42 / 70
2章:異存
怪異の元凶 1話
しおりを挟む
翌日。やっぱり異界に取り込まれ、架瑠は頭を抱える。
「――この部室だけ異界に取り込まれるって、おかしいよね?」
「おかしいどころか、こうも連日取り込まれるほうが変だろう。元凶を叩かないと終わらないんじゃないか、これ」
紬が呆れたように肩をすくめながら、すっかりおなじみになった『よこせ』『かける』『にげて』の文字を眺めた。
「ワタシは毎日怪異に触れられて、嬉しいけどね!」
「……そこで喜んじゃうんですね、羽井田先輩……」
佑心は相変わらず怪異に瞳を輝かせているし、茉莉もだいぶ慣れてしまったのか、がくりと肩を落として言葉を紡ぐ。
「元凶って言っても……」
怪異に取り込まれてから、何度か霊視をしているが、視えるものは同じだ。
べったりと血で濡れているナイフ。あれがなにを意味しているのか、架瑠にはわからなかった。――いや、正確には意味を知ろうとはしなかった。
ナイフを見ると、心臓が早鐘を打つ。まるで、『思い出すな』と警告しているように。
「とりあえず、今日は少し様子を見てみるか」
「いつもは紬に焼いてもらって、帰還するもんね」
血で出来た人間の手が襲いかかってきたのは、初日だけ。それ以降は怪異に取り込まれてすぐに、紬の炎で黒板を燃やしてもらい、帰還していた。
紬の炎は黒板を焼くが、現実世界に戻ると黒板は綺麗なままだ。血文字もなく、燃えてもなく、本当にオカルト研究部の部室だけが現実世界と切り離されてしまう。そんな変な怪異のようだ、と架瑠はため息を吐く。
「では、今日は少し時間を潰そうか」
「大丈夫なんでしょうか……」
不安げな茉莉に、佑心は彼女に近付いて、その背中を軽く叩いて励ました。
「ワタシたちは氷華界からも帰還したんだよ? さらにこの怪異に取り込まれてからも無事に帰還している! きっと神は我々の味方だよ!」
「か、神さま……ですか?」
こくり、と大きく首を縦に動かす佑心に、茉莉は目を丸くする。
佑心の言葉にびっくりしたのは、茉莉だけではない。
架瑠も紬もぎょっとしたように目を見開いていた。
「……神さまが味方なら、怪異に巻き込まれないと思いますが……?」
架瑠の言葉に、紬と茉莉は同意のうなずきを返した。それを見た佑心は、茉莉の背中から手を離し、自身の腰に手を添えるとにんまりと微笑む。
「神はきっと、ワタシたちの成長を願っているんだよ」
「成長……?」
「そう、これは神から与えられた試練! 乗り越えることで、神から祝福を受けられるのさ! ……そう考えたほうが、気が楽ではないかい?」
ぐっと拳を握り熱く語る佑心に、架瑠たちは目をぱちくりと瞬かせた。
「――この部室だけ異界に取り込まれるって、おかしいよね?」
「おかしいどころか、こうも連日取り込まれるほうが変だろう。元凶を叩かないと終わらないんじゃないか、これ」
紬が呆れたように肩をすくめながら、すっかりおなじみになった『よこせ』『かける』『にげて』の文字を眺めた。
「ワタシは毎日怪異に触れられて、嬉しいけどね!」
「……そこで喜んじゃうんですね、羽井田先輩……」
佑心は相変わらず怪異に瞳を輝かせているし、茉莉もだいぶ慣れてしまったのか、がくりと肩を落として言葉を紡ぐ。
「元凶って言っても……」
怪異に取り込まれてから、何度か霊視をしているが、視えるものは同じだ。
べったりと血で濡れているナイフ。あれがなにを意味しているのか、架瑠にはわからなかった。――いや、正確には意味を知ろうとはしなかった。
ナイフを見ると、心臓が早鐘を打つ。まるで、『思い出すな』と警告しているように。
「とりあえず、今日は少し様子を見てみるか」
「いつもは紬に焼いてもらって、帰還するもんね」
血で出来た人間の手が襲いかかってきたのは、初日だけ。それ以降は怪異に取り込まれてすぐに、紬の炎で黒板を燃やしてもらい、帰還していた。
紬の炎は黒板を焼くが、現実世界に戻ると黒板は綺麗なままだ。血文字もなく、燃えてもなく、本当にオカルト研究部の部室だけが現実世界と切り離されてしまう。そんな変な怪異のようだ、と架瑠はため息を吐く。
「では、今日は少し時間を潰そうか」
「大丈夫なんでしょうか……」
不安げな茉莉に、佑心は彼女に近付いて、その背中を軽く叩いて励ました。
「ワタシたちは氷華界からも帰還したんだよ? さらにこの怪異に取り込まれてからも無事に帰還している! きっと神は我々の味方だよ!」
「か、神さま……ですか?」
こくり、と大きく首を縦に動かす佑心に、茉莉は目を丸くする。
佑心の言葉にびっくりしたのは、茉莉だけではない。
架瑠も紬もぎょっとしたように目を見開いていた。
「……神さまが味方なら、怪異に巻き込まれないと思いますが……?」
架瑠の言葉に、紬と茉莉は同意のうなずきを返した。それを見た佑心は、茉莉の背中から手を離し、自身の腰に手を添えるとにんまりと微笑む。
「神はきっと、ワタシたちの成長を願っているんだよ」
「成長……?」
「そう、これは神から与えられた試練! 乗り越えることで、神から祝福を受けられるのさ! ……そう考えたほうが、気が楽ではないかい?」
ぐっと拳を握り熱く語る佑心に、架瑠たちは目をぱちくりと瞬かせた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
終焉列島:ゾンビに沈む国
ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。
最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。
会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる