忘れられない思い

yoyo

文字の大きさ
41 / 95

映画⑵

しおりを挟む
   昼休憩は、自分のデスクで昼食を摂っているとケータイが振動する。液晶に映し出されたのは、先生の名前だった。

   “今日、早く帰れそう。そっちはどう?”

   今日は、今のところ残業しなきゃいけない急ぎの仕事もなく、定時で上がれそうでその旨メッセージを送る。泰輔さんのお店かなと思っていると予想外のメッセージが返ってくる。

   “この間言ってた映画行こうか。久しぶりに外でデートしよう”

   ボクが手を怪我していたこともあり、家では2人でまったりしていたけど、外でデートするのは本当に久しぶりだった。先生はあまり出歩くのは好きでではないのか、外に出たとしても泰輔さんのお店がほとんどだった。嬉しくて心臓が高鳴り、すぐにメッセージを返す。


「あれ、真野。今日はコンビニ弁当?」

「お疲れ様です。一人だったし、お店行くのも少し面倒くさくて。都築さんも外で食べてこなかったんですか?」


   都築さんの手には先程、ボクも行ってきたコンビニの袋をがあった。タイミングが悪く、寄ったお店がどこも混んでいて諦めたようだ。都築さんと話している時も、先生からメッセージが入り、話をしながらも確認すると、時間と場所が記されていた。


「なんだ?彼女とデートの約束でもしてたのか?」

「えっ、なんでっ?」

「そんなニヤけた顔してるから」


   ボクは慌てて、自分の顔を撫でる。

「図星か?彼女とはうまくいっているみたいだな。怪我した時は、隅々お世話してもらったんだろ」


   彼女ではないけど……と思いながらも、その他の部分はほとんど当たっているので、曖昧に返事をする。


「あー、でも怪我してたときは、あの親戚の人のところに行ってたんだっけ?」

「え、あー、そうですね。先生のとこにいました」

「前、紹介してもらった時も気になったんだけど、何で先生なの?」

「あーえっとー、高校の先生なんですよ。ボクも勉強教えて貰ったことあるし。それで……かな」

「へぇー、そうなんだ」


   嘘はついてないし、変に思われないよなと都築さんの顔を窺うが、特に気にしてる様子もなくて少しホッとする。


「都築さんは、彼女とは仲直り出来たんですか?」

「いつの話をしてるんだよ。もう仲直りしてるわ。オレも今日はデートだ」


   そんな話をしているうちに、昼休憩の時間は終わり、都築さんはまた別の打ち合わせに出かけて、ボクも外回りに出た。いつものように書店を回って帰ってきても、まだ都築さんはいなく、ホワイトボードを見ると、都築さんの名前の隣に、打ち合わせ先の場所と直帰という文字が見える。どうやら、今日はもう戻らないようだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

溺愛前提のちょっといじわるなタイプの短編集

あかさたな!
BL
全話独立したお話です。 溺愛前提のラブラブ感と ちょっぴりいじわるをしちゃうスパイスを加えた短編集になっております。 いきなりオトナな内容に入るので、ご注意を! 【片思いしていた相手の数年越しに知った裏の顔】【モテ男に徐々に心を開いていく恋愛初心者】【久しぶりの夜は燃える】【伝説の狼男と恋に落ちる】【ヤンキーを喰う生徒会長】【犬の躾に抜かりがないご主人様】【取引先の年下に屈服するリーマン】【優秀な弟子に可愛がられる師匠】【ケンカの後の夜は甘い】【好きな子を守りたい故に】【マンネリを打ち明けると進み出す】【キスだけじゃあ我慢できない】【マッサージという名目だけど】【尿道攻めというやつ】【ミニスカといえば】【ステージで新人に喰われる】 ------------------ 【2021/10/29を持って、こちらの短編集を完結致します。 同シリーズの[完結済み・年上が溺愛される短編集] 等もあるので、詳しくはプロフィールをご覧いただけると幸いです。 ありがとうございました。 引き続き応援いただけると幸いです。】

リスタート 〜嫌いな隣人に構われています〜

黒崎サトウ
BL
男子大学生の高梨千秋が引っ越したアパートの隣人は、生涯許さないと決めた男であり、中学の頃少しだけ付き合っていた先輩、柳瀬英司だった。 だが、一度鉢合わせても英司は千秋と気づかない。それを千秋は少し複雑にも思ったが、これ好都合と英司から離れるため引越しを決意する。 しかしそんな時、急に英司が家に訪問してきて──? 年上執着×年下強気  二人の因縁の恋が、再始動する。 *アルファポリス初投稿ですが、よろしくお願いします。

イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話

タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。 瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。 笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。

サラリーマン二人、酔いどれ同伴

BL
久しぶりの飲み会! 楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。 「……え、やった?」 「やりましたね」 「あれ、俺は受け?攻め?」 「受けでしたね」 絶望する佐万里! しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ! こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。

孤毒の解毒薬

紫月ゆえ
BL
友人なし、家族仲悪、自分の居場所に疑問を感じてる大学生が、同大学に在籍する真逆の陽キャ学生に出会い、彼の止まっていた時が動き始める―。 中学時代の出来事から人に心を閉ざしてしまい、常に一線をひくようになってしまった西条雪。そんな彼に話しかけてきたのは、いつも周りに人がいる人気者のような、いわゆる陽キャだ。雪とは一生交わることのない人だと思っていたが、彼はどこか違うような…。 不思議にももっと話してみたいと、あわよくば友達になってみたいと思うようになるのだが―。 【登場人物】 西条雪:ぼっち学生。人と関わることに抵抗を抱いている。無自覚だが、容姿はかなり整っている。 白銀奏斗:勉学、容姿、人望を兼ね備えた人気者。柔らかく穏やかな雰囲気をまとう。

ミルクと砂糖は?

もにもに子
BL
瀬川は大学三年生。学費と生活費を稼ぐために始めたカフェのアルバイトは、思いのほか心地よい日々だった。ある日、スーツ姿の男性が来店する。落ち着いた物腰と柔らかな笑顔を見せるその人は、どうやら常連らしい。「アイスコーヒーを」と注文を受け、「ミルクと砂糖は?」と尋ねると、軽く口元を緩め「いつもと同じで」と返ってきた――それが久我との最初の会話だった。これは、カフェで交わした小さなやりとりから始まる、静かで甘い恋の物語。

BL短編まとめ(現) ①

よしゆき
BL
BL短編まとめ。 冒頭にあらすじがあります。

処理中です...