二人のアルファは変異Ωを逃さない!

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

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俺の素晴らしきΩ人生

忙しい毎日

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 「相川、例の件どうなってる?」

俺が自分の専用ラボから通話マークをクリックすると、反応良く出た相川の声がラボに響いた。

「東、それがまだ調整中なんだよね。もうちょっとでどうにかなりそうだから、乞うご期待。」

少し笑いの含んだ声に、こちらまで疲れた気分が少し上がった。高校時代に俺の腐れ縁な席順だった相川は、大学卒業後自分が立ち上げたΩ研究室の秘書になった。今や俺に対して率直で、嫌味な忖度のない相川は中々貴重な人材だった。


 別の大学に進んだものの、付き合いは続いていた友人の一人であった相川は、俺の番達の牽制が必要のない人間として認知された。

卒業後に自分のラボを立ち上げる事になった時、真っ先に思い浮かんだ助っ人が相川だった。だから率直に条件提示をしたら、あいつはニンマリとして手を揉みながら言った。

『東にこんなに必要とされたら、流石に俺も期待に応えたいって言うか。まぁお前の苦労は見ていて哀れなものだったからな。では、精一杯サポートさせていただきますか!ハハハ。』


 相川自身も俺の番たちに比べれば引けを取るものの、一般的には優秀な部類に入るうえに、あの独特のキャラクターで他人の懐に入るのが上手い。大学生活で色々揉まれたのか、高校当時よりも場の空気を読む事にも長けた。

時々わざとなのか、相川らしい率直さを捩じ込んでくるのが仕事では案外上手く作用して、2年目の今や立派な即戦力になっているから人生は分からない。


 俺は笑みを浮かべて、もう少し実験データをまとめようと作業を続けた。気づけばもう一度今度は外部モニターが反応して、呆れた様な相川の声が響いた。

「なぁ、もう直ぐ灰原氏到着ですけど。て言うか身体の事考えて、そろそろ上がったら?」

そう言われて、俺は強張った身体を緩めた。確かに無理するとあいつらが煩い。て言うか、研究の邪魔される。俺は渋々データを保存すると、ラボから出た。背中で電子音がして、きっちり施錠されたのを感じながら、強化ガラスの向こうの美しい中庭の自然味溢れる計算し尽くされた庭園を眺めながら白衣を脱いだ。


 しばらく白路山を駆けてない。まぁ身体がこれじゃしょうがないけど、でもあの清涼な空気はあそこだけのものだ。行きたいな…。そう考えて目の前の扉を認証させて開けると、忙しそうに立ち動く相川らスタッフがこちらを向いた。

「東、もうちょっと余裕持って行動してくれないと。あの人達怒ると怖いんだぜ、マジで。東には甘いけどさ。」

そう相川にボヤかれながら、俺はスタッフに白衣をダストボックスに入れたから回収よろしくと頼んだ。ここのスタッフは基本βか番を持つΩだ。それ以外だと色々問題があり過ぎる。て言うかあいつらが納得しない。


 「今日はもう上がるよ。皆も残業はしないでね。」

そう言うと、相川達スタッフが顔を見合わせて笑った。

「本当、東は自覚ないんだから。お前の開発したΩ用のサプリ、凄い話題になってんだぞ?色々あちこちから問い合わせが来て忙しいの何のって。まぁ、東は基本儲けようと思ってやってないのは知ってるけど、こっちはこのラボの維持費ぐらいは儲けさせてもらいますよ。お疲れ様。また月曜日な。」


 そんな東の声に見送られて、俺は研究室の玄関ホールへ出た。この妙に広い俺のラボは、あいつらがああでも無い、こうでも無いと顔を突き合わせて設計者と吟味して作ったものだ。

研究者としては新参者の俺には勿体無いくらいの仕様の建物を眺めながら、取り敢えず話題になるくらい評判の良いサプリが開発できた事に、何処かしらホッとしていた。


 発情期以外の番たちとの夜生活で、どうしても無理をしがちな俺の身体を労わりたくて作ったサプリだったけれど、これが案外若返りに効くみたいで、番いのΩを愛するアルファ達からまとめ買いが発生した。モニターしてくれた叶斗の両親からの口コミ力もキッカケのひとつではあった。

俺も毎日飲んでるけど、以前なら痛む身体も痛まなくなった。三人相手の俺が言うんだから効果あるだろう。と言うか、案外Ωは色々な悩みを抱えていたけれど、当事者が研究開発すると言うパターンが少なかったのかもしれない。

桂木先生なんかは、本当レアなΩなんだと今なら分かる。


 警備員に挨拶して玄関に出ると、目の前に誠の車が停まっていた。誠は眉を上げて微笑むと、車に寄り掛かっていた身体を起こして俺を引き寄せて甘くキスした。

「もう少し待つ事になるかと思ってたけど、案外時間通りだったね。身体の調子はどう?」

そう言って、僕を気遣し気に見下ろした。俺の腹はまだそこまででも無い。それにサプリのお陰か、悪阻も瞬間的なものだった。俺は誠に寄り掛かって言った。

「大丈夫。昨日健診で問題ないって言われたし。安定期は安定期だからさ。」


 もう一度キスされて、俺は乗り心地の良い車に乗せられた。妊娠が判ってから、誠が直ぐにこの車を用意したのには笑えたけれど、確かにスポーツカーよりも妊夫向きだ。俺は沈み込む様なシートに包まれて、あっという間に意識を手放した。













 
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