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男子寮の日常
運動会/男子寮の日常
しおりを挟む澄み渡る秋空に、太陽がまぶしく光を投げかけていた。
男子校恒例の運動会は朝から熱気に包まれ、整列した生徒たちの肩越しに、鮮やかな万国旗が風に揺れている。
校長の短い挨拶の後、生徒代表の赤塚が壇上に立つと、マイクを握る腕からも熱気が伝わってくるようだった。
「男子諸君、今日という日は絆を深め、力を試す時だ!勝利を掴むその手で、己の限界を超えてみせろ!」
声は校庭に響き渡り、地面に反響する。
誰もが思わず背筋を伸ばし、胸の奥が熱くなる。
その様子を見ながら、輪廻は小さく首をかしげて隣の緑に話しかけた。
「赤塚って、こんな熱血だったっけ?開会式から全力じゃない?」
「まあ、そういうところも赤塚らしいっていうか。でも、俺らも負けられないじゃん!」
緑は拳を握りしめ、目に炎のような輝きを宿していた。その姿に輪廻は小さく笑みを返す。
最初の競技はクラス対抗リレー。
白いラインの引かれたトラックに、選手たちのスパイクが土を踏み締める音が響く。
観客席ではクラスメートたちが旗を振り、喉を枯らす勢いで声援を送っていた。
第一走者に立つ緑は、スタート地点で大きく息を吸い込む。
「俺に任せて!第一走者でぶっちぎるから!」
その言葉に、輪廻は笑顔で応え、肩を叩いた。
「頼んだよ、緑。次は俺が繋ぐから!」
号砲が鳴り、砂煙を蹴って緑が駆け出す。
ところが、突然視界を横切った黒い影に彼は思わず体を傾けた。
ハチだった。
「ちょっ、俺の邪魔すんな!」
走路を外れかける緑の声に、観客席から大きな笑いが起こる。
「緑ー!気を抜かず頑張れー!」
必死に叫ぶ輪廻の声を聞き、緑はぎりぎりでバトンを差し出した。
汗ばむ手が触れ合い、一瞬だけ互いの視線が絡む。
鼓動が跳ねる感覚に、輪廻は思わず息を呑んだ。
その後の走者たちの奮闘でチームは追い上げ、最後に赤塚がゴールテープを切った瞬間、校庭は歓声に揺れた。
「我らの団結が勝利を呼び込んだ!」
赤塚の声に、仲間たちは次々と手を差し出し、熱いハイタッチの音が重なった。
次の競技は綱引き。
綱の中央に白いラインが引かれ、審判の笛が鳴ると同時に土煙が舞い上がる。
「輪廻!俺らの力見せようぜ!」
葵が力強く叫び、太い綱を握りしめる。
「こういう競技は根性が大事だ。気を抜くなよ。」
生徒たちを見守る冷静な口調の真黄でさえ、額に汗をにじませていた。
しかし、足場の悪い地面に緑が足を取られ、転んでしまう。
「ごめん、俺のせいで!」
涙声のような叫びに、一瞬綱が緩んだ。
「大丈夫、まだいける!」
輪廻の声が全員の背を押す。
声に励まされるように緑も立ち上がり、最後の力を振り絞った。
土の匂いと歓声が入り混じる中、綱がじわじわと自陣に引き寄せられ、ついに勝利の笛が鳴り響いた。
午後の仮装走では、笑いが校庭に広がった。
緑はウサギの着ぐるみで現れ、ピョンと飛び跳ねてみせる。
「これ、俺のウサギの着ぐるみどう?ウケるでしょ?」
「緑ってほんとお笑い担当だね。でも、似合ってるよ。」
輪廻が笑顔を浮かべると、緑は頬を赤くしながらも、誇らしげに胸を張った。
だが走る途中、尻尾がネットに引っかかり転倒する。
土にまみれた姿で再び立ち上がる緑に、クラス全員が大爆笑と拍手を送った。
その姿に、輪廻の胸には「可愛い」という言葉が不意に浮かんでしまい、思わず目を逸らす。
夕暮れ。
運動会最後の全校マラソンでは、赤く染まる空の下、全員が肩を並べて走った。
「今日の勝敗はどうでもいい。この絆こそが俺らの勝利だ!」
赤塚が力強く叫ぶと、夕陽に照らされた汗が煌めいた。
空には夕日が広がり、運動会は笑いと達成感で幕を閉じた。
輪廻たちにとって、絆を深めた特別な一日として心に刻まれることとなった。
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