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男子寮の日常
嵐の日の男子寮/男子寮の日常
しおりを挟む窓の外では、怒涛のような雨と風が夜空を叩きつけていた。
ガラスに打ち付けられる雨粒が細かく砕け、稲妻が一瞬だけ寮の廊下を蒼白に照らす。
男子寮は厚い壁に守られていたが、その中にいる生徒たちの胸には、閉じ込められる感覚がじわじわと広がっていた。
ラウンジのソファに身を沈めていた輪廻は、静かにカップを揺らしながら外の様子を見やった。
ここに集まったのはいつもの仲間たち──葵、桃瀬、緑、そして他の寮生たち。
けれど、ざわめく嵐の音が空気を圧迫し、普段の何気ない談笑さえどこか不自然に聞こえる。
「すごい雨だな!こりゃ、今日は一歩も外に出られそうにないぞ!」
葵は窓辺に駆け寄り、両手でガラスを叩くように指差した。
背後からの照明が逆光になり、頼もしげな肩幅が影となって浮かび上がる。
「まあ、こういう日は外に出ないほうがいいに決まってるけど。でもさ、部屋でずーっと何もしないのって退屈すぎない?」
桃瀬はソファに腰掛け、長い脚を組みながら頬杖をついた。
乱れた前髪の隙間から覗く視線は、退屈というよりも、どこか挑発的に見えた。
「うぅ……台風って怖いよなぁ……。停電とかになったらどうすんの?っていうか、考えただけで不安なんだけど……。」
緑は毛布を肩まで引き寄せ、小さく丸くなっていた。
雨音に混じって、彼の不安げな呼吸がかすかに聞こえる。
「停電になる前に、みんなで何か楽しいことを見つけてやろうよ。」
輪廻は柔らかな声で言い、場を和ませようとする。
暗さを払うその声音に、緑の肩は少しだけ落ち着いたように見えた。
やがてテーブルにカードやボードゲームが並び、ラウンジの真ん中に自然と輪ができた。
窓を叩く風雨の轟音を背に、色とりどりの駒が盤上を動いていく。
「よっしゃ、最初はボードゲームで頭を使うぞ!負けたら罰ゲームな!」
葵が意気込んで駒を並べると、周囲は一瞬ざわついた。
「ちょ、そういう罰ゲーム系はもう飽き飽きなんだけど……まあ、勝つから関係ないけど!」
桃瀬はすかさず反論し、カードをひらりとさばく。
強気な笑みと裏腹に、稲光に照らされる横顔はどこか艶やかで、緑は無意識に視線を逸らした。
「うぇぇ……そんなの嫌だよ。でも……まぁ、楽しそうだから、頑張ってみるか……。」
緑は駒を握りしめ、小さな指先に汗をにじませる。
隣に座る輪廻がそっと見守るのに気づき、胸がわずかに高鳴った。
遊びはボードゲームからトランプへと移り、笑い声が絶え間なく響く。
外の嵐がいっそう激しく荒れ狂っても、ラウンジの灯りの下だけは、不思議と温かい空間に変わっていった。
やがて夕刻。
雨音は次第に弱まり、窓越しに見える雲がゆっくりと流れを変えていく。
「台風がひどかったけど、こうしてみんなで過ごせて良かったね。」
輪廻は湯気の立つカップを両手で包み込み、微笑んだ。
「確かに。外に出られないのも悪くないもんだな!こういうのって案外楽しいよな。」
葵は豪快に笑い、お茶をすする。
頼もしげな背中に寄り添う安心感が、皆の心を穏やかにした。
「……でも、次は絶対に晴れた日に外で遊ぶからね!やっぱり、閉じこもりなんて僕の性格に合わないし!」
桃瀬は肩をすくめながらも、照れ隠しのように笑った。
「うん……でも今日はいい思い出になったよね。」
緑は頬を赤らめながら笑い、ラウンジを包むぬくもりにそっと目を細める。
外の雨風が完全に遠ざかるころ、寮には穏やかな夜が訪れていた。
台風の日という非日常の中で育まれたひとときは、嵐が去った後も、胸の奥で静かに灯をともしたまま消えなかった。
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