-RINNE-ボーイズラブ恋愛シミュレーション人狼『輪廻』

TERRA

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男子寮のミステリー

幻のワイン/男子寮のミステリー

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夜の繁華街から少し外れた路地に、その店はひっそりと佇んでいた。
磨き込まれた木の扉をくぐると、琥珀色の光が迎えてくれる。
木目の深いカウンター、柔らかに響くジャズ。
外の喧騒とは無縁の、穏やかな静寂が広がっていた。

テーブル席に並んで座るのは真黄と紫苑。
互いにグラスを手に、控えめに傾けながらゆっくりと言葉を交わす。

「お前を一度ここに連れてきたかったんだ。」
真黄が柔らかに笑みを浮かべる。その声音には、軽い誘い以上の思いが滲んでいた。

「ここのオーナーはソムリエ資格を持っていて、仕入れるワインはどれも一級品だ。あの“幻のワイン”も、ここでしか味わえないらしい。」

紫苑は淡く頷き、グラスの縁に指を滑らせながら応じた。
「幻のワイン……その響きだけで胸が高鳴るよ。飲む前から物語を感じるようだ。」

短い沈黙。
ジャズの旋律が二人の間を満たす。
紫苑の横顔を見つめる真黄の視線には、どこか親密さが宿っていた。

──だが、その静寂は唐突に破られる。

バーカウンターの奥から、慌てた様子でオーナーが駆け寄ってきたのだ。

「すみません! お出しするはずだった“幻のワイン”が……消えてしまったんです!」

紫苑と真黄の視線が交差する。
淡い笑みを消した二人は、同時にわずかに身を乗り出した。

「幻のワインが?」
真黄が低く問い返す。

オーナーの肩が震えた。
「秘蔵のヴィンテージです。常に鍵付きの棚に保管していて、鍵は私が管理していました。しかし……気づいたときにはもう、跡形もなく。」

「鍵に異常はなかったのか?」
紫苑が静かに尋ねる。

「ええ、破られた形跡はありません。」
悲痛な面持ちで頷くオーナー。

真黄は息を吐き、ゆるやかに立ち上がった。
「……興味深い状況だ。少し調べさせてもらえないか?」

紫苑も椅子を引き、真黄の隣に並ぶ。
「謎解きは得意分野でね。協力させてもらおう。」

二人が視線を交わすと、その間に言葉ではない信頼が走った。


案内されたのは、鍵付きの棚。
木の扉はきちんと閉じられており、破損の痕跡は見当たらない。

真黄は棚の蝶番を撫でながら考え込む。
「鍵が破られていないのなら、別の経路から……」

紫苑はふと立ち止まり、棚の周辺に漂う微かな匂いに眉を寄せる。
「香水の残り香がするな。……この香りは強い。偶然残るものじゃない。犯人は足跡ならぬ“香り”を残していったらしい。」

オーナーの顔に動揺が走る。

真黄はさらに資料を手に取り、店の見取り図を眺めた。
指先で線をなぞり、やがてふっと表情を変える。
「……妙だ。この図面と実際の構造が一致していない箇所がある。」

「つまり?」
紫苑の目が細められる。

「隠し通路だ。棚の裏に繋がっている可能性がある。もしそうなら、鍵を使わずにワインを持ち出せる。」

紫苑は小さく頷いた。
「なるほど。ならば、その通路を探すしかない。」


二人はバーの奥を調べ、壁の一部に不自然な隙間を見つけた。
押し開けると、そこには人ひとり通れるほどの細い通路が暗闇へと続いている。

「……やはりな。」
真黄が低く呟く。

湿った空気の中を進むと、小さな空間に木箱が置かれていた。
中には、例の幻のワイン。

その頃、紫苑は怪しい行動をとっていた従業員がいたとの話を常連客から聞き出した。

真黄は箱を抱え、静かに通路を戻る。
「犯人は香水を纏っていた人物。そして、頻繁に席を立っていた従業員──条件が一致する。」

オーナーの視線がその男へと向かう。
従業員は顔色を失い、動揺を隠せない。

「……まさか、こんな手を使っていたとは。」
オーナーの言葉に、店内の空気が張り詰めた。


事件はこうして解決した。
幻のワインは無事にオーナーの手に戻り、店に再び静けさが訪れる。

席に戻った真黄と紫苑。
ふたたびジャズが流れ、グラスが二人の間に置かれる。

「困ったときはお互い様だな。」
真黄が控えめに微笑む。

紫苑はグラスを持ち上げ、琥珀色の液体を光にかざした。
「……では、この一杯で夜を締めくくろうか。」

グラスが触れ合う小さな音が、夜のバーに溶けていく。
その一瞬、互いの指先がかすかに触れ、淡い緊張と静かなときめきが心を揺らした。

洗練された夜に訪れた小さな事件と、心に残る余韻。
二人の夜は、ワインの余香のように静かに続いていった。
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