと!
お互い壁に背を向けて、少し離れて扉の奥に揺らめく蝋燭を無言で眺めながら、まずは相手の素性を探ってみよう。敵かもしれない可能性もある。
「君は、この場所がどこかわかるの?」
「検討もつかないけど、狙われている理由なら思い当たる事がいくつかはあるんだ……
君はどうしてここに閉じ込められたの?」
狙われている理由があると言うことは敵ではないのね。何か訳ありらしいけど。まぁ私もだけどね。
こっちもここは素直に答えよう。
「わからない……
家族と一緒に旅行に来たんだけど……
さっき目を覚まして、今の状況に少し混乱している」
やはり先程の看守の発言から私の男装姿が皇子と間違えられたようね。そんな考え事をしていると。
「この世界に…………なら……………能力…………たよ」
考え事に集中してしまい、この子の呟きが聞き取れなかった……何か変な事を呟いていたような気がするわ。
それよりも女の子二人で脱出するのはかなり難易度が高いし、どうすれば良いのやら本当に悩むわぁ。せめて武器でも手に入れる事が出来たら!
私があれこれと脱出案を考えていると、
「助けは来ないと思うから一緒に脱出しよう。ボクに考えがあるんだ。」
んっ? ボク? この子男の子?
「えっ? てっきり私と同じ女の子と思っていたわ」
「えっ? 君は女の子だったんだ」
これなら脱出する可能性が広がるわ!
男の子だから逃げるくらいなら女の子より頑張れるはずだわ。
でもなんだが臆病な子だから私が守らないと!
少し雑談を交わして、この子男爵家の三男のスコットと言うらしいわ。
しかし視線の動きから嘘をついているわ。
もしやと思い、少し噂の第三皇子の話を振ってみた。
話を聞く限り、スコットとは違うような気もするわ。しかし高位貴族には間違いないはずだわ。
とりあえず私はアネッサと呼んでもらう事にした。本名を名乗ると少し外交問題に発展しそうだわ。
その後看守がパンと冷えたスープが入ったお皿を持ってきたわ。足音からして一人、他の看守はどうやら遠くに行ったようね。
スコットが水を頼んだわ! ナイスね。
次に看守が来た時にコップの水を相手の顔にかけるように伝えて、その隙にわたしがお皿で殴って気絶させる計画を伝えた。
「アネッサだけには無理をさせないよ。いざとなったらボクも闘う」
膝が震えてるくせに可愛い事言っちゃって、スコットは正義感が強くてやさしい子なんだなぁ。
しばらくすると看守が水を持って戻ってきた。スコットが思いっきり顔に目掛けて水をかけた。
その隙に私は足払いをして看守を転倒させた。
その後すぐ全体重を乗せるようにジャンプして二枚の皿を合わせて、後ろ首を目掛けて殴った。
しかし看守は気絶しなかった。やっぱりこの身体じゃ不利ね。
「痛ってえ! おいクソガキどもお仕置きが必要みていだなぁ!」
これはピンチだわ。
その時スコットが、起き上がろうとしている看守の顎を目掛けて蹴り上げて見事に気絶させた。
「ありがとう助かったよ。それよりスコットって強いんだね」
あんなに臆病な様子のスコットが私を守ろうとした事に驚いた。
「アネッサこそ、驚いたよ。なんだか誘拐に慣れているみたいで」
「フフッ何それ。そんなにお転婆じゃないわよ」
そんなやり取りが可笑しくて、気を引き締めないといけないのに少し笑っちゃった。
何故かスコットはボ~っとしている。
「スコット、どうしたの?バレる前に早く行きましょう」
「あぁ……一緒に逃げよう」
スコットが気絶している看守の身体を調べて部屋のカギとナイフ二本を見つけたらしい。
スコットにカギを掛けてもらい、まず一人戦闘不能。
扉の先は螺旋階段があった壁に耳を当てたところ物音はないので、このエリアには看守はいない。
螺旋階段を上り終え、一直線の廊下に出ると、床と壁の僅かな振動から人の気配がする。
よく耳を澄ますと、どうやらこの先の左側の部屋に残りの看守達がいるようだわ。
「シッ、ここから見える左の部屋で物音が複数聞こえるわ。ゴロツキ達が数名いそうね」
「よくこの位置からわかるんだな。オレには真似できないよ」
スコットは驚いたようだけど、私には簡単な事だわ。それよりもここの看守達が追ってこないようにするには--そうだ蝋燭の火をつけて建物ごと燃やせばいいのよ。
そのアイデアを実行する為に、スコットに別の役割をしてもらった。
「私が廊下側を見張っているから、スコットは正面にある扉をゆっくり開けて見張りがいないか確かめて」
スコットから大丈夫のサインが出たわ。
それまで集めていた蝋燭三つ分をドアに立てかける
スコットがおどろいているけど大丈夫よ。
「ん、部屋から出れないようにしただけよ」
「スコット、火の粉に巻き込まれないよう早く逃げましょう」
「あぁ、そうだね……逃げないとね」
スコット大丈夫かしら、顔色が悪いわ。
無事に外に逃げ出すともう真っ暗になっていて、奥ある教会の十字架の飾り達が月の光に反射していた。
「どうやら此処はスラム街らしい。危険なエリアだからアネッサ必ず離れないでね」
「うん、わかったわ」
スコットが震える手で私の手を握る。
頼りないくせに頑張るスコットに対して、何だろう、上手く言えないんだけど、緊張感を持って周りを見渡しながら歩いているはずなのに、言い表せない感情が緊張感を少し緩ませた。
「アネッサ! 取り敢えず教会まで駆け抜けるよ」
その言葉でハッとした。
正面から只者ではない気配を感じる。
刺客がスコットを狙っている! 急がないと!
刺客の右手を狙ってナイフを投げた。
「その人には手を出さないでいただけないでしょうか?」
刺客は苦悶の表情を浮かべて刺さっていたナイフを引き抜いた。
この程度じゃ諦めないわね。
「てめぇやるじゃね~か。いくら皇子でも許さねぇぞ! 生きていれば良いと言われていたから、五体満足かどうかは聞かれないんでな。五体満足では終わらせねぇ~ぜ!」
相手を怒らせたわ。これで私の方に注意が向くわ。何とかスコットを助けられるかもしれない。
刺客がナイフを持ち走ってきた。
えっ! 速い! 右手が狙われているわ。
この角度ね!
初撃は防げたが一撃が重い。
二撃目の突きには、瞬時に左手にナイフを持ち替えて刃先を逸らそうと切り上げたが、右の前腕部分を掠めてしまった。
「クッ!」
大丈夫、血が滲む程度の傷よ。
「ヘッヘッヘ、もう降参かい。次は少しだけ本気をだすんで、皇子様せいぜい腕が使い物にならないように気をつけてないとな」
どうやら余裕を見せているようね。
しかしこちらが不利だわ。
一旦後ろに下がり距離をとりましょう。
力比べにならないようにステップで的を絞らせずにしないと!
何度もギリギリ避けているけど、息が苦しいわ。
あっ! 危ない! ナイフで防げたけど、避けれなくなってきたわ。私は小さな傷ばかりを負い、防戦一方になってきた。
ここは一瞬の隙をついて一撃にかけるしかないわね!
刺客も油断して攻撃が雑になっているので隙ができるはず、そして刺客がナイフを振り上げた。
ガラ空きの胴にナイフを突き刺してやるわ。
「グッ!」
お腹が……まるで鈍器で殴られた衝撃的と傷みが走り、おもわずナイフを落としてしまった。
苦しい。息ができない。
「へっへっへ、皇子様痛いだろう。体力もなくなってきたからカウンターを狙って来るだろうと思ってな」
「わざとナイフを振りかぶってやったんだよ」
「そしたら案の定こちらの思い通りに動いたなあ。鳩尾に膝蹴りも喰らっちまったなぁ痛てぇだろう」
笑いが聞こえるが、お腹が痛くて顔を上げることができない。悔しくて溢れそうになる涙を堪える事しか……
刺客がスコットに狙いを定めた事で私は何とか声を振り絞りった。
「やめてー! 早く逃げてスコット!!」
あぁスコットが殺される。
もう涙が止まらない。
スコットと刺客がお互い走るように間合いを詰めている。
何で逃げないの! スコット!
二人の距離がらニメートルに近づいた瞬間、何かが起きた。
スコットが刺客の手を掴みながら投げていて、気絶させていた。
私は奇跡でも見ているのだろうか?
でも刺客は口から蟹のように泡を吹いていて気絶しているから奇跡じゃなくスコットが倒してくれた。
「スコット! 何があったの? 大丈夫?」
「アネッサ! もう大丈夫だよ。ちょっとボクに肩を貸してくれないかい。一人で動けなくて」
「うん!」
スコットの体に触れて驚いた。
まるで全身熱を帯びたようになっており、身体中に炎症反応が出ている。そして息苦しそうにして表情も余裕がないようだった。
スコットは恐怖の中こんなにボロボロになって頑張ってくれたんだ。
スコットを助けないと! そんなふうに思ってたけど私ばかり助けられてるよ。
アレここは一体どこ?
何かジメジメしている。
私は暗い部屋に閉じ込められている?
確か喫茶店のような所の御手洗いで、誰かと間違えられて何か嗅いだことない物で気を失われたよう気がする……
身体はどこも痛めてないみたいだわ。
暗闇にまだ目が慣れていないが、辺りを見渡すと女の子のような人影が倒れていた。寝息が聞こえるので気絶しているようだ。
取り敢えずこの場所から出る為に、何か手がかりがないか探さないと。
床になにか仕掛けがないか物音に集中しながら奥に見える扉に近づき、扉の向こう側にある壁掛けの蝋燭から見える。耳を澄ますと奥の方から看守と思われる人の声が聞こえてくる。
「声や足音から看守は二名ね」
私は看守たちが何を話しているのか?
扉に耳をつけて更に聞き耳を立てた。
「皇太子の誘拐も楽な仕事だったな」
「これで、あとは大金を貰って国外で優雅に暮らせるな」
「ハッハッハ、違いねえ」
「そういやよ~あの嬢ちゃんはどうするよ」
「まぁオレらで楽しむには小さすぎるから、奴隷に出したら高く売れるだろう」
成る程、私を皇太子と間違えて誘拐し、その時に出くわした運のない女の子も一緒に捕まったわけね。
さぁどうしましょう。私一人で脱出するには危険過ぎる。気絶している女の子に迷惑をかけるわ。
取り敢えず今は刻を待ち仮眠をとりましょう。
私は壁の側に腰掛けて身体を休めた。
しばらくすると、扉をガンガンと開けようとしている音に目を覚ました。
女の子が目覚めたのね。わたしは女の子の方へ目を向けると、女の子は膝を震わせながら叫んでいた。震える声で何度も何度も……
「誰かいませんか! お願いします! 命と奴隷以外の事なら何でもしますので!」
あの子完全にパニック状態だわ。
ここから逃げ出す為には落ち着いてくれないと、私はなるべく相手が興奮しないように冷静に声をかけた。
「落ち着いてくれない」
「ひぇっ」
えっ! 凄い驚かれて、この子の膝が尋常じゃなく震え出した。
驚かすつもりはなかったのだけど申し訳ないことしちゃったなぁっと思っていた。
でもこの子はまだ少し怯えながらも、私に心配掛けまいと笑顔で
「良かったぁ 一人じゃなくて」
と返事をしてくれた。
えっ! なに、この庇護欲をそそられる可愛さ!
膝も震え怯えているのに健気に頑張ってるわ。
今、私の顔を見られるのは不味い! 少し離れないと!
お互い壁に背を向けて、少し離れて扉の奥に揺らめく蝋燭を無言で眺めながら、まずは相手の素性を探ってみよう。敵かもしれない可能性もある。
「君は、この場所がどこかわかるの?」
「検討もつかないけど、狙われている理由なら思い当たる事がいくつかはあるんだ……
君はどうしてここに閉じ込められたの?」
狙われている理由があると言うことは敵ではないのね。何か訳ありらしいけど。まぁ私もだけどね。
こっちもここは素直に答えよう。
「わからない……
家族と一緒に旅行に来たんだけど……
さっき目を覚まして、今の状況に少し混乱している」
やはり先程の看守の発言から私の男装姿が皇子と間違えられたようね。そんな考え事をしていると。
「この世界に…………なら……………能力…………たよ」
考え事に集中してしまい、この子の呟きが聞き取れなかった……何か変な事を呟いていたような気がするわ。
それよりも女の子二人で脱出するのはかなり難易度が高いし、どうすれば良いのやら本当に悩むわぁ。せめて武器でも手に入れる事が出来たら!
私があれこれと脱出案を考えていると、
「助けは来ないと思うから一緒に脱出しよう。ボクに考えがあるんだ。」
んっ? ボク? この子男の子?
「えっ? てっきり私と同じ女の子と思っていたわ」
「えっ? 君は女の子だったんだ」
これなら脱出する可能性が広がるわ!
男の子だから逃げるくらいなら女の子より頑張れるはずだわ。
でもなんだが臆病な子だから私が守らないと!
少し雑談を交わして、この子男爵家の三男のスコットと言うらしいわ。
しかし視線の動きから嘘をついているわ。
もしやと思い、少し噂の第三皇子の話を振ってみた。
話を聞く限り、スコットとは違うような気もするわ。しかし高位貴族には間違いないはずだわ。
とりあえず私はアネッサと呼んでもらう事にした。本名を名乗ると少し外交問題に発展しそうだわ。
その後看守がパンと冷えたスープが入ったお皿を持ってきたわ。足音からして一人、他の看守はどうやら遠くに行ったようね。
スコットが水を頼んだわ! ナイスね。
次に看守が来た時にコップの水を相手の顔にかけるように伝えて、その隙にわたしがお皿で殴って気絶させる計画を伝えた。
「アネッサだけには無理をさせないよ。いざとなったらボクも闘う」
膝が震えてるくせに可愛い事言っちゃって、スコットは正義感が強くてやさしい子なんだなぁ。
しばらくすると看守が水を持って戻ってきた。スコットが思いっきり顔に目掛けて水をかけた。
その隙に私は足払いをして看守を転倒させた。
その後すぐ全体重を乗せるようにジャンプして二枚の皿を合わせて、後ろ首を目掛けて殴った。
しかし看守は気絶しなかった。やっぱりこの身体じゃ不利ね。
「痛ってえ! おいクソガキどもお仕置きが必要みていだなぁ!」
これはピンチだわ。
その時スコットが、起き上がろうとしている看守の顎を目掛けて蹴り上げて見事に気絶させた。
「ありがとう助かったよ。それよりスコットって強いんだね」
あんなに臆病な様子のスコットが私を守ろうとした事に驚いた。
「アネッサこそ、驚いたよ。なんだか誘拐に慣れているみたいで」
「フフッ何それ。そんなにお転婆じゃないわよ」
そんなやり取りが可笑しくて、気を引き締めないといけないのに少し笑っちゃった。
何故かスコットはボ~っとしている。
「スコット、どうしたの?バレる前に早く行きましょう」
「あぁ……一緒に逃げよう」
スコットが気絶している看守の身体を調べて部屋のカギとナイフ二本を見つけたらしい。
スコットにカギを掛けてもらい、まず一人戦闘不能。
扉の先は螺旋階段があった壁に耳を当てたところ物音はないので、このエリアには看守はいない。
螺旋階段を上り終え、一直線の廊下に出ると、床と壁の僅かな振動から人の気配がする。
よく耳を澄ますと、どうやらこの先の左側の部屋に残りの看守達がいるようだわ。
「シッ、ここから見える左の部屋で物音が複数聞こえるわ。ゴロツキ達が数名いそうね」
「よくこの位置からわかるんだな。オレには真似できないよ」
スコットは驚いたようだけど、私には簡単な事だわ。それよりもここの看守達が追ってこないようにするには--そうだ蝋燭の火をつけて建物ごと燃やせばいいのよ。
そのアイデアを実行する為に、スコットに別の役割をしてもらった。
「私が廊下側を見張っているから、スコットは正面にある扉をゆっくり開けて見張りがいないか確かめて」
スコットから大丈夫のサインが出たわ。
それまで集めていた蝋燭三つ分をドアに立てかける
スコットがおどろいているけど大丈夫よ。
「ん、部屋から出れないようにしただけよ」
「スコット、火の粉に巻き込まれないよう早く逃げましょう」
「あぁ、そうだね……逃げないとね」
スコット大丈夫かしら、顔色が悪いわ。
無事に外に逃げ出すともう真っ暗になっていて、奥ある教会の十字架の飾り達が月の光に反射していた。
「どうやら此処はスラム街らしい。危険なエリアだからアネッサ必ず離れないでね」
「うん、わかったわ」
スコットが震える手で私の手を握る。
頼りないくせに頑張るスコットに対して、何だろう、上手く言えないんだけど、緊張感を持って周りを見渡しながら歩いているはずなのに、言い表せない感情が緊張感を少し緩ませた。
「アネッサ! 取り敢えず教会まで駆け抜けるよ」
その言葉でハッとした。
正面から只者ではない気配を感じる。
刺客がスコットを狙っている! 急がないと!
刺客の右手を狙ってナイフを投げた。
「その人には手を出さないでいただけないでしょうか?」
刺客は苦悶の表情を浮かべて刺さっていたナイフを引き抜いた。
この程度じゃ諦めないわね。
「てめぇやるじゃね~か。いくら皇子でも許さねぇぞ! 生きていれば良いと言われていたから、五体満足かどうかは聞かれないんでな。五体満足では終わらせねぇ~ぜ!」
相手を怒らせたわ。これで私の方に注意が向くわ。何とかスコットを助けられるかもしれない。
刺客がナイフを持ち走ってきた。
えっ! 速い! 右手が狙われているわ。
この角度ね!
初撃は防げたが一撃が重い。
二撃目の突きには、瞬時に左手にナイフを持ち替えて刃先を逸らそうと切り上げたが、右の前腕部分を掠めてしまった。
「クッ!」
大丈夫、血が滲む程度の傷よ。
「ヘッヘッヘ、もう降参かい。次は少しだけ本気をだすんで、皇子様せいぜい腕が使い物にならないように気をつけてないとな」
どうやら余裕を見せているようね。
しかしこちらが不利だわ。
一旦後ろに下がり距離をとりましょう。
力比べにならないようにステップで的を絞らせずにしないと!
何度もギリギリ避けているけど、息が苦しいわ。
あっ! 危ない! ナイフで防げたけど、避けれなくなってきたわ。私は小さな傷ばかりを負い、防戦一方になってきた。
ここは一瞬の隙をついて一撃にかけるしかないわね!
刺客も油断して攻撃が雑になっているので隙ができるはず、そして刺客がナイフを振り上げた。
ガラ空きの胴にナイフを突き刺してやるわ。
「グッ!」
お腹が……まるで鈍器で殴られた衝撃的と傷みが走り、おもわずナイフを落としてしまった。
苦しい。息ができない。
「へっへっへ、皇子様痛いだろう。体力もなくなってきたからカウンターを狙って来るだろうと思ってな」
「わざとナイフを振りかぶってやったんだよ」
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笑いが聞こえるが、お腹が痛くて顔を上げることができない。悔しくて溢れそうになる涙を堪える事しか……
刺客がスコットに狙いを定めた事で私は何とか声を振り絞りった。
「やめてー! 早く逃げてスコット!!」
あぁスコットが殺される。
もう涙が止まらない。
スコットと刺客がお互い走るように間合いを詰めている。
何で逃げないの! スコット!
二人の距離がらニメートルに近づいた瞬間、何かが起きた。
スコットが刺客の手を掴みながら投げていて、気絶させていた。
私は奇跡でも見ているのだろうか?
でも刺客は口から蟹のように泡を吹いていて気絶しているから奇跡じゃなくスコットが倒してくれた。
「スコット! 何があったの? 大丈夫?」
「アネッサ! もう大丈夫だよ。ちょっとボクに肩を貸してくれないかい。一人で動けなくて」
「うん!」
スコットの体に触れて驚いた。
まるで全身熱を帯びたようになっており、身体中に炎症反応が出ている。そして息苦しそうにして表情も余裕がないようだった。
スコットは恐怖の中こんなにボロボロになって頑張ってくれたんだ。
スコットを助けないと! そんなふうに思ってたけど私ばかり助けられてるよ。
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