不可思議カフェ百鬼夜行は満員御礼

一花カナウ

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音楽・不可思議カフェ百鬼夜行の業務“外”日誌・2

絶対音感がないと出られない部屋・結

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「――ご苦労様だったね」

 眼帯の彼の店。カウンター席に腰を下ろしていた俺たちの前に、ノンアルコールのカクテルが置かれた。

「根本的な解決にはならないとは思うけれど、あの部屋で演奏の練習を定期的にすれば次第に落ち着くのではないかな」
「僕のときに起きてくれなかったのはなぜかな?」

 結果報告書は彼に送信済みだったが、すでに目を通しているとは思わなかった。

「素人のが良いらしい」

 そう返事をした店長が俺を見やる。
 俺は飲み途中だったカクテルを噴き出しそうになったのをグッと堪えた。
 店長がそれこそ耳に馴染むいい歌詞を書いて歌わせたのに部屋は閉ざされたままで、それに腹が立って俺がヤケクソになって書き殴って歌った歌詞でようやくドアが開いたのを思い出したのだ。どういう趣味なんだよ。
 なお、ボーカルの旋律と楽譜の旋律が違っていることが聞き取れないといけなかったようで、該当箇所の譜面を直したら俺がヤケクソに叫んでいるだけでもクリアだったもよう。解せぬ。絶対音感があった方が早く抜けられたかもしれない。

「僕はセミプロではあるけど、プロではないよ」
「認められているということだよ」
「彼らがそう判断してくれたことは嬉しいが、残念だなあ」
「だから、君があの部屋で演奏の練習をするのはお勧めしない。彼らを嫉妬させてしまうからね」
「オーケイ。承知した。使い方が分かったおかげで、また利用できるよ。ありがとう」

 そう応えて、彼はどこからか持ち出した二人分の小皿をカウンターに並べた。チーズとナッツのようだ。

「何か食べていくかい? 夕食はまだだろう?」
「ならば、鯖を使った料理を」

 店長が注文して、俺にウインクをする。鯖は俺の好物だ。

「少し待ってて」

 眼帯の彼は席を外す。彼の姿が見えなくなったところで、店長はグラスを持って俺に向けた。

「お疲れ様、獅子野くん」
「……ん。お疲れ様」

 俺もグラスを持って、店長のグラスに軽く当てるのだった。


《終わり》
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