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映画⑷
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待合わせ場所に現れたのは、先生と都築さんだ。隣にいた佐藤さんは、都築さんを「秋ちゃん」先生のことを「奥田先生」と呼んだ。一瞬4人とも言葉を失い沈黙を作り、一番初めに口を開いたのは、都築さんだった。
「えっと……これはどういうこと?真野と実は知り合いなの?」
「あ、この間、佐藤さんが働いているカフェで本を交換することになって……それで知り合って。今日はたまたま会ったというか……」
「うん、そう。この間、話したでしょ。バイトでミスっちゃったって。それで汚した本を交換することにしたって」
「あー、珈琲ひっくり返して本を汚したって言ってたやつ?……アレって真野のことだったてこと……?」
「あ、はい、そうですね。佐藤さんは……都築さんの彼女さん……?」
「……あぁ」
で……とボクも都築さんも、先生の方を見る。
「あ……佐藤はオレの生徒だ。クラス担任している」
佐藤さんの方を見ると頷く。
「先生の生徒……」
「こんな偶然ってあるんだな……」
佐藤さんにも都築さんとボクは同僚で、先生とは本当は違うけど、親戚だと説明した。いや本当、世間は狭いと感じてしまう。
「真野も奥田さんもすごく仲がいいんだな。俺はあんまり親戚付き合いしてないから、すごいなぁって思う」
それぞれ、なんとか頭の整理がついた頃、都築さんがボクと先生をしみじみと眺めてそんな事を言った。
「ははっ……そうですかね……」
「ん?でも、あれ?今日……」
あ、ヤバイ……都築さんは今日、ボクがデートに行くってことを知ってるんだった。
「そろそろ、映画が始まる。せっかく来たんだし、映画を楽しみましょう。都築さんではまた。佐藤もまた明日な。ほら匠、行くぞ」
「あ、うん。えっとじゃあ、失礼します」
先生は、半ば強制的に話を切ってその場を後にする。ボクは、2人に軽く頭を下げて、足早に行ってしまう先生の後ろを追いかけるしかできない。
さっきの都築さんの言葉……それって、ボクと先生のことバレたんじゃないかと胸にザラリとした感情が疼く。ボクはあんまり気にしてないけど、先生は多分ひた隠しにしている。
前に、男と付き合ってるなんて、周りに言うなよと冗談ぽく言われたことがあったけど、きっと先生の本心なんだなと思う。
あんなに楽しみにしていた映画も、外デートもずっと心はモヤモヤだった。映画後、軽くご飯を食べに行ったけど、先生は都築さんのことも佐藤さんのことも、何も言ってこなくて、ボクも何て言っていいのかわからなくて、あまり集中出来なかった映画の話をダラダラ続けてしまう。
話したいことは、それじゃないのに、言葉が出てこなかった。
最寄りの駅で先生と別れ際、何とか話を切り出す。
「先生、都築さんにボクらのこと話してもいいですか?」
「ダメだ!絶対にダメ」
「でも、勘づかれてると思うし……」
「何とか誤魔化して。知られて良いことなんて1つもないだから。な!」
「う、うん……わかった」
いつにもなく、先生の剣幕にそれ以上は何も言えず、頷くしかなかった。
「えっと……これはどういうこと?真野と実は知り合いなの?」
「あ、この間、佐藤さんが働いているカフェで本を交換することになって……それで知り合って。今日はたまたま会ったというか……」
「うん、そう。この間、話したでしょ。バイトでミスっちゃったって。それで汚した本を交換することにしたって」
「あー、珈琲ひっくり返して本を汚したって言ってたやつ?……アレって真野のことだったてこと……?」
「あ、はい、そうですね。佐藤さんは……都築さんの彼女さん……?」
「……あぁ」
で……とボクも都築さんも、先生の方を見る。
「あ……佐藤はオレの生徒だ。クラス担任している」
佐藤さんの方を見ると頷く。
「先生の生徒……」
「こんな偶然ってあるんだな……」
佐藤さんにも都築さんとボクは同僚で、先生とは本当は違うけど、親戚だと説明した。いや本当、世間は狭いと感じてしまう。
「真野も奥田さんもすごく仲がいいんだな。俺はあんまり親戚付き合いしてないから、すごいなぁって思う」
それぞれ、なんとか頭の整理がついた頃、都築さんがボクと先生をしみじみと眺めてそんな事を言った。
「ははっ……そうですかね……」
「ん?でも、あれ?今日……」
あ、ヤバイ……都築さんは今日、ボクがデートに行くってことを知ってるんだった。
「そろそろ、映画が始まる。せっかく来たんだし、映画を楽しみましょう。都築さんではまた。佐藤もまた明日な。ほら匠、行くぞ」
「あ、うん。えっとじゃあ、失礼します」
先生は、半ば強制的に話を切ってその場を後にする。ボクは、2人に軽く頭を下げて、足早に行ってしまう先生の後ろを追いかけるしかできない。
さっきの都築さんの言葉……それって、ボクと先生のことバレたんじゃないかと胸にザラリとした感情が疼く。ボクはあんまり気にしてないけど、先生は多分ひた隠しにしている。
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