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明日が平和とは限らない
山伏の家
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俺の通う北山高校は地域では一番の進学校で、毎年国立大や有名私立大学へ進学する生徒が数人程度いる。たまに刻まれる超絶難関大学の進学実績は、学年に一人居るかどうかのアルファ様のお陰だけど、まぁβでも頑張ってるやつはそこそこ名の知れた大学へ進学するレベルに地方進学校様だ。
俺は勉強は嫌いじゃない。山伏の修行をしていると日常を律するのが修行の一つになるので、自然勉強への取り組みも真摯になるってだけだ。従兄弟の桃李は地元の国立大学だし、俺もその進路が良いかもしれないなってぼんやり考えている。
父さんはゴリゴリの山伏だけど兼業でコンサルをしている。仕事柄忙しい父さんは高校生の俺とは中々顔を合わせることも少なくなった。どちらかと言うと伯父さんはもっと山伏で、最近の修験道としての白路山の観光ブームの流れに真っ正面から取り組んで、市の観光課と大々的にタイアップしている。
父さん曰くは、山伏の修験道の聖域を荒らされない様に先手を打ったのだと満足げだったけど、謀ったのは父さんだったんだろうか。コンサルだけに。
まぁ、そんな細かい事は俺にはどうでも良かった。父さんが忙しくしているのも当たり前だったし、俺と父さんの間には踏み込めない溝があって、それはいつ解消するのかも分からなかった。
「岳さん、今夜はすき焼きにしておきましたから。今日は高校を早退けして週末の社行事の護摩焚きの組み木なさったんでしょう?」
ここ三年通いで来てくれている長谷川さんが、エプロンで手を拭きながら俺に顔を見せた。俺が礼を言うと旦那さんがやっぱり山伏の長谷川さんは、今日は孫がご飯食べに来るんですよと嬉しげに言って帰って行った。
急に静かになった広さだけは恵まれている今時珍しい平家の日本家屋は、見かけは古めかしいけれど内装はリフォームしていて案外洋風だ。離れにあるとはいえ自室の扉が襖だったらと考えると、プライバシーの面でとんでもないから助かったと思う様になったのは中学生ぐらいの時だったか。
俺はダイニングテーブルに揃えられた郵便物を横目で見ながら、携帯でお気に入りの動画を流しながらまだ温かいすき焼きをそのまま食べ始めた。小さい頃は祖母が一緒に食事をしてくれていたけれど、俺が中学生の頃に亡くなってしまった。
祖父は父親と折り合いが悪くて伯父の家に居る。厳しい人だから俺もちょっと苦手で、父さんGJだ。時々桃李が祖父の愚痴を言うのを聞き流すくらいだ。
その時グラスに水を汲もうとした時に手が当たって、郵便物がテーブルからバラバラと落ちてしまった。手にした封筒の送り手に覚えたばかりの苗字が書かれたものを指先で摘みながら、俺は知らずに眉をひそめた。
「高井…。あいつ名前なんだっけ。ちょっと変わった名前だった…。あ、アラタ。高井新…か。ま、どうでも良いけど。」
俺はもう一度郵便物の上に、高井 忍という送り主を表にしてそれを重ねて置いた。そしてその事は直ぐに忘れてしまった。
俺は勉強は嫌いじゃない。山伏の修行をしていると日常を律するのが修行の一つになるので、自然勉強への取り組みも真摯になるってだけだ。従兄弟の桃李は地元の国立大学だし、俺もその進路が良いかもしれないなってぼんやり考えている。
父さんはゴリゴリの山伏だけど兼業でコンサルをしている。仕事柄忙しい父さんは高校生の俺とは中々顔を合わせることも少なくなった。どちらかと言うと伯父さんはもっと山伏で、最近の修験道としての白路山の観光ブームの流れに真っ正面から取り組んで、市の観光課と大々的にタイアップしている。
父さん曰くは、山伏の修験道の聖域を荒らされない様に先手を打ったのだと満足げだったけど、謀ったのは父さんだったんだろうか。コンサルだけに。
まぁ、そんな細かい事は俺にはどうでも良かった。父さんが忙しくしているのも当たり前だったし、俺と父さんの間には踏み込めない溝があって、それはいつ解消するのかも分からなかった。
「岳さん、今夜はすき焼きにしておきましたから。今日は高校を早退けして週末の社行事の護摩焚きの組み木なさったんでしょう?」
ここ三年通いで来てくれている長谷川さんが、エプロンで手を拭きながら俺に顔を見せた。俺が礼を言うと旦那さんがやっぱり山伏の長谷川さんは、今日は孫がご飯食べに来るんですよと嬉しげに言って帰って行った。
急に静かになった広さだけは恵まれている今時珍しい平家の日本家屋は、見かけは古めかしいけれど内装はリフォームしていて案外洋風だ。離れにあるとはいえ自室の扉が襖だったらと考えると、プライバシーの面でとんでもないから助かったと思う様になったのは中学生ぐらいの時だったか。
俺はダイニングテーブルに揃えられた郵便物を横目で見ながら、携帯でお気に入りの動画を流しながらまだ温かいすき焼きをそのまま食べ始めた。小さい頃は祖母が一緒に食事をしてくれていたけれど、俺が中学生の頃に亡くなってしまった。
祖父は父親と折り合いが悪くて伯父の家に居る。厳しい人だから俺もちょっと苦手で、父さんGJだ。時々桃李が祖父の愚痴を言うのを聞き流すくらいだ。
その時グラスに水を汲もうとした時に手が当たって、郵便物がテーブルからバラバラと落ちてしまった。手にした封筒の送り手に覚えたばかりの苗字が書かれたものを指先で摘みながら、俺は知らずに眉をひそめた。
「高井…。あいつ名前なんだっけ。ちょっと変わった名前だった…。あ、アラタ。高井新…か。ま、どうでも良いけど。」
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