忘れられない思い

yoyo

文字の大きさ
38 / 95

出会い⑶

しおりを挟む
「何か本、買ってきたのか?」

   机の上に置きっぱなしにしていた、有名書店の袋を見て、先生が聞いてくる。 ボクはしばらく、先生に任せていた食器洗いを今日は引き受けて、背中で受け答えをする。


「この間話した、珈琲こぼされちゃった本を交換してもらったんです。ボクはいいって言ったんですけど」

「あぁ、精霊シリーズだっけ?オレはファンタジーは読んだことないんだけど、面白い?」

「面白いですよ。それぞれの精霊の種族が争ってるんですけど、主人公の人間のシンがうまくまとめていくまでの紆余曲折みたいな。けっこう内容は深いんですよ。今日も本を交換した子と盛り上がっちゃいましたよ」


   洗い物が終わって、リビングに戻るとソファーに座っていた先生が手招きをしている。

「なんですか?」

   先生は何も言わず、自分の足の間を指差す。

「え?ここ座るの?」


   少し、躊躇していると先生の足の間まで腕を引かれ、先生の前に収まると、後ろから腕を回して抱きしめられる。


「ふふっ……どうしたんですか」

「ん……なんか楽しそうだなーって思って。オレも精霊シリーズ読もうかな……」

「先生って、時々すごく可愛いですよね。ふふふふっ」

「……なんだよ……」

「精霊シリーズ、興味持ってくれたなら映画行きませか?ちょうどもうすぐ、アニメ化されて公開されるんですよ」

「そうだな」


   公開日がいつだったか確認しようと、携帯を取りに行こうと立ちかけると、また抱きしめられて止められる。

「先生?」

「ん?真野の手も治ったし、もう手を出そうかなって」

「え……」


   そう言うと、ボクの口を塞ぐ。

「んっ……んふっ……はぁっ」


   先生と一緒に住み始めて2週間程、軽いキスやハグはしていたけど、今日はいつもと違う……
   気づくとソファーに押し倒されている状態である。

   手を出すって……どこまでなんだろう……
   ドキドキドキ……心の準備が……んー


「ははっ。ごめん、そんなに固まらないで。今日はこれ以上はしないよ」

   そう言って、優しくボクの頭を撫でる。そして、ボクから離れようとする先生の腕を思わず掴んでしまう。


「だ、大丈夫です。先生と、し、したくないわけじゃないです。ちょっと怖さはあるんですけど……」

「うん。怖いのがなくなるように、これから少しずつ進んでいこう。オレは真野に怖い思いはさせたくないよ」

   先生はまた、頭を軽く撫でボクの額に軽く口をつけた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話

タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。 瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。 笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。

BL短編まとめ(現) ①

よしゆき
BL
BL短編まとめ。 冒頭にあらすじがあります。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

リスタート 〜嫌いな隣人に構われています〜

黒崎サトウ
BL
男子大学生の高梨千秋が引っ越したアパートの隣人は、生涯許さないと決めた男であり、中学の頃少しだけ付き合っていた先輩、柳瀬英司だった。 だが、一度鉢合わせても英司は千秋と気づかない。それを千秋は少し複雑にも思ったが、これ好都合と英司から離れるため引越しを決意する。 しかしそんな時、急に英司が家に訪問してきて──? 年上執着×年下強気  二人の因縁の恋が、再始動する。 *アルファポリス初投稿ですが、よろしくお願いします。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

百戦錬磨は好きすぎて押せない

紗々
BL
なんと!HOTランキングに載せていただいておりました!!(12/18現在23位)ありがとうございます~!!*******超大手企業で働くエリート営業マンの相良響(28)。ある取引先の会社との食事会で出会った、自分の好みドンピシャの可愛い男の子(22)に心を奪われる。上手いこといつものように落として可愛がってやろうと思っていたのに…………序盤で大失態をしてしまい、相手に怯えられ、嫌われる寸前に。どうにか謝りまくって友人関係を続けることには成功するものの、それ以来ビビり倒して全然押せなくなってしまった……!*******百戦錬磨の超イケメンモテ男が純粋で鈍感な男の子にメロメロになって翻弄され悶えまくる話が書きたくて書きました。いろんな胸キュンシーンを詰め込んでいく……つもりではありますが、ラブラブになるまでにはちょっと時間がかかります。※80000字ぐらいの予定でとりあえず短編としていましたが、後日談を含めると100000字超えそうなので長編に変更いたします。すみません。

アズ同盟

未瑠
BL
 事故のため入学が遅れた榊漣が見たのは、透き通る美貌の水瀬和珠だった。  一目惚れした漣はさっそくアタックを開始するが、アズに惚れているのは漣だけではなかった。  アズの側にいるためにはアズ同盟に入らないといけないと連れて行かれたカラオケBOXには、アズが居て  ……いや、お前は誰だ?  やはりアズに一目惚れした同級生の藤原朔に、幼馴染の水野奨まで留学から帰ってきて、アズの周りはスパダリの大渋滞。一方アズは自分への好意へは無頓着で、それにはある理由が……。  アズ同盟を結んだ彼らの恋の行方は?

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

処理中です...