35 / 95
ハロウィン⑵
しおりを挟む
「ただいま」
部屋に入ると「えー、なんでー」と慌てて真野が玄関まで出てくる。
「お出迎えか?嬉しいな」
「あ、いや……何で早いんですか。今日遅くなるんじゃ……」
「なんだよ~折角早く帰ってこれたのに~」
早く帰って、驚いて喜んで欲しかったのに、真野は困惑顔で少しガッカリしてしまう。部屋に入るとフワッと甘い香りが漂い、キッチンには今まさに調理していたようでボウルなどが散乱していた。
「クッキー焼いてたんですけど、思った以上に時間かかっちゃって」
そう言う真野の右手には、まだ包帯が巻かれていて、以前よりは動かしやすくなっていてもまだまだ思うように動かせないのだろう。
「今日、ハロウィンだから……本当はカボチャの料理とか作りたかったんですけど、カボチャは固いから……だからカボチャ型のクッキーにして、全て片付けてスマートに渡したかったのに……」
「あ、職員会議なくなって、だから早く帰って驚かそうと思って……わるい」
「いや……先生に怒ってるわけじゃなくて……上手く出来なかった自分にイラつくというか」
「まさか作ってくれるとは思ってなかったから、逆にビックリさせられたな……でもめちゃくちゃ嬉しいよ」
そう言うと真野は表情を崩し「片付けなきゃ」とキッチンへ向いてしまった。
夕食の片付けも終わった頃、コーヒーも入れてカボチャの絵が描かれたクッキーを真野と一緒に食べる。
「うまいな」
「へへっ、良かった」
「あ、そういえばクラスの子たちからも貰ったんだった」
カバンの中から、先ほどのカボチャ型のクッキーを含めた5つのお菓子をテーブルに置く。中には、綺麗にラッピングされているものもあった。
「お菓子をあげるんじゃなくて、受け取らないとイタズラされるなんて、今の高校生は面白いことやってるんですね。でも、これなんて、別の意味も含まれてそう……」
一番綺麗にラッピングされて手作りっぽいものを手にとって真野が呟く。
「そんなことないだろ」
ややふてくされ顔の真野を見ると、何だかニヤついてしまう。
「ハロウィンに託けた訳じゃないけど、真野に渡そうと思ってたものがあるんだけど……不貞腐れてるならあげないいよ」
「えっ……」
オレはカバンから一つの箱を出し、真野の前に置く。
「何ですか?」
「気に入ってもらえればいいけど」
真野が開けた箱の中には、革製のキーホルダーが入っていて、キーホルダーにはすでに1つ鍵がついている。
「これは……」
「んー、ここの合鍵。今一緒にいるし、お互いに持ってた方が便利かなと」
「……」
「えっとー。気に入らなかった?」
「ちがっ。鍵!貰っちゃっていいの?」
「あーうん」
「あ、ありがとうございます。嬉しい……です」
プレゼントとして合鍵を渡すのは、少々ベタな感じがしたが、真野が予想以上に喜んでくれて思わずギュッと抱きしめてしまった。
部屋に入ると「えー、なんでー」と慌てて真野が玄関まで出てくる。
「お出迎えか?嬉しいな」
「あ、いや……何で早いんですか。今日遅くなるんじゃ……」
「なんだよ~折角早く帰ってこれたのに~」
早く帰って、驚いて喜んで欲しかったのに、真野は困惑顔で少しガッカリしてしまう。部屋に入るとフワッと甘い香りが漂い、キッチンには今まさに調理していたようでボウルなどが散乱していた。
「クッキー焼いてたんですけど、思った以上に時間かかっちゃって」
そう言う真野の右手には、まだ包帯が巻かれていて、以前よりは動かしやすくなっていてもまだまだ思うように動かせないのだろう。
「今日、ハロウィンだから……本当はカボチャの料理とか作りたかったんですけど、カボチャは固いから……だからカボチャ型のクッキーにして、全て片付けてスマートに渡したかったのに……」
「あ、職員会議なくなって、だから早く帰って驚かそうと思って……わるい」
「いや……先生に怒ってるわけじゃなくて……上手く出来なかった自分にイラつくというか」
「まさか作ってくれるとは思ってなかったから、逆にビックリさせられたな……でもめちゃくちゃ嬉しいよ」
そう言うと真野は表情を崩し「片付けなきゃ」とキッチンへ向いてしまった。
夕食の片付けも終わった頃、コーヒーも入れてカボチャの絵が描かれたクッキーを真野と一緒に食べる。
「うまいな」
「へへっ、良かった」
「あ、そういえばクラスの子たちからも貰ったんだった」
カバンの中から、先ほどのカボチャ型のクッキーを含めた5つのお菓子をテーブルに置く。中には、綺麗にラッピングされているものもあった。
「お菓子をあげるんじゃなくて、受け取らないとイタズラされるなんて、今の高校生は面白いことやってるんですね。でも、これなんて、別の意味も含まれてそう……」
一番綺麗にラッピングされて手作りっぽいものを手にとって真野が呟く。
「そんなことないだろ」
ややふてくされ顔の真野を見ると、何だかニヤついてしまう。
「ハロウィンに託けた訳じゃないけど、真野に渡そうと思ってたものがあるんだけど……不貞腐れてるならあげないいよ」
「えっ……」
オレはカバンから一つの箱を出し、真野の前に置く。
「何ですか?」
「気に入ってもらえればいいけど」
真野が開けた箱の中には、革製のキーホルダーが入っていて、キーホルダーにはすでに1つ鍵がついている。
「これは……」
「んー、ここの合鍵。今一緒にいるし、お互いに持ってた方が便利かなと」
「……」
「えっとー。気に入らなかった?」
「ちがっ。鍵!貰っちゃっていいの?」
「あーうん」
「あ、ありがとうございます。嬉しい……です」
プレゼントとして合鍵を渡すのは、少々ベタな感じがしたが、真野が予想以上に喜んでくれて思わずギュッと抱きしめてしまった。
1
あなたにおすすめの小説
イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話
タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。
瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。
笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。
溺愛前提のちょっといじわるなタイプの短編集
あかさたな!
BL
全話独立したお話です。
溺愛前提のラブラブ感と
ちょっぴりいじわるをしちゃうスパイスを加えた短編集になっております。
いきなりオトナな内容に入るので、ご注意を!
【片思いしていた相手の数年越しに知った裏の顔】【モテ男に徐々に心を開いていく恋愛初心者】【久しぶりの夜は燃える】【伝説の狼男と恋に落ちる】【ヤンキーを喰う生徒会長】【犬の躾に抜かりがないご主人様】【取引先の年下に屈服するリーマン】【優秀な弟子に可愛がられる師匠】【ケンカの後の夜は甘い】【好きな子を守りたい故に】【マンネリを打ち明けると進み出す】【キスだけじゃあ我慢できない】【マッサージという名目だけど】【尿道攻めというやつ】【ミニスカといえば】【ステージで新人に喰われる】
------------------
【2021/10/29を持って、こちらの短編集を完結致します。
同シリーズの[完結済み・年上が溺愛される短編集]
等もあるので、詳しくはプロフィールをご覧いただけると幸いです。
ありがとうございました。
引き続き応援いただけると幸いです。】
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
百戦錬磨は好きすぎて押せない
紗々
BL
なんと!HOTランキングに載せていただいておりました!!(12/18現在23位)ありがとうございます~!!*******超大手企業で働くエリート営業マンの相良響(28)。ある取引先の会社との食事会で出会った、自分の好みドンピシャの可愛い男の子(22)に心を奪われる。上手いこといつものように落として可愛がってやろうと思っていたのに…………序盤で大失態をしてしまい、相手に怯えられ、嫌われる寸前に。どうにか謝りまくって友人関係を続けることには成功するものの、それ以来ビビり倒して全然押せなくなってしまった……!*******百戦錬磨の超イケメンモテ男が純粋で鈍感な男の子にメロメロになって翻弄され悶えまくる話が書きたくて書きました。いろんな胸キュンシーンを詰め込んでいく……つもりではありますが、ラブラブになるまでにはちょっと時間がかかります。※80000字ぐらいの予定でとりあえず短編としていましたが、後日談を含めると100000字超えそうなので長編に変更いたします。すみません。
ミルクと砂糖は?
もにもに子
BL
瀬川は大学三年生。学費と生活費を稼ぐために始めたカフェのアルバイトは、思いのほか心地よい日々だった。ある日、スーツ姿の男性が来店する。落ち着いた物腰と柔らかな笑顔を見せるその人は、どうやら常連らしい。「アイスコーヒーを」と注文を受け、「ミルクと砂糖は?」と尋ねると、軽く口元を緩め「いつもと同じで」と返ってきた――それが久我との最初の会話だった。これは、カフェで交わした小さなやりとりから始まる、静かで甘い恋の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる