悔しいでしょう?

藍田ひびき

文字の大きさ
5 / 5

5. 悔しいでしょう?

しおりを挟む
 私は届いた手紙をそのまま暖炉へと放り込んだ。中身を確認する必要はない。入っているのは白紙なのだから。
 
 ロドリグなどという男性は存在しない。友人に頼んで、定期的にその名で手紙を送って貰っているだけ。
 その友人とは、私と同じくジュスト殿下の側近の婚約者だった女性たちだ。ちなみに皆、別の相手と結婚して幸せに暮らしているわ。
 シルヴァンの心無い言動を知った彼女たちは憤慨し、喜んで協力を申し出てくれた。そして交代で、私宛てに白紙の封書を送ってくれるのだ。

 毎回違ったところから送られるのだから、出所を突き止めるのは難しいでしょうね。
 それに、例え分かったとしても差出人は女性だもの。ちょっとした悪戯だと言えば咎められることもないでしょう。

 そして私はまるで愛する人から届いたかのように頬を染め、その手紙を受け取るのだ。夫は何も言えず、ただ顔を歪めて苦しみに耐えている。

 彼の愛がメロディにあるうちは、こんなことをしても意味がない。だから夫の心が完全にこちらへ向くまで待っていた。
 夫から感謝の言葉をもらった日。あれが復讐を始める合図だった。

 愛する人に裏切られ続けるのは、さぞ辛いでしょうね。
 私は10年近くその苦しみを味わってきた。だから私の気が済むまで、夫には付き合って貰うわ。

 私だって、最初からこんな悪戯をするつもりはなかったのよ。
 結婚式の日にあんな事を言われなかったら。あるいは彼が私へ、そして自分の罪へきちんと向き合っていたなら、許してあげたのに。

 今夜もシルヴァンは私のもとへ来るだろう。
 手紙が届くと、彼は決まって私を抱くのだ。
 切なげな声で私の名を呼びながら激しく、何度も何度も。まるでこの身体が自分の物だと、知らしめるかのように。

 その様子に私はひどく充足感を覚える。
 だって、彼の心は私への愛と嫉妬に支配されているのだもの。

 ねえ、メロディ様。貴方がいま天国にいるのか地獄にいるのかは分からないけれど、見ていらっしゃるかしら?
 シルヴァンの心は、今や私のことでいっぱい。
 メロディ様の事なんてほんの少しも想っていないでしょう。それどころか、貴方のようなタチの悪い女に引っかかったことが口惜しいとも呟いていたかしらね。

 どう?悔しいでしょう?
しおりを挟む
感想 11

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(11件)

与三振王
2026.01.09 与三振王

当人達が良くても、子供からしたら悍ましいし、夜会でチクチク言われて自殺か自分から去勢ルートでしょうね
血を重んじる貴族なら自分の血が汚物混入してるのに耐えられないでしょ

2026.01.09 藍田ひびき

お読み頂きありがとうございます!

ちゃんと夫婦の子供なので汚物は混入してない…あ、シルヴァンが汚物って事か😅
流石に子供が成長する頃には噂も下火&伯爵家の評判も戻っている(主にセリーヌの手腕で)と思います。
子供は父親のやらかしたことを知ったら軽蔑するでしょうが、母親のことは寛大な人だと尊敬するんじゃないでしょうか。少なくとも子供の前では愛情深い妻を演じるでしょうから。

解除
クレサ
2026.01.05 クレサ

えーでも、こんなのと性行為するの、やだなあ。
子供できて義務果たしたから、もういいですよね。って言ってやりたい。
夫婦のことは夫婦にしかわからないのかな。

おもしろかったです。いろんな形の復讐があるだなあ。

2026.01.05 藍田ひびき

ご感想ありがとうございます!

セリーヌはシルヴァンを愛しているので、離れるつもりはないのです(愛というより執着かもしれませんが…)。
夫に復讐しつつ縛り付けている現状が、彼女にとっては幸せなのです😞

解除
たまご
2025.10.13 たまご

事の最中に「愛してるわロドリグ!」ですが、ヘタレ旦那は逆に盛るタイプだと思いますよ!
手紙の後にヤりに来てるぐらいだし。寧ろ、嫉妬はスパイスでしょうか。
普通に相思相愛の恋愛中だったら、手紙も名前間違いも一気に冷めちゃう案件ではあるけれど。ここまで複雑になっちゃったらね。
主人公も苦痛に歪む旦那に悦を感じてるから、それが続くうちは二人歪ながら幸せなんだと思います。

2025.10.13 藍田ひびき

手紙を喜ぶ妻を見て嫉妬に苦しみ、自分のものだと確かめたくて抱いてるのでプレイというわけではない…かな?😅
仰る通り、捻じれた鎖で互いを縛ってる歪な夫婦関係です。ある意味幸せ。

お読み頂き、ありがとうございました!

解除

あなたにおすすめの小説

〈完結〉だってあなたは彼女が好きでしょう?

ごろごろみかん。
恋愛
「だってあなたは彼女が好きでしょう?」 その言葉に、私の婚約者は頷いて答えた。 「うん。僕は彼女を愛している。もちろん、きみのことも」

愛想を尽かした女と尽かされた男

火野村志紀
恋愛
※全16話となります。 「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」

愛せないと言われたから、私も愛することをやめました

天宮有
恋愛
「他の人を好きになったから、君のことは愛せない」  そんなことを言われて、私サフィラは婚約者のヴァン王子に愛人を紹介される。  その後はヴァンは、私が様々な悪事を働いているとパーティ会場で言い出す。  捏造した罪によって、ヴァンは私との婚約を破棄しようと目論んでいた。

白い結婚をめぐる二年の攻防

藍田ひびき
恋愛
「白い結婚で離縁されたなど、貴族夫人にとってはこの上ない恥だろう。だから俺のいう事を聞け」 「分かりました。二年間閨事がなければ離縁ということですね」 「え、いやその」  父が遺した伯爵位を継いだシルヴィア。叔父の勧めで結婚した夫エグモントは彼女を貶めるばかりか、爵位を寄越さなければ閨事を拒否すると言う。  だがそれはシルヴィアにとってむしろ願っても無いことだった。    妻を思い通りにしようとする夫と、それを拒否する妻の攻防戦が幕を開ける。 ※ なろうにも投稿しています。

[完結]思い出せませんので

シマ
恋愛
「早急にサインして返却する事」 父親から届いた手紙には婚約解消の書類と共に、その一言だけが書かれていた。 同じ学園で学び一年後には卒業早々、入籍し式を挙げるはずだったのに。急になぜ?訳が分からない。 直接会って訳を聞かねば 注)女性が怪我してます。苦手な方は回避でお願いします。 男性視点 四話完結済み。毎日、一話更新

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

貴方にはもう何も期待しません〜夫は唯の同居人〜

きんのたまご
恋愛
夫に何かを期待するから裏切られた気持ちになるの。 もう期待しなければ裏切られる事も無い。

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。