忘れられない思い

yoyo

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内緒の思い⑶

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   真野からのメッセージを見ようとした時、勢いよく図書準備室の扉が開く。

「奥田先生いますか!!」

「おい、ノックもなしでいきなり開けるのは...…」


   勢いよく入ってきた生徒に、強い口調で言おうとするが、よく見ると剣道着姿の女子生徒の田中祐子たなかゆうこだ。


「どうかしたのか?そんな格好で?」

「実が……実が、怪我した……保健室で、病院行かなきゃ、でも先生いなくて……」

   今にも泣きそうな顔で支離滅裂に話す田中を、落ち着かせながら何とか話を聞く。部活で剣道の打ち合いをしていたら、バランスを崩してそのまま倒れて、足を痛めらしい。立てなくなって、練習を見にきていた3年の元部長に保健室まで運ばれたようだ。


「顧問はどうした?」

「あ、え、今日いなくて……だから担任の奥田先生にって」



   先程の真野からのメッセージをさっと見て、田中に気づかれない様に小さくため息を吐き、保健室に向かう。
   
   今日は早く帰れそうにもない……



   保健室の長椅子には、佐藤と3年の男子と先に保健室に戻っていた田中がいた。今日は養護教諭も、もういなく、職員室にも数名の先生たちがいるだけだ。佐藤の足はぷっくり腫れていて、とりあえずの応急処置として湿布を貼ってその上から氷で冷やした。元部長と田中は心配して残っていたけど、もう下校時刻は過ぎており、なんとか宥めて帰らせる。


「痛むか?」

「あ、いえ。動かさないと大丈夫です。ご迷惑をおかけしました」

「お母さんに連絡したら、今日出張でいないんだな。代わりに都築さんが迎えに来てくれるみたいだけど、都築さんって……」

「あ、はい。秋ちゃんです」

「お母さんにも信頼されてるんだな」

「いや……お母さんは、私と秋ちゃんが付き合ってること知らない……です。もしかしたら気づいてるかもしれないんですけど。秋ちゃんとは家が隣で幼馴染だから」


   今日は家に2人きりになるのかなと下世話なことを考えてると、それを察したかの様に佐藤は声を発する。

「先生が心配するようなこと、何も起きないですよ。夜には帰っちゃうし。それに秋ちゃんは、何もしてくれないから……私のことは妹みたいにしか思ってないから」


   そう言いながら目を伏せる。確か都築さんは真野よりも上だから、10歳は違うよなと考え、それなら簡単に手は出せないのかもしれない。大事にしていればしてるほど、簡単には出せない。

   それは、オレも同じ思いだった。


「先生にこんな事言っても仕方ないのにね」

「それだけ大事にされてるんだろ」

「うん……大事にしてくれてるのは、わかってるんだけどね……」


   これ以上、何を言ったらいいのかわからなかったのと、話題を変えたかったので咄嗟に真野の名前を出した。
   だけど、それが後々後悔する。


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