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男子寮のミステリー
クリスマス/男子寮のミステリー
しおりを挟む男子寮の食堂は、冬の冷たい夜気を忘れさせるほどの温もりに包まれていた。
中央の大きなクリスマスツリーには、赤や金のオーナメントが光を反射し、暖色の電飾がリズムよく瞬いている。壁には手作りのリースが並び、漂う甘いケーキの匂いと薪の香りが混じり合っていた。
寮生たちはそれぞれのプレゼントをツリーの下に置き、交換会を楽しみに待っていた。
しかし、ふと輪廻がツリーの前で足を止める。
「……あれ。俺のプレゼントが、なくなってる。」
低い声が、ざわめいていた空気を凍らせた。
「はぁ?クリスマスに泥棒?映画みたいだね。」
桃瀬が軽やかに笑い、目をきらりと光らせる。悪戯を思いついた子供のような顔だった。
「ま、まさか誰かが……盗んだってことか?」
緑は青ざめ、輪廻の袖を掴んだ。
「まぁまぁ、落ち着けって。」
葵が腕を組み、ツリーをじっと見据える。
「まだ断定するのは早い。こういう時は調べてみるしかないだろ?」
その言葉を合図に、みんなは食堂を出て寮内の調査を始めた。
廊下は夜の冷気に支配され、窓ガラスには白い息が映る。
やがて桃瀬が、小さな包装紙の切れ端を拾い上げた。
「見てよ。これ、プレゼントの包み紙じゃない?」
彼は赤と金の模様を得意げに掲げた。
「……ほんとだ。」
輪廻は光にかざし、眉を寄せる。
その後、調査を続ける面々の耳に、緑の囁きが届いた。
「そういえば昨夜、ツリーのそばで……ゴソゴソって音がした気がして。でも、確かめるのも怖くて……」
その証言に桃瀬が満足げに笑う。
「ほらね、やっぱり事件だよ。ボクの推理、当たりじゃん。」
輪廻はツリーの影を見つめ、わずかに目を細めた。
「……音がした時間と、この包装紙。うーん……」
その時、廊下の片隅に無造作に置かれた小さな箱を発見した。
開けかけのその箱は月明かりに照らされ、どこか痛々しく寂しげに見えた。
「俺のプレゼントが。……犯人は、この中にいるはずだ。」
輪廻の言葉に、場の空気が一層張り詰める。
やがて、輪廻が一人の生徒の名を呼んだ。
今月から入寮したばかりの新入りだった。彼は視線を落とし、唇を震わせる。
「……ごめん。僕が……動かしたんだ。」
彼の声は小さく、しかしはっきりしていた。
「どうしてそんな事を?」
葵が問いかける。
新入りは、力なく吐息を漏らす。
「……僕、まだ馴染めてなくて。プレゼント交換って、みんなどんなのをあげるのかなって確認したくて……。僕が選んだプレゼントが場違いじゃないか不安で……。」
孤独と怯えがにじむ告白だった。
「……はぁ?確認って。そんな理由?」
桃瀬は呆れながらも、どこか優しい笑みを浮かべる。
「でもまぁ、分かるかも。最初は不安になるよねぇ。」
葵は力強く新入りの背中を叩いた。
「次からは勝手に触るなよ。けど……心配すんな。ここはお前の居場所だ。」
プレゼントは元に戻され、食堂は再び温かな光で満ちた。
ツリーの下で腰を下ろした桃瀬が、輪廻をちらりと見て言う。
「ねぇ、事件解決。やっぱクリスマスって最高だよね。」
その笑顔に、輪廻の胸は締めつけられるように熱を帯びた。
鈴の音と灯りに照らされながら、男子寮のクリスマスイブは静かに幕を閉じる。
残されたのは、安堵の笑みと、淡く芽生えた恋の予感だった。
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