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オメガの自覚
気を許してはいけません
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結局いつもこの場所に落ち着くわけかと、裏庭の景色を眺めた。うむ、木しかない。
「で?高井は東京にツテあるだろ?そっちには話が出てないよな?」
高井と叶斗が俺の噂について話しているのを聞きながら、弁当を食べ終えてお腹が満たされた俺は、窓側の机に突っ伏しながら目を閉じた。まだ身体が痛むせいなのか、眠気が強い。ここの教室は空き教室や理科室のような部屋が連なってるせいで、喧騒とは縁遠い。
ふと髪を撫でられた気がして薄く目を開けると、目の前の高井が俺の髪を撫でていた。叶斗ならしそうだけど、高井がそんな事をするのは珍しい。俺は目をぱっちり開けて高井と目を合わせた。
「お前って、懐かない猫みたいだな。にゃーんって鳴いてみろよ。」
そう言って、もう一度俺を撫でた。俺は髪を撫でられるのが案外気持ちよかったので、もっと撫でて欲しくて鳴いてみた。
「…にゃぁん。」
途端に高井の顔が真っ赤になって、ブワリと何かが肌をざわつかせた。俺はハッと起き上がって自分の皮膚が鳥肌っているのを感じて手で撫でた。
「ちょ、何してんの、高井!」
高井は動揺しつつも、叶斗に叱られながら俺から目を離さなかった。
「…悪い。ちょっと不意打ちだったから。」
俺は内心では焦っていたけど、冷静なフリで叶斗と高井の顔を見て言った。
「まったく、冗談も通じないんだから。」
すると叶斗が俺ににじり寄って来て、俺の肩を両手で掴んで言った。
「…岳はさ、俺たちを信用し過ぎなんだよ。俺たちももちろん無体な事をしたくは無いけど、俺は岳の事いつでも食っちまいたいって思ってるんだから。
それにこれ以上岳に変なαが寄り付かないように手立てを打っておいた方が良いと思うんだ。さっき高井と話してて思ったけど、状況は良く無い。変異Ωなんてレア中のレアだ。面白がって攫いに来る奴も居るかもしれない。…心配なんだよ。」
時々叶斗はドキドキする程真っ直ぐに俺を見る。今も何だか目を逸らせなくて形の良いアーモンド型の二重の瞳を見つめた。
「え。手立てって…、何するの。」
すると叶斗は見た事のない甘やかな表情で俺に囁いて、顔を寄せた。
「こうするんだよ…。」
気がつけば俺は叶斗にキスされていた。びっくりして見開いた俺の目に叶斗の長いまつ毛に縁取られた瞼が見えた。
俺はきっと叶斗を押し退けてやめさせなくちゃいけなかったんだろう。でも俺の意志に反して、俺の身体は唇から感じる圧倒的な力強さ、そして蕩けるような甘さに我を忘れてしまった。
それと同時に自分の瞼が重くなって閉じるのも…。ああ、もっと欲しい。甘くていくらでも味わいたいこの…。力の抜けた俺の身体を大きな腕が抱き寄せて支えると、もう、何も考えられなくなった。
「で?高井は東京にツテあるだろ?そっちには話が出てないよな?」
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ふと髪を撫でられた気がして薄く目を開けると、目の前の高井が俺の髪を撫でていた。叶斗ならしそうだけど、高井がそんな事をするのは珍しい。俺は目をぱっちり開けて高井と目を合わせた。
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そう言って、もう一度俺を撫でた。俺は髪を撫でられるのが案外気持ちよかったので、もっと撫でて欲しくて鳴いてみた。
「…にゃぁん。」
途端に高井の顔が真っ赤になって、ブワリと何かが肌をざわつかせた。俺はハッと起き上がって自分の皮膚が鳥肌っているのを感じて手で撫でた。
「ちょ、何してんの、高井!」
高井は動揺しつつも、叶斗に叱られながら俺から目を離さなかった。
「…悪い。ちょっと不意打ちだったから。」
俺は内心では焦っていたけど、冷静なフリで叶斗と高井の顔を見て言った。
「まったく、冗談も通じないんだから。」
すると叶斗が俺ににじり寄って来て、俺の肩を両手で掴んで言った。
「…岳はさ、俺たちを信用し過ぎなんだよ。俺たちももちろん無体な事をしたくは無いけど、俺は岳の事いつでも食っちまいたいって思ってるんだから。
それにこれ以上岳に変なαが寄り付かないように手立てを打っておいた方が良いと思うんだ。さっき高井と話してて思ったけど、状況は良く無い。変異Ωなんてレア中のレアだ。面白がって攫いに来る奴も居るかもしれない。…心配なんだよ。」
時々叶斗はドキドキする程真っ直ぐに俺を見る。今も何だか目を逸らせなくて形の良いアーモンド型の二重の瞳を見つめた。
「え。手立てって…、何するの。」
すると叶斗は見た事のない甘やかな表情で俺に囁いて、顔を寄せた。
「こうするんだよ…。」
気がつけば俺は叶斗にキスされていた。びっくりして見開いた俺の目に叶斗の長いまつ毛に縁取られた瞼が見えた。
俺はきっと叶斗を押し退けてやめさせなくちゃいけなかったんだろう。でも俺の意志に反して、俺の身体は唇から感じる圧倒的な力強さ、そして蕩けるような甘さに我を忘れてしまった。
それと同時に自分の瞼が重くなって閉じるのも…。ああ、もっと欲しい。甘くていくらでも味わいたいこの…。力の抜けた俺の身体を大きな腕が抱き寄せて支えると、もう、何も考えられなくなった。
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