欲望の神さま拾いました【本編完結】

一花カナウ

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アフターストーリー【不定期更新】

ダイエットをしよう!

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 食欲の秋だが、さすがに食べすぎた。体重計に乗るまでもなく、明らかに肥えている。由々しき事態だ。

「うーん? 僕は肉付きがよいのも好きだよ」
「そういう問題じゃないのよ……」

 どう考えてもアニキが新作商品の試食をしてほしいとたくさんのサンプルを持ってきたことが影響している。
 私が鏡を見ながら頭を抱えていると、同居人の彼は私の頭を撫でた。

「これはアレじゃないかい? ここのところすっかりご無沙汰だから、運動が足りていないんだよ」

 これはよろしくない気配。警戒してサッとしゃがめば、彼の腕が頭上を掠めていった。
 危ない危ない。
 春の始まりから同居すること半年とちょっと。さすがに彼こと神様さんのあしらい方は学習済みだ。

「ありゃ、逃げられてしまったねえ」
「運動不足なら散歩してきますよ。ようやっと涼しくなってきましたし、歩くにはちょうどいいかと」

 しゃがんだ状態で見上げて返せば、神様さんは残念そうな顔をしていた。
 今年の夏は暑すぎたこともあって、神様さんから性的なお誘いがあっても断ってきた。私の有り余る霊力を吸い取るのに性的接触が都合がよく、彼は隙あらば私の霊力欲しさに誘惑してくるのだけど、別に神様さんが存在を維持するためなら一緒に暮らしているだけで充分なのだ。
 時折私の霊力欲しさに近づいてくる妖(あやかし)などを追い払うのに彼は力を使って怪異や奇跡を起こすので、そういった術を使うのに必要な霊力は与えねばならないけれど、今はとても静かなので必要がない。私は少なくとも神様さんの外見をものすごく好いているし、彼と触れ合うことは嫌いではないのだが、ハマるとよろしくない気がして遠慮しているところなのだった。

「確かにやっと涼しくなったよ。冷房を消す気もようやく起きたところだし」
「一緒にお散歩します?」
「それもいいんだけど」

 神様さんもサッとしゃがんで目の高さを合わせてきた。視界いっぱいに好みの顔。
 ほんっとに良い顔だよね!
 彼は首を傾げた。

「僕と一緒に運動したら、奇跡を使ってダイエットもできると思うんだよね。僕の心も満たされて、とっても都合が良いんじゃないかな」

 ニコッとされてしまった。私はこの顔にめっぽう弱い。

「そ……そういうチートはしない主義です!」

 私は立ち上がる。至近距離でこの綺麗な顔を見るのは心臓によろしくない。ドキドキしているのは急に立ち上がったからではないはずだ。

「ふふ。知ってる」

 満足げに笑って、神様さんも立ち上がった。蹴飛ばしてでも外に出るべきだったのかもしれない。神様さんは私をふわっと抱き止めた。

「……柔らかいねえ。君はこのくらいでちょうどいいと思うよ」
「服が合わなくなっちゃうんですよ。下着もキツく感じられますし。出費は控えたいじゃないですか」

 給料は横ばいなのに税金は上がって手取りが減った。出費は避けたい。

「君が思っているほど太ってはいないんじゃないかなぁ」

 神様さんの大きな手のひらが服の中に入り込む。背中を撫でたあとに腰を撫でられる。くすぐったい。

「下着も食い込んでいるようには感じられないよ?」

 ショーツと肌の間に指先が差し込まれる。なぞられるとゾクッとした。

「これ以上肥えなければ大丈夫さ。まあ……体重の維持のためなら、協力はやぶさかではないよ?」

 私の目を覗くように見つめて、彼は自身の唇を舌で濡らした。色っぽいけれど、その程度で揺らぐ私ではない。

「体力づくりも兼ねて、ジョギングをはじめましょうか」

 ニコッと笑って返し、神様さんの手を追い出す。あっさりと彼はひいた。

「むむ……今日の弓弦ちゃんは落とせないねえ。残念だよ」
「強引に攻めるのを諦めてくださってありがたい限りです」

 本気を出されたらやばい。ご無沙汰なのは事実なので、ちょっと危なかった気がする。
 神様さんは私を解放して腕を組んだ。

「体力づくりも大事だからね。君には長生きしてもらわないと」
「そういう意識、あったんですか」
「それに体力があったほうが、その気になったときにたっぷり楽しめるからねえ」
「えええええ……」

 神様さんの体力は無尽蔵ではある。私からの供給がなくならない限りはいくらでも活動可能だ。夜間は私の隣で寝るようにしているが、別に睡眠が必要というわけではないらしい。
 つまり、彼は私の体力が続く限りイチャイチャしたいのだろう。頻度よりも一度にかける時間を取ることにしたということだ。

「ふふふ。楽しみだなあ」

 神様さんは上機嫌である。これ以上なにか言えばさらに墓穴を掘ることになりそうだ。私は頭痛を感じて額に手を当てた。

「暑くなる前に行きますよ」
「うんうん。護衛を兼ねて付き合うよ」

 ジョギングをしている間くらいは心を無にできるだろうか。
 私は憂鬱の種を横目に、出かける準備を始めるのだった。

《終わり》
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