僕の太客が義兄弟になるとか聞いてない

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

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ケレイブside胸を締め付ける想い※

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 湯浴み場でお互いを貪り狂う様な衝動で果てた後、腕の中でぐったりとしたノアの自分とは違うその体躯を、ケレイブはまざまざと味わっていた。

 もちろん女とは明らかに違う骨格はしっかりした男のものだけれど、それでもしなやかで美しいと感じる柔らかな筋肉と肌質に、何処か庇護欲を掻き立てられる。


 あまりに反応が無いので心配になったものの、疲れ切ったノアを見て慌ててベッドへと連れ戻った。少なくともノアは一日中一人で店に立っていたのだ。疲れていないわけじゃ無いだろうに、私が突然来た事で無理をさせたのだろう。

 ベッドに寝かせると、微かに反応したものの多分眠ってしまったのだろう。その閉じられた無防備な瞼と頬に落ちる長い睫毛の影を、飽きる事なく見つめていた。


 ノアは美しいが女性のそれとは違う。父上の奥方になったノアの母上の面影は感じるものの、受ける印象はある種他人を寄せ付けない彫刻的美しさだ。

 その閉じられた美しさから、ふと開かれる緩みや色気がノアを人気の男娼にしたのだとケレイブは考えていた。けれどノアが一番の男娼になった理由はその表面的なものだけではなかった。


 ボードゲームしかり、読書好きのノアの知識量しかり、客たちの話を聞く時の目の輝き、考えている時に浮かぶ美しい炎色の瞳に浮かぶ知性と言うものが、多くの一筋縄ではいかないお客達の心を虜にしたのだ。

 実際娼婦しか相手にしないある貴族の男が、グラスを回しながら話すのを聞いたことがある。

『よく考えたら、ノアがここにいるから通って来ている面もある。この手の娼家はここだけと言うわけでは無いからな。ノアと話をすると妙な満足感があるんだ。それは言葉で説明をするのは難しいが。』


 ケレイブはそんな記憶を思い起こしながら、それはまだノアの一部でしか無かったと思った。娼家で泊まった時に一緒に眠った時のノアは、目の前のピクリとも瞼を動かさない事は無かったのだから。

 自分の前で素のままのノアを出してくれている事にケレイブは胸一杯になって、そっと湯浴みに向かった。寝入りばなのノアの邪魔をしたくなかったので、ゆっくりと湯に浸かる気でいたのだ。


 けれどその考えは、さっきまで欲望をぶつけ合った湯浴み場では果たされなかった。落ち着かない気持ちのままケレイブは浴槽から立ち上がると、諦めのため息と共にさっさとベッドに戻って来た。

 ぐっすり眠っているノアの隣にそっと沈み込むと、その体温が伝わって来て思わず笑みを浮かべた。

 こんな風に毎日ノアの隣で眠れたら、どんなに人生は実りあるものになるだろう。自分にはノアが必要だと分かっているのに、どうしたらそれが叶えられるのかケレイブには分からなかった。



 ふと眠りが浅くなって、何か匂いを感じた。…好きな匂いだ。顔を微かに撫でられている気がして、ケレイブは意識を浮上させた。

 隣にいるのがノアだと気づいて、ケレイブは幸福感で腕を伸ばしてその存在を抱き寄せた。けれども直ぐに寝ぼけた頭に試練はやって来た。

 寝起きの割にスッキリした眼差しの美しいノアが、唐突に自分を好きだったのかと聞いてくる。けれど、寝ぼけていたのが良かったのか、何も飾らず馬鹿正直に話したのが良かったのか、ノアはクスクスと楽しそうに笑った。


 あまつさえ自分の収まらない身体をノアの手のひらが撫で下ろすせいで、目覚めと共に欲望は直ぐに舞い戻って来た。ノアの欲望に染まるその瞳は、何処か無邪気で、見たことのないものだ。

 そんな子供の様な表情が出来るのかと何処か感動さえ覚えながら、ケレイブはノアの望むままお互いの身体を分け与えあった。

 ノアに触れられたらいつでも臨戦態勢になってしまうケレイブだったが、耳と目、そして手のひらに伝わってくる感覚を酷使してノアのペースを守った。

 
 ノアの重ねる唇と甘い舌が素直にケレイブを求めてくるのが、あの頃とは何処か違うのにケレイブは気づいていた。客を常にリードして揶揄うノアの自慢の舌技は、今は影を潜めている。

 けれども恋人同士ならきっと当たり前のその自然なやり取りは、ケレイブに感動するほどの喜びを運んできた。目の前に居るのは男娼のノアではなく独り立ちしたノアであって、その彼がこうして自分に気を許している。

 自惚れても良いのだろうか。


 ノアの切れ切れのため息混じりの願いのままノアの中に自身を埋め込めば、留め置くことなど出来ずにケレイブは息を詰めてゆっくりと動き出した。

 さっきよりも明るくなった部屋の中でノアの見開いた瞳に自分を映し込みながら、ケレイブはまるで敬虔な信者の祈りに似たひとときを捧げていた。


 ノアの瞳を輝かせるのも、快感で甘い呻き声を上げさせるのも、自分の背中に指を食い込ませるのも、ノアの信者たる自分の喜びだった。

 自分の快感をコントロールしながら、ケレイブはノアを悦ばせる事に力を注いだ。けれどもそうすればするほど、自分もまた追い詰められて、ノアのひりつくほどの絶頂を受けながら自分もまた追いかけるように本能のまま解き放っていた。


 輝くような朝日の差し込む部屋の中で、ケレイブとノアはぐったりと目を閉じて汗ばんだ身体を重ねあっていた。

「…今日が休みで良かった。朝からこんなにしたら、ちょっと店を開けるのは辛かったかもね。」

 そう呟く目を閉じたノアの瞼に唇を押し付けながら、ケレイブは妙に充実した気分のまま呟いた。

「今日はノアの新しい部屋を決めよう。騎士団の伝手で今よりは良い部屋が見つかるだろう。ああ、反論は無しだ。これはノアのためと言うより、私のためだから何を言ってもダメだぞ?

 あの部屋のノアが気になって、任務中の私の気が散って怪我しそうだからな。それは防がないと。」


 クスクスと自分の喉元から楽しげな笑いが聞こえて来て、ケレイブは取り敢えず拒絶は免れたと分かった。そうと決まったら、やる事は目白押しだ。

「朝食を食べたら、ノアは部屋の荷造りを始めてくれ。人手が必要なら二、三人用意しよう。昼過ぎに新しい部屋を見に行く手筈を付けておくから、それまでに荷造り出来るか?」

「随分と強引だね。本以外に大した荷物は無いから僕一人で十分だよ。…でもありがとう。」


 そう言って微笑むノアにもう一度口づけたのは不可抗力だっただろう?









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