でんじゃらすでございます

打ち出の小槌

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第四章 才蔵のしくじり

(三)海に沈む

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「おくに・・とな・・」
ぬっと上の枝から、毛むくじゃらの手が肩を、とんとん。わっと枝を跳ね、八方に手裏剣を放つ。
もう才蔵は腹をくくった。
地に下りると、藪にもぐる、すぐに木に跳ね、追ってこいとばかりに枝から枝へ。そして煙玉を懐に袂に、二つ、三つ。
「あれを、やるか」
ふと気配があった。
やあっ、煙玉を放つ。どうっと爆音に煙がもうもう。それでも、それそれっと煙玉に、煙玉、まったくの霧になった。
この、不意打ちの煙に包まれれば、どいつも乱れる。そこを手裏剣で狙う。いつかの城攻めで囲まれ無茶をしたのがこれだった。
紅丸さまは笑ったな。
子狐らしい。どろんと消えて敵を倒すのかい。
おいらの忍術、霧隠れ。
手裏剣を構えて藪にひそむ。あとは、気配をみっける。
どこか。
「隣におる・・」
跳び上がった。
わっと転げるや、手裏剣を投げ、合わせて煙玉も投げつけた。どうっとさらに白い煙に包まれる。才蔵は木の枝へ跳ねた。ぬぐえども汗が滴り落ちる。
「おかしい」
こうも、してやられるものか。
ひゃっひゃっ。どこからか笑いがあった。
「おかしくは・・ない。いまや、わしの素早さは猿飛など及ばぬ・・わしの心の探りは狐葉など及ばぬ・・」
「ゆえに、ひとでなし」
「まだ・・その減らず口・・」
ものいいが荒げた。
「お仕置き・・」
ぱっと才蔵は枝を跳ぶ。そして枝から枝へ跳ぶ。どうせ、そこらの枝にいるはず。なら追ってこい。右に左に跳ぶ。腰に吊るした皮袋からほうろく玉を取った。
「ぶっ飛ばせまい。けど枝は折れる」
落っこちれば畳みかける。気配があった。
「ひっ」
目の前の枝に、居る。
留まろうとした弾みに枝がべきっと折れ、おのれが落っこちた。おおっと、毛むくじゃらがうかがう。
ぐったりなってる。
ふむっとうなると、ひょいと下りてきた。猿面がぬっとのぞく。
「いまっ」
頭突きを、ごちんとお見舞い。それで、その鼻っつらにほうろく玉をぽいっ。
どかんとなる。
才蔵は咄嗟に跳ねたが、逃げ切れない。ぶっ飛ばされて藪にずっぽりと入った。火薬がぷんとにおう。木々がちりちり燃える。ふうっと、ほこりやらを払いながら出た。
はたして。
焦げ跡に生首がひとつ。
「やったか」
よろりと歩み寄った。
あっ、心がぶるっと震えた。
「宝林」
千切られた首がそこにある。ひゃっひゃとどこかで笑ってる。
「あざむくなら、あざむく・・」
才蔵は息を呑む。
「じたばたするな・・」
もはや、振り向かない。滅茶苦茶に走りに走った。薮を抜け、木に跳ね、枝を次々に渡ってゆく。落っこちようと、こけようと、それでも走る。
あてなどない。ともかく逃げる。
小枝の先で突いたのか、袖は破れ、腕やら足やら血だらけになってる。
でも、あの、嘲る笑いは遠くにならない。
むしろ近寄っている。
なぜか、まるっきり、おいらは読まれてる。
あの、ましらに。

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