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5章:エピローグへの足音
エピローグへの足音 1-1
しおりを挟むその日は晴天だった。
透き通るような晴天。アナベルは眩しそうに目元を細めて、準備をしていた。
極上のシルクで作られたドレスは肌触りが良く、アナベルにとても似合っていた。
髪を結い上げ、ゆっくりと呼吸を繰り返す。
化粧をして鏡に映った自分の姿は、完璧な貴族の女性だった。
「……今日で、すべてを終わらせるつもりです」
アナベルの近くにいたメイドたちは、ぴたりと動きを止めた。
そして、神妙な顔でうなずく。
「はい、アナベル様。私たちは、アナベル様を信じます」
メイドを代表するように、ひとりがそう言った。
アナベルは困ったように眉を下げて、それから微笑んだ。
「……ありがとうございます。わたくしを信じてくれて。必ず、戻ってきますわ」
アナベルの言葉に、メイドたちはうなずいた。
ロクサーヌたちは、すでに会場に向かっている。
そろそろ自分も向かおうと玄関まで歩いていると、エルヴィスが彼女を迎えに来ていた。
「ごきげんよう」
「――ああ。……よく似合っているな、そのドレス」
「軽くて動きやすくて、とても気に入りましたわ」
にっこりと微笑みを浮かべてドレスの裾を持ち上げるアナベルに、エルヴィスは「それは良かった」と優しい口調で言葉をかけ、アナベルへ手を差し出す。
「――行こうか、すべてを終わらせに」
「はい、エルヴィス陛下」
ふたりはうなずき合い、舞踏会の会場である王城へと向かった。
王城は活気が溢れていた。舞踏会を開くことになり、各地の貴族たちも参加しているこの会場で、王妃イレインがどのような末路を迎えるのか――……。
アナベルは馬車の窓から外を眺めながら、口角を上げた。
「……楽しそうだな?」
「ええ、まあ。わたくし、一応『重傷者』になっていましたでしょう?」
マルトはアナベルを殺すことに失敗した。
彼女はアナベルの問いかけに対し無言を貫いていたが、どちらをとっても自分はもう殺される運命なのだと涙を流した。
アナベルは、彼女を殺そうとは思わなかった。
自分の味方になれば良し、ならなくても、最悪閉じ込めるだけにすれば良いと考えていたからだ。
(――王妃サマには、殺すことが出来なかったが重傷の傷を与えたと手紙を出させたのよね。王妃サマ、ご機嫌だったみたい)
これ以上刺客を送り込まなくても良いと判断したのだろう。マルトのことはそのまま放置され、彼女はアナベルにつくことを決めた。
自分の命を失いたくないという理由だった。
アナベルに止めを刺さずにいるマルトを、イレインは始末するだろう。
ロクサーヌに言われて、マルトは生きたい、と願った。
「それにしても、よくそんな嘘を思い付いたな?」
「嘘も貫き通せば真実と変わりませんわよ、陛下。『重傷者』が舞踏会でピンピンしているのを見て、どんな顔をするのかが楽しみですわぁ」
声を弾ませるアナベルに、エルヴィスは肩をすくめた。
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