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家族⑵
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美鈴は、3つ上の姉で結婚して子供もいる。オレは、家族とほぼ音信不通状態で、唯一姉の美鈴からたまに、連絡が来るくらいだ。美鈴には、中学の頃にオレの性癖はバレていた。バレたというより白状させられたに近い。大きな町ではなかったのと、お互いの同級生に兄弟がいることが多く、中学の頃の噂は、自然と高校生の姉の耳にも入ってしまったという訳だ。
昔から、口の立つ姉に勝てた試しはなく、あっさりとことのあらましを洗いざらい、告白させられたのだ。ただ、良かったことは、美鈴は意外に良き理解者になってくれたことだ。
母親は昔から少し苦手だった。だけど実家に帰らなくなったのは、父親が亡くなった3年前からだ。
昔から母親は、彼女はいないのかとか、あの子はもう結婚したとか、帰省するたびにうるさく言ってきたけど、カミングアウトしていた訳ではなかったから、うんざりしながら誤魔化して流していた。もしかしたら母親は、オレの性癖に気づいていたのかもしれない。中学の頃の変な噂が立った時から疑問を抱いていて、ことあるごろに、それを打ち消すように探りを入れてきていたのではないかと思う。だから、必然的に大学を機に家を出ると、盆と正月くらいしか帰らなくなった。それが全く帰らなくなったのが、3年前の父親が交通事故で急にこの世を去ってしまったときからだ。
あんな事を言ってしまうなんて、今まで当たり前にいた人が急にいなくなるということに、オレも母親も相当参っていたのだ。
「春人、そろそろ、お母さんを安心させて。お父さんもいなくなちゃったし、私はどうしたらいいの。ちゃんと結婚して家庭を作って、お母さんのこと安心させてよ」
「え……安心ってなんだよ……悪いけど、オレは結婚はしないよ……」
「なんで、そんな事……今、誰かいい人いないの?今ならほら、結婚相談所とかもあるし、ね。しないなんて、おかしいよ」
葬儀が終わって、人が居なくなった部屋で、突然、母親がそんなことを言ってきた。ここまで直接的に言われたのは初めてだったが、結婚することを決めつけるように言われて、イラッとした。この時のオレは急にこんな事になって、葬儀の手配やら、警察の事情聴取やらで、肉体的にも精神的にも相当に参っていた。
「今時、結婚しない奴だって、結構いるだろ」
「そういう人もいるけど……じゃあ、今すぐ結婚しなくてもいいから、誰か彼女作りなさいよ」
今日は、何を言っても引き下がらない母親に、さらにイライラして、考える前に口走ってしまった。
「彼女なんか作らないよ。オレは女の人は愛せない。だから結婚もしない」
「春人!!」
部屋に入ってきた美鈴の大声に、場がシーンとしたかと思うと、すすり泣く声が聞こえてきて、一気に現実に引き戻される。美鈴が泣き崩れている母親を支えて部屋を出て行く時に「このタイミングじゃないでしょ」と言われた。確かに、その通りだった。最悪のカミングアウトだ。そこから、お互いに気まずいまま、家に帰らなくなった。
昔から、口の立つ姉に勝てた試しはなく、あっさりとことのあらましを洗いざらい、告白させられたのだ。ただ、良かったことは、美鈴は意外に良き理解者になってくれたことだ。
母親は昔から少し苦手だった。だけど実家に帰らなくなったのは、父親が亡くなった3年前からだ。
昔から母親は、彼女はいないのかとか、あの子はもう結婚したとか、帰省するたびにうるさく言ってきたけど、カミングアウトしていた訳ではなかったから、うんざりしながら誤魔化して流していた。もしかしたら母親は、オレの性癖に気づいていたのかもしれない。中学の頃の変な噂が立った時から疑問を抱いていて、ことあるごろに、それを打ち消すように探りを入れてきていたのではないかと思う。だから、必然的に大学を機に家を出ると、盆と正月くらいしか帰らなくなった。それが全く帰らなくなったのが、3年前の父親が交通事故で急にこの世を去ってしまったときからだ。
あんな事を言ってしまうなんて、今まで当たり前にいた人が急にいなくなるということに、オレも母親も相当参っていたのだ。
「春人、そろそろ、お母さんを安心させて。お父さんもいなくなちゃったし、私はどうしたらいいの。ちゃんと結婚して家庭を作って、お母さんのこと安心させてよ」
「え……安心ってなんだよ……悪いけど、オレは結婚はしないよ……」
「なんで、そんな事……今、誰かいい人いないの?今ならほら、結婚相談所とかもあるし、ね。しないなんて、おかしいよ」
葬儀が終わって、人が居なくなった部屋で、突然、母親がそんなことを言ってきた。ここまで直接的に言われたのは初めてだったが、結婚することを決めつけるように言われて、イラッとした。この時のオレは急にこんな事になって、葬儀の手配やら、警察の事情聴取やらで、肉体的にも精神的にも相当に参っていた。
「今時、結婚しない奴だって、結構いるだろ」
「そういう人もいるけど……じゃあ、今すぐ結婚しなくてもいいから、誰か彼女作りなさいよ」
今日は、何を言っても引き下がらない母親に、さらにイライラして、考える前に口走ってしまった。
「彼女なんか作らないよ。オレは女の人は愛せない。だから結婚もしない」
「春人!!」
部屋に入ってきた美鈴の大声に、場がシーンとしたかと思うと、すすり泣く声が聞こえてきて、一気に現実に引き戻される。美鈴が泣き崩れている母親を支えて部屋を出て行く時に「このタイミングじゃないでしょ」と言われた。確かに、その通りだった。最悪のカミングアウトだ。そこから、お互いに気まずいまま、家に帰らなくなった。
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------------------
【2021/10/29を持って、こちらの短編集を完結致します。
同シリーズの[完結済み・年上が溺愛される短編集]
等もあるので、詳しくはプロフィールをご覧いただけると幸いです。
ありがとうございました。
引き続き応援いただけると幸いです。】
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