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帰国⑶
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「えっ?」
先生が素っ頓狂な声を上げる。今日、佑輔さんと会ったと話した時だ。あの後も、ディナータイムが始まるまで泰輔さん達の休憩時間もダラダラと居座ってしまった。
「で、今回は何で帰国したんだ?何か言ってた?」
「一緒に来ていたリアムくんのためみたい」
ご飯を食べ終わって、ボクらが話をしている時、リアムは大人しく持ってきていた薄い本のようなものを見ていた。言葉もわからないだろうし、話に入るのは難しいのだろう。そもそも人見知りも強そうだった。
何を見ているのかとトイレに立った時に、側に寄って覗いて見ると、見覚えのある絵が目に入る。
「あ、これ……」
ボクの声に驚いて、リアムは体を硬直させた。
「あ、ごめん。でも、これ精霊シリーズだよね。あ、えーっと、これ、シン?」
今度はゆっくり、声のトーンを落として話すけど、途中で言葉わからないかと気付き、本の中のキャラクターを指さして、聞いてみた。リアムが顔をボクを見上げて、初めて目が合う。そこで外国の子どもというよりも、日本など東洋人の面影があることに気づく。
「マノ、サン、シッテル、デスカ?」
ボクがリアムに声をかけているのを聞いて、隣にいたテオが間に入ってきた。
「あ、はい!精霊シリーズ、ボクも大好きで、全部読んでます。この映画も見ました。あ、これパンフレットだったんだ。あちらでも上映してるんですね……」
嬉しくなってしまって、早口で捲し立ててしまう。声をかけてくれたテオさんをポカンとさせてしまった。
「真野くん、そんなに早口でだったら、テオでもわからないよ。もう少しゆっくり喋ってやって」
佑輔さんに笑われてしまい、顔が熱くなる。そしてさっきよりもゆっくり2人に話しかけた。
「精霊シリーズ、ボクも好きです。この映画も見ました」
テオは理解したように笑って頷き、まだポカンとしているリアムに通訳してくれる。リアムの顔がパッと明るくなり、ボクの顔をマジマジと見つめ、何かを思い出したようにカバンの中から1冊の文庫本を取り出した。それは、見覚えのある表紙絵の描かれた精霊シリーズの1巻目だった。驚いたことに日本で出版された日本語で書かれてあるものであった。
「ボクもコレ、持ってます。あれ?……でも日本語?」
「あーこいつの父親は日本人なんだよ」
リアムの父親は、リアムが小学生になる前に、勝手に日本に帰国してそれっきりになっているらしい。この本は、父親が好きだったもで、唯一父親が残していったもののようだ。日本語は読めないけど、父親からお話として聞いていて好きになって、英訳されているものは、全て読んでいると教えてくれた。
「だから、今回の帰国はリアムくんの好きな精霊シリーズの聖地巡礼みたいですよ」
「父親を探しに来たとかではなくて?」
「10年も音信不通みたいですし、探すのは難しいみたいです」
あの後、リアムとは仲良くなって次の休みに一瞬に原画展に行くことになった。以前に実と行ったところだ。ボクは何回でも楽しめる人なので、誘われた時快諾した。佑輔さんからは、その時先生も連れてきてと言われていて、それを先生に伝えると「はぁー」大きなため息をつかれてしまった。
先生が素っ頓狂な声を上げる。今日、佑輔さんと会ったと話した時だ。あの後も、ディナータイムが始まるまで泰輔さん達の休憩時間もダラダラと居座ってしまった。
「で、今回は何で帰国したんだ?何か言ってた?」
「一緒に来ていたリアムくんのためみたい」
ご飯を食べ終わって、ボクらが話をしている時、リアムは大人しく持ってきていた薄い本のようなものを見ていた。言葉もわからないだろうし、話に入るのは難しいのだろう。そもそも人見知りも強そうだった。
何を見ているのかとトイレに立った時に、側に寄って覗いて見ると、見覚えのある絵が目に入る。
「あ、これ……」
ボクの声に驚いて、リアムは体を硬直させた。
「あ、ごめん。でも、これ精霊シリーズだよね。あ、えーっと、これ、シン?」
今度はゆっくり、声のトーンを落として話すけど、途中で言葉わからないかと気付き、本の中のキャラクターを指さして、聞いてみた。リアムが顔をボクを見上げて、初めて目が合う。そこで外国の子どもというよりも、日本など東洋人の面影があることに気づく。
「マノ、サン、シッテル、デスカ?」
ボクがリアムに声をかけているのを聞いて、隣にいたテオが間に入ってきた。
「あ、はい!精霊シリーズ、ボクも大好きで、全部読んでます。この映画も見ました。あ、これパンフレットだったんだ。あちらでも上映してるんですね……」
嬉しくなってしまって、早口で捲し立ててしまう。声をかけてくれたテオさんをポカンとさせてしまった。
「真野くん、そんなに早口でだったら、テオでもわからないよ。もう少しゆっくり喋ってやって」
佑輔さんに笑われてしまい、顔が熱くなる。そしてさっきよりもゆっくり2人に話しかけた。
「精霊シリーズ、ボクも好きです。この映画も見ました」
テオは理解したように笑って頷き、まだポカンとしているリアムに通訳してくれる。リアムの顔がパッと明るくなり、ボクの顔をマジマジと見つめ、何かを思い出したようにカバンの中から1冊の文庫本を取り出した。それは、見覚えのある表紙絵の描かれた精霊シリーズの1巻目だった。驚いたことに日本で出版された日本語で書かれてあるものであった。
「ボクもコレ、持ってます。あれ?……でも日本語?」
「あーこいつの父親は日本人なんだよ」
リアムの父親は、リアムが小学生になる前に、勝手に日本に帰国してそれっきりになっているらしい。この本は、父親が好きだったもで、唯一父親が残していったもののようだ。日本語は読めないけど、父親からお話として聞いていて好きになって、英訳されているものは、全て読んでいると教えてくれた。
「だから、今回の帰国はリアムくんの好きな精霊シリーズの聖地巡礼みたいですよ」
「父親を探しに来たとかではなくて?」
「10年も音信不通みたいですし、探すのは難しいみたいです」
あの後、リアムとは仲良くなって次の休みに一瞬に原画展に行くことになった。以前に実と行ったところだ。ボクは何回でも楽しめる人なので、誘われた時快諾した。佑輔さんからは、その時先生も連れてきてと言われていて、それを先生に伝えると「はぁー」大きなため息をつかれてしまった。
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