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23.忙しさの合間に ※
しおりを挟む復活の日から二週間が経った。
あれから、エルの毎日が変わった。半日は魔法師団の訓練。もう半分は王子妃教育が始まった。
「どうせ、父上が兄上に譲位したら、私は臣籍降下するのだから、そこまで頑張らなくていいよ」
と、ノアに言われている。
「そうは言っても、ダンスは女性側を覚えないといけないんですよ?」
「私がリードしてあげよう。他のことだって大丈夫だ。エルなら乗り越えられる」
「ありがとうございます。ノア様」
魔法師団では変わらないノアだったが、二人きりの時は、さらに甘くなった。エルは、そんなノアに恥をかかせたくなくて、頑張ろうと内心誓うのだった。
「無事、二人が結ばれて、陛下も大層お喜びだ。ノア殿下とエルのことは長年見守ってきたからな」
「長年……? どういうことですか? 父様」
「二人の魔力の相性が最高だと知った時からですよ、エル」
「母様まで」
「ノア殿下には、秘密だったのだから、二人は出会うべくして出会ったのだよ」
侯爵家でも、今回のプロポーズは好意的に受け取られていた。ノアはきちんと、復活の日にプロポーズすることを伝えておいたのだ。エルにだけ内緒にされていた。
今になって、エルは、学園に入学する前にノアの氷の花に触れた時の会話で、エルの父親が二人の魔力の相性が良いことに気付き、陛下に伝えていたと知った。そして、ノアの縁談を止めていたことも。エルは、自分の初恋がバレていたことにも、陛下たちにまで見守られていたことにも悶えてしまった。
「エル、幸福の魔法師だって呼ばれてるぞ? 復活の日の魔法凄かったもんな。王都ではその話でもちきりだな」
「オレは奇跡の魔法師っていうの聞いた。不治の病に侵されていた人の病気が治ってんだって」
「そんな、噂に尾ひれが付いているんだよ」
エルは噂の大きさに驚く。でも仲間たちは、それも仕方がないと思っているようだった。
「ノア師団長と幸福の魔法師の結婚についてもな。みんな好意的に話しているぞ」
「ああ! 氷華の魔法師の心を溶かしたのは、幸福の魔法師だったってやつな」
これは、仲間たちも同意したように頷いていた。
「それより、エル大丈夫なのか? 王子妃教育も忙しいだろ?」
「みんなありがとう。でも、魔法師団の訓練に出た方が、気晴らしになるんだよね」
「そういえば、エルのこと気軽に呼び捨てにしていていいのか?」
「魔法師団の仲間なんだから、今まで通りにして欲しいな」
「ん、わかった」
魔法師団の仲間は、祝福ムードだ。エルをからかいながらも、忙しそうにしているエルを心配してくれる。
王都での噂話も仕入れてきては、エルに伝えてくる。どれもこれも祝福ムードで、エルは安心した。そこに、ノアがやってきた。
「訓練は終わっていたようだな。エル、みんなと話していたのか。この後は特に何もなかったな。一緒に食事に行かないか」
「ノア師団長! はい、行きます」
「みんなも身体を休めるように。お疲れ様」
「みんな、お先に失礼するね。またね」
「お疲れ様でした。エル、またな」
団員みんなにも労いの言葉をかけたノアは、エルを連れて歩く。
「ノア様、どこに行くんですか?」
「久しぶりに子羊亭に行こう。ゆっくり出来るだろう」
「わぁ! 子羊亭は久しぶりですね。行きたいです」
王子妃教育でマナーは合格をもらっていたが、レッスンを兼ねた食事は味気ない。久しぶりに気を抜いて食事できるのが、何よりノアと一緒に食べられるのが、エルは楽しみだった。
子羊亭は客層がいい。みんなここの食事と雰囲気を楽しみに来ている。一瞬ざわついたが、すぐに普段の雰囲気に戻った。久しぶりの子羊亭では、いつものようにゆっくりできた。馴染みの店主が、エルとノアを死角となる席に案内してくれたからだ。
「まあ、騒がれるのは今だけだろう。エル、嫌な思いはしていないか」
「はい。みんないつも通りですよ。もちろん、からかってきますけど、ノア様とのことを祝福されてるから」
「それなら良かった」
果実酒を片手に、ノアが優しく微笑んだ。そんな何気ない仕草に、エルは胸を大きく跳ねさせる。そして、実感するのだ。ノアが自分にプロポーズしてくれたことを。頬の熱いのを誤魔化すように、果実酒を飲む。フルーティーな香りが鼻をぬけていく。とても飲みやすい。ノアがエルに合わせて選んでくれたのだ。
「僕もノア様のように、何でもスマートにできるようになりたいな」
「エルは努力しているだろう? 焦らなくていい」
「ありがとうございます……ノア様すき」
エルがふにゃりと笑ってノアを見つめていた。
「エル……、少し飲ませすぎたかな。そろそろ帰るか」
「いや、離れたくない」
「エル、馬車に乗ろう。二人きりだよ」
「うん」
エルの酔った勢いの可愛いおねだりに、ノアが嬉しそうにしていたことには、気づかなかったエルだった。
馬車が到着すると、ノアが少し遠回りして帰るように指示した。エルはなんでだろう?と思っていると、ノアの膝に乗せられた。
「んぅ……」
エルは、ノアからの熱いキスに翻弄された。嬉しい。最近忙しくて、なかなか触れ合う機会がなかったから。
「はぅ、のあさま、すきっすき」
「エル……可愛いな」
「あぁっ」
エルはノアに上衣を乱され、首筋から鎖骨に舌を這わされた。悪戯なノアの指が、エルの淡く色づいた胸の尖りに触れてくる。ゾクゾクと背筋を駆け上がる快感の痺れに、エルは胸を反らしてノアにおねだりする。
「……舐めて」
「──っ!」
「ぁあっ!」
じゅっ、と吸い上げると、ふっくらとした胸の蕾を、舌の先端で弾くようにされる。エルを見つめるノアの瞳は、雄の本能と戦っているようだった。
明日は、婚礼衣装を合わせる日だ。跡を残すとエルは恥ずかしいだろうと遠慮してくれているのだ。本当ならば、エルは自分のものだと見せつけたいだろうに。
「エル、口付けをしよう」
「うん……はぁ、あ」
ノアと魔力が混じって、キスだけでも腰が溶けるほど気持ちがいい。ノアの唾液を飲み込むと、エルの身体は熱く火照って欲を持った芯をノアの腹に押し付けた。
ノアが喉で笑うと、エルの下衣を緩めた。
「あっ」
「エルの色っぽいところを見せて」
ノアがエルの花芯を擦り出すと、既に透明な蜜を零していたソコはクチュクチュと音を立てて、車内に音を響かせる。
「ん、んっ、あっ、くぅっ!」
「我慢しないで……そのまま」
耳元で囁きかけられ、エルはゾクリと身体を震わせた。
「ん、ふぁ、も、もうっ!」
「愛してる」
「──っ! はぁっ、はぁ」
ノアに導かれて、吐精したエルは、くったりとノアに寄りかかった。ハンカチで受け止めたノアが、エルの服を整えていく。ノアだって男としての反応をしていたのに、エルを優先してくれたのだ。
「ノア様、僕だけ……」
「気にするな。エルの艶やかな姿を見られただけで、今は満足だ」
ノアが額に軽くキスをすると、もうすぐエルの自宅だった。
「おやすみ、エル。また明日」
「おやすみなさい、ノア様」
エルは、ノアが馬車で帰っていくのを、切ない気持ちで見送った。
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