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男子寮の日常
男子寮の大掃除/男子寮の日常
しおりを挟む年末特有の冷たい風が窓の隙間から吹き込み、男子寮の食堂には慌ただしい空気が漂っていた。
恒例の大掃除の日。
積もったほこりや雑然とした荷物に、生徒たちのため息と笑い声が交じり合う。
「さぁみんな!今日は寮をピカピカにするぞ!この日のために俺は準備してたんだからな!」
葵がモップを掲げると、窓から差し込む冬の日差しがその姿を照らした。
「掃除なんて適当にやればいいんじゃない?どうせまた汚れるしさ。」
桃瀬は気だるげにほうきを手に取り、わざと床を適当に掃きながらつぶやく。
「うわぁ……ここ蜘蛛の巣だらけじゃん……」
緑は隅に縮こまり、壁の影を気にして落ち着かない。
「まあまあ、みんなでやればなんとかなるよ。まずはリビングから始めよう。」
輪廻が穏やかに促し、静かに掃除道具を手に取った。
作業が始まると、案の定トラブルは絶えなかった。
「ねぇねぇ、こうやって壁をゴシゴシすれば――あれっ?壁が剥がれたんだけど!?」
桃瀬の声に振り向けば、古びた壁紙がぼろりと落ち、下から薄暗い木目が露わになる。
「お前、力入れすぎだろ!壁はなぞる程度でいいんだよ!」
葵が呆れた声をあげるが、輪廻は一瞬だけ壁の隙間を見つめた。
そこには細い傷のような跡が走っており、まるで何かが引っかいたように見えた。
一方、緑の悲鳴が廊下に響き渡る。
「ひぃ~~!蜘蛛がウジャウジャいる!輪廻、助けてぇ!」
クローゼットの奥に揺れる蜘蛛の巣を前に、今にも泣き出しそうだ。
「蜘蛛って見た目は怖いけど、実は害虫を食べてくれるんだ。大丈夫。」
輪廻が手を伸ばして片付けると、その仕草に緑は頬を赤らめ、小さく「ありがと。」と呟いた。
大掃除が進むにつれ、寮生たちの息も合ってきた。
雑巾を投げ合ってふざけたり、埃まみれになって笑い合ったり――普段の喧騒とは違う一体感がそこにあった。
「やっぱりみんなでやると楽しいよな!この調子で他の部屋も片付けるぞ!」
葵が掃除機を引きずりながら声を張る。
「ま、悪くないね。でもどうせまた汚れるんだし。」
桃瀬は強がるように言いながらも、隣で輪廻の袖に軽く触れた。
その一瞬の温もりに、輪廻の胸が妙に跳ねる。
緑は埃にむせながらも微笑み、少しずつ顔を明るくしていた。
夕暮れ、ようやく全ての掃除を終えた寮内は見違えるほどに清潔になっていた。
床は光を反射し、窓ガラスは透き通り、空気さえ澄んでいるように思える。
「これで来年はすっきりした気持ちで始められるね。みんな、お疲れさま。」
輪廻が淹れたお茶を配ると、温かな湯気が立ち上り、寮生たちの疲れを癒した。
「ほんとだな!こうしてみんなでやるのって意外といいもんだ!」葵が笑い、
「まぁ、大変だったけど……笑える一日だったよね。」桃瀬が気怠げに言いつつも、口元に小さな笑みを浮かべる。
緑は安心したように「次はもっと早めに片付けたいよな。」と呟き、寮内には達成感が広がっていった。
だが、その温かな空気の中で――輪廻だけは気付いていた。
昼間に剥がれた壁の奥、ほんの一瞬覗いた暗がりに、誰かの視線のようなものを感じたことを。
笑い声とお茶の香りに紛れて、その不穏なざわめきは胸の奥に沈み込み、消えることなく残り続けていた。
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