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誕生日⑴
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キャンプから帰って、あのときの先生の言葉がグルグルしていた。あの後、静佳さんと柊子さんは大学の頃から付き合っていて、パートナーシップ制度で事実上の婚姻関係になっているということを教えてもらった。パートナーというのは、そういう意味だった。
そして、先生は女の人に興味がないとも言っていた。
それって、恋愛対象が男……ゲイってことだよね……ボクでもその対象になるってことだよね……。
あの時、抱きしめられたことに、ボクは期待しちゃってもいいのだろうか。
お盆休みが終わると職場でトラブルが発生して、連日残業が続いていた。その間に、1度先生から連絡があったけど、とてもご飯なんて行ける状態ではなかった。ただボク自身、変に意識しちゃって、会わない口実ができたことはちょっとだけ助かっていた。
ボクの仕事がひと段落すると、先生の学校の方が補習や学校行事で忙しくなり会えなくなり、そうこうしているうちに、暦も9月になっていた。
久しぶりに泰輔さんの料理が食べたくなり、初めて1人でまんぷく屋を訪れる。
「真野くん!!いらっしゃい。久しぶりだね~」
中に入ると夕花里さんが、いつもの笑顔で出迎えてくれる。カウンターに座ると厨房で忙しく調理していた泰輔さんも、こちらを見てニッコリ笑った。今日の日替わりは、唐揚げ定食で、いつもと同じく安定の美味しさだ。
先生がいる時は、閉店時間が過ぎても少しのんびりさせてもらっているけど、今日は1人だったから早めに店を出ようとすると、テーブルにコーヒーが置かれ、夕花里さんに「サービス」と耳打ちされた。
どうやら、もう少しゆっくりしていっても大丈夫のようだ。
「最近、春人と会ってる?」
厨房を片付けながら、泰輔さんが声をかけてくる。
「いや……。お互い仕事でうまく合わなくて。確か今日、先生は修学旅行で京都に行ってるんですよね」
「そうそう。うらやましいよな」
先生は、今担任を持っていて、修学旅行の引率で3泊4日京都なのだ。その準備等で、出発前から忙しくしていた。
「真野くんさ、春人と何かあった?」
泰輔さんが急にそんなことを言い出すので、飲んでいたコーヒーを吐き出しそうになる。
「えっ、なんで……ですか……」
「んー?なんとなく。キャンプの帰りあたりから、ギクシャクしていたような……」
ほんと、泰輔さんには、全てを見透かされているような気がする。
「えっと……先生に女の人に興味ないって言われて……その……どういう意味かなって……」
「ふーん。それって、そのまんまの意味だと思うよ。真野くんは、そんなに鈍くないと思ってるんだけど……?」
ニヤニヤしながら泰輔さんが見てくる。それって、やっぱりボクの都合のいいよに解釈しちゃっていいってことなんだろうか……。
そう思うと、かーっと顔が熱くなる。
「前にも聞いたけど、真野くんは春人のことどう思ってるの?」
「……好き……です」
実際に口に出して、言葉にすると恥ずかしさと、いけない事を言ってるかのような、なんとも言えない気持ちになった。
店内には、もう他のお客さんはいなくて、泰輔さんと夕花里さんとボクの3人だけで、 いつも流れている店内のBGMが、今はやけに大きく聞こえる。
「やっと、認めたな」
顔を上げると、笑っている泰輔さんと目が合う。
「真野くんもわかりやすいから。じゃあ、素直に認めたご褒美として、いいこと教えてあげるよ」
そして、先生は女の人に興味がないとも言っていた。
それって、恋愛対象が男……ゲイってことだよね……ボクでもその対象になるってことだよね……。
あの時、抱きしめられたことに、ボクは期待しちゃってもいいのだろうか。
お盆休みが終わると職場でトラブルが発生して、連日残業が続いていた。その間に、1度先生から連絡があったけど、とてもご飯なんて行ける状態ではなかった。ただボク自身、変に意識しちゃって、会わない口実ができたことはちょっとだけ助かっていた。
ボクの仕事がひと段落すると、先生の学校の方が補習や学校行事で忙しくなり会えなくなり、そうこうしているうちに、暦も9月になっていた。
久しぶりに泰輔さんの料理が食べたくなり、初めて1人でまんぷく屋を訪れる。
「真野くん!!いらっしゃい。久しぶりだね~」
中に入ると夕花里さんが、いつもの笑顔で出迎えてくれる。カウンターに座ると厨房で忙しく調理していた泰輔さんも、こちらを見てニッコリ笑った。今日の日替わりは、唐揚げ定食で、いつもと同じく安定の美味しさだ。
先生がいる時は、閉店時間が過ぎても少しのんびりさせてもらっているけど、今日は1人だったから早めに店を出ようとすると、テーブルにコーヒーが置かれ、夕花里さんに「サービス」と耳打ちされた。
どうやら、もう少しゆっくりしていっても大丈夫のようだ。
「最近、春人と会ってる?」
厨房を片付けながら、泰輔さんが声をかけてくる。
「いや……。お互い仕事でうまく合わなくて。確か今日、先生は修学旅行で京都に行ってるんですよね」
「そうそう。うらやましいよな」
先生は、今担任を持っていて、修学旅行の引率で3泊4日京都なのだ。その準備等で、出発前から忙しくしていた。
「真野くんさ、春人と何かあった?」
泰輔さんが急にそんなことを言い出すので、飲んでいたコーヒーを吐き出しそうになる。
「えっ、なんで……ですか……」
「んー?なんとなく。キャンプの帰りあたりから、ギクシャクしていたような……」
ほんと、泰輔さんには、全てを見透かされているような気がする。
「えっと……先生に女の人に興味ないって言われて……その……どういう意味かなって……」
「ふーん。それって、そのまんまの意味だと思うよ。真野くんは、そんなに鈍くないと思ってるんだけど……?」
ニヤニヤしながら泰輔さんが見てくる。それって、やっぱりボクの都合のいいよに解釈しちゃっていいってことなんだろうか……。
そう思うと、かーっと顔が熱くなる。
「前にも聞いたけど、真野くんは春人のことどう思ってるの?」
「……好き……です」
実際に口に出して、言葉にすると恥ずかしさと、いけない事を言ってるかのような、なんとも言えない気持ちになった。
店内には、もう他のお客さんはいなくて、泰輔さんと夕花里さんとボクの3人だけで、 いつも流れている店内のBGMが、今はやけに大きく聞こえる。
「やっと、認めたな」
顔を上げると、笑っている泰輔さんと目が合う。
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