不可思議カフェ百鬼夜行は満員御礼

一花カナウ

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不可思議カフェ百鬼夜行の業務日誌【短編集】

落とし物

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 彼岸の時期は物怪の通り道を利用する客が多いらしく、よく落とし物を拾うことになる。今日も天井の隅から良からぬものが落ちてきたらしかった。

「店長、最近やけに多くねえか?」

 テーブル席に禍々しい気配を放つ袋が落ちているのを見て、俺が声を掛けた。客が去ったあとに上から降ってきたから忘れ物ではない。

「先日、道を広くしたからかな?」

 店長はまるい眼鏡のつるを軽く持ち上げて袋を見る。ふんふんと頷くと、彼は指先でさっと持ち上げて天井の隅に放った。袋は壁にぶつかることなく虚空に消える。

「もっとやべえモノが落ちてきたらどうすんだよ。閉店後とか」
「そういうものは予知できるから、道を塞いでおくまでだよ。タダで通らせてやるほど、僕はお人好しではないつもりさ」

 コロコロと一つのどんぐりが降ってきた。獣のような怪異が天井の隅っこから顔を出してすぐに頭を引っ込める。
 店長はふぅとため息をついて、どんぐりを放った。天井の隅に吸い込まれて、代わるように獣のような怪異が顔を出す。手元にはどんぐり。ぴょこっと頭を下げたかと思うと素早く姿を消した。

「へえ、じゃあそのうち通行料でも取るのか」

 鼻で笑うと、彼はふっと笑った。

「いやいや。ここに落ちて来たら僕の研究対象になってもらうまでだよ。簡単にはかえさない。その覚悟を持って通りたまえと看板は出しているのでね」
「お、おう」

 冗談で適当なことを告げたわけじゃないことは、店長の目が笑っていないことから察した。恐え。
 ってか、それでこれだけ落とし物があるのかよ。

「落とし物がモノだとは限らないからね。落とせるものは何でも、だよ。命だって落とせるくらいだからねえ」
「まあ、産み落とすこともできるのが命だからな」

 俺がさらりと返すと、珍しく店長が驚いたような顔をしていた。

「……なんか変なことでも言ったか?」
「変ではないが。ああ、そうなると、赤子がこの店に転がり込むこともありうるのかな?」
「それは遠慮してぇなぁ……」

 迂闊なことを言ってしまった気がする。この喫茶店はそういう店だ。

「今夜は道を塞いでおこうかな」

 何か大きなものが通るのを察したのかもしれない。

「それがいい」

 ドアベルが鳴る。閉店時間まで残り二時間だ。

《終わり》
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