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恋愛シミュレーションモード
葵と輪廻/キャンプ
しおりを挟む週末の午後。
窓の外は雲ひとつない青空が広がり、木々のざわめきが季節の移ろいを告げていた。
そのとき、輪廻の部屋のドアが勢いよくノックされる。
「輪廻、週末ヒマだろ?キャンプに行こうぜ!」
葵は大きなバックパックを背負い、弾む声と共に現れた。
その表情には冒険を前にした少年のような期待が浮かんでいる。
「キャンプ?……いいけど。でも葵って、意外とアウトドア派だったんだね。」
少し驚いた輪廻に、葵は笑顔で胸を張った。
「俺、自然の中にいるとめっちゃリフレッシュできるんだよ。普段できないことがたくさんあって、最高に楽しいんだ。」
そう言って、親しげに輪廻の肩を軽く叩く。
「……頼りにしてるよ。実はキャンプって、ほとんど経験なくてさ。」
不安げな笑みを浮かべる輪廻に、葵は「大丈夫!」と即答する。
「俺が全部面倒見てやるから安心しろって。」
バスに揺られ、山へ向かう。
窓を開ければ、湿った草の香りと澄んだ風が流れ込み、街の空気を洗い流すかのようだった。
「な、この空気。吸うだけで元気になるだろ?ほら、深呼吸してみろよ。」
葵が真剣に言うものだから、輪廻は少し照れながらも深呼吸をする。
「ほんとだ……肺が浄化されていくみたい。」
思わず笑みをこぼす輪廻に、葵もにかっと笑った。
キャンプ地に着くと、葵は迷いなくテントを広げ、手際よく設営を始める。ペグを打つ音が山の静けさに響いた。
「すごい……テントってこんなに早く張れるんだ。」
感心したように眺める輪廻に、葵は得意げに笑う。
「慣れれば余裕。けど、ペグを甘く打つと風で飛ぶからな。こうやって斜めに刺すのがコツだ。」
説明しながら輪廻の手をとり、ペグを一緒に押し込む。
指先が触れた一瞬に、輪廻の胸はかすかに高鳴った。
夕暮れ。
炭火が赤く熾り、香ばしい匂いが漂い始める。
葵は慣れた手つきで肉を並べ、野菜を網に置いていく。
「葵ってさ、こういうとき本当に頼りになるよね。」
輪廻が感心したように口にすると、葵は肩をすくめて笑った。
「だろ?普段は適当でも、キャンプのときは俺に任せとけ。」
食欲をそそる匂いに包まれながら二人は笑い合い、夕食のひとときを楽しんだ。
やがて夜。
焚き火が小さな炎を踊らせ、赤い光が二人の顔を照らす。
「これがキャンプの定番、焼きマシュマロ!」
葵が串に刺したマシュマロを差し出す。
火にかざすと表面がこんがりと色づき、甘い香りが漂ってきた。
「本当に美味しいの?」
半信半疑の輪廻に、葵は焼き上げたマシュマロを差し出す。
「食ってみろよ。中がトロトロで最高だから。」
輪廻が恐る恐るかじった瞬間、とろける甘さに目を見開いた。
「……美味しい!外は香ばしいのに、中はふわっとして……何これ、完璧。」
嬉しそうに笑う輪廻を見て、葵の胸の奥に温かなものが広がる。
「だろ?次は自分で炙ってみな。焦げすぎても案外うまいんだぜ。」
焚き火の炎が小さくなっていくころ、夜空には無数の星々が広がっていた。二人は寝袋に横たわり、肩が触れるほどの距離で空を見上げる。
「……都会じゃ、こんなに星は見えないよね。」
輪廻は息を呑むように囁いた。
「ああ。俺、田舎でよく星を見てたんだ。夏休みに友達と寝転んで、星座を探したりしてさ。」
懐かしそうに語る葵の声は、夜の静けさに溶け込んでいく。
「俺なんてオリオン座くらいしか知らないかも。」
輪廻が苦笑すると、葵は空を指さす。
「じゃあ、教えてやる。ほら、あれが夏の大三角。」
輪廻の視線を誘導するように、葵の手が彼の手の甲に軽く触れる。偶然のようでいて、逃れられない温もり。輪廻の頬は夜風に触れながらもほんのり熱を帯びていた。
「……ほんとだ。星座って、知ると楽しいんだね。」
静かな時が流れ、焚き火の名残りの光が消えていく。
「なあ、輪廻。」
葵はぽつりと呟いた。
「こういう時間って、本当に大事だと思う。」
「うん……誘ってくれてありがとう。楽しいだけじゃなくて、癒された。」
輪廻が微笑むと、葵は少し照れたように顔をそらし、笑った。
「また行こうぜ。次はもっとすごい場所、見つけてやるから。」
その約束は、静かな星空の下で交わされた小さな秘密のように、二人の心に深く刻まれていった。
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