【完結】親の理想は都合の良い令嬢~愛されることを諦めて毒親から逃げたら幸せになれました。後悔はしません。

涼石

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第19話 両親の手紙に抉られる心。こんな家族はもういらない。

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先ずは、マリアからの手紙を開ける。

アリシアは、胸が締め付けられるのを感じた。
それは、決して懐かしさからくるものなどではなかった。


”お父様がいつ身罷られてもおかしくないと、医者に言われました。
本人もすでに諦めています。
このままだと、二度と言葉を交わすことができなくなります。

手遅れにならない内に帰ってらっしゃい。
後悔することになるわよ。”


脅迫めいた手紙だった。


数か月前、オリスナが病気で倒れたことは聞いていた。
王都にいる親戚からも、連絡が来ていた。

「だから何ですか?
私にできることはありません」

そう応えたアリシアは、冷たい女だとか、恩知らずだとか言われた。

けれど、そういう人たちは口だけだ。

わがままな親戚の娘に説教している自分に酔っているだけなのが、ありありと見て取れた。

数回、深呼吸をして息を整える。

オリスナからの手紙を開けようとして、手が震える。

「俺が開けようか?」

アリシアはしばらく迷ったが、リュウにその手紙を差し出した。

「お願い・・・」

リュウは、封を開けた。

「読んでもいいか?」

アリシアはコクリと頷いた。

リュウがざっと目を通す。

「なんだ?・・・これ?」

リュウが、呆れた声を出した。

「リュウ、見せて」
「でも・・・」

アリシアが首を振る。

「一回は読まないと。」

アリシアが手を伸ばすと、しぶしぶ手紙を渡す。

「わかった。せめて椅子に座って読んでくれ。」

アリシアはコクリと頷いた。






”親愛なる我が娘アリシア。

今、死を目前にして、最後となるであろう手紙をお前に送る。

私はこれまで、弱き者に手を差し伸べ、国家のため、社会のために誠心誠意尽くしてきた。
今も病床において、多くの人々が私を見舞い、励ましてくれる。
これも、私が真摯に他人に向き合ってきた結果だろう。

だが、もうだめだろう。

お前とはがあったが、私は気にしていない。

お前が何を考えているのか、私には分からない。

私はお前のためにできるだけのことはしてきた。

家に金がなくとも、お前にすべてを買い与えてきただろう?

お前には、小さいことなど気にしない、いつも笑顔でいる女性に育ってほしかった。
理想的な淑女になってほしかった。

私は家族で笑い合いながら、穏やかに暮らしたかっただけなのだ。

エミリアは、お前のことはあきらめろと言っていたが、私にはそんなことはできない。

アリシア、マリアとエミリアと仲良くしなさい。

彼女たちを大切にするんだ。
私たちは、家族なんだからな。"









アリシアの手が震え、次の瞬間怒りで目の前が真っ暗になった。

手紙を破り捨てたい衝動を、一生懸命に抑えた。

「大丈夫か」

リュウが心配そうに震える手を握ってくれた。

「ひどい手紙・・・自慢ばかりで、謝る気もない…」
「そうだな」

「弱き者に手を差し伸べてって・・・でも娘の私は、差し伸べる相手に入ってないのね・・・」
「そうだな・・」

「理想の子ども像を押し付けて・・・そうじゃない私を愛することができなかったって、白状しているわ・・・」
「そうだな・・・」

アリシアは、これ以上涙を我慢することができなかった。

何もわからない人には、優しい手紙に見えるかもしれない。

けれどアリシアとっては、こう読める。

"俺の言うことに笑顔で従っていればいい。そうすれば、お前以外の家族は穏やかに暮らせるんだ"

(命令に・・・いちいち反論せず・・何を言われても笑って・・・家族のストレス発散に役立てと・・・そういう理想的な道具になれというのですね・・・)

「アリシア!!」

虚な目をしたアリシアを、リュウが抱きしめる。

「お前がこいつらの犠牲になることはない。お前は何も悪くないんだ!!」
「悪くない・・・?私・・・悪くない・・・?」
「当たり前だ!」
「でも・・・この家の人たちは・・・私が、わがままだって・・・傷物だって・・・」
「そんなわけないだろう!傷なんてないし、お前は間違ってない!」

アリシアは、リュウを泣きながら抱きしめ返した。

「リュウ・・・私・・・」
「ん?」




「この人たち・・・もう・・いらない・・・こんな家族・・・いらない・・・」




そう言ってリュウの胸で泣きじゃくった。



「そうか・・・わかった・・・」


アリシアの髪を撫でながら、リュウはそう応えた。

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