不可思議カフェ百鬼夜行は満員御礼

一花カナウ

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不可思議カフェ百鬼夜行の業務日誌・2【短編集】

手持ち花火と忘れ物

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 店の片付けをしていると、カウンターに手持ち花火のセットが置かれていることに気がついた。

「店長、これ、忘れ物か?」

 厨房で作業をしていた店長が顔を出す。カウンターに忘れられたように置かれていた手持ち花火のセットを見て、ふむと唸る。

「忘れ物ではないかもしれない」

 そう応えて、店長は店の隅を見やる。そこには物怪の通り道があるのだ。

「じゃあ、落とし物か」
「気配がね、人間のものじゃない」
「向こうでも花火はするのか?」

 人間のいる世界とは異なる道理が成立する向こう側の世界。俺は向こうで生まれたはずだが、記憶はこっちのものばかりなのでよく知らないのだ。
 俺が尋ねると、店長は薄く笑う。

「する者もいるんじゃないかな。花火はこちらと向こうを繋ぐ道を作ることがあるからね」
「弔うためじゃなく?」
「想いが世界を歪めるのだろう。目的は様々さ」
「ふぅん」

 俺が触れずにいると、店長がカウンターの前に回り込んで手持ち花火のセットを持ち上げる。

「僕たちには必要がないから、持って帰るといい」

 そう告げて、店長は部屋の隅に花火セットを掲げる。するとたちまちに姿を消した。

「投げ入れなくても回収されるんだな」
「手間だと思ったので細工をしたのだよ。投げる場所を間違えたら破損したり怪我をしたりして危ないからね」
「へえ……」

 店長もいろいろと考えてくれているようだ。

「この辺で花火ができるような場所はないからね。手持ち花火をもらっても困ってしまう」
「安全面を考えると、都心部で花火はなかなか難しいだろうな」

 花見ほどカジュアルにできないような気がする。数十年前なら、安全面はとにかく、公園で花火をすることはよく見かける光景だったのに。

「場所を見つけたら、君としたいものだ」
「俺は打ち上げ花火のほうが好きかな。人混みは好かねえけど」
「そうかそうか。打ち上げ花火が見える場所に心当たりがある」
「誘っているのか?」
「獅子野くんが迷惑じゃなければ、とっておきの場所に案内するよ」
「ん、考えておく」
「遠慮はいらないよ。また西瓜を送ってもらったからね、食べようじゃないか」
「そっちが本音だろ」
「さあ、ほかにも狙いはあるかもしれない」

 そんなことを言って妖しく笑うので、俺は知らぬふりをして仕事に戻るのだった。


《終わり》
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