夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~

世津路 章

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第1話 『魔法のカードでご招待、ウソみたいな夢の国!』

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   ◇◆◇

 その晩、風呂に入って、食器も片付けて、まぁ宿題は明日やることにして、俺は部屋にひっこんだ。スマホで家族のメッセージラインにおやすみのスタンプを投げてから、例のものを用意する。

 そう、放課後あのピエロにもらったカードだ。


「……まっ? キタイしてるわけじゃねーけど? 試してやるくらいなら、なぁ?」


 なんて、誰に向けて言ってるのか自分でもわからなかったけど、俺はいそいそと枕の下にカードを入れる。それからソッコーで電気を消して、ベッドにもぐりこんだ。

 おやすみ三秒が特技の俺は、今日もすぐさま眠りにつく。
 そのまま気づいたら朝になって……なんて、ことにはならなかった!


「……ん? おあっ?! なんだここ……!!」


 さっきパジャマを着て毛布をかぶって寝たはずの俺が、今はどこにいると思う?

 快晴の空に、ポンポンと打ちあがる花火!
 おとぎ話みたいな街並みと、三等身の動物マスコットたち!
 どこからか陽気な音楽が流れてきて、思わず心も体も踊りだす、まるでかの有名な夢の国みたいな――ん? 夢の、国?



「フウキー! こっちこっちー!」


 知ってる声が聞こえて、俺は振り返る。そしてすぐさま驚いた。


「えっ……おまえ、ミアかっ? そっちは……ホマレ、だよな!」

「フウキ、こんばんは……で、いいのかな?」


 ミアとホマレは、たしかにミアとホマレだけど……ふだん学校で見るのとは全然ちがうかっこうだった。

 ミアはカラフルなウエイトレスみたいな恰好で、なぜか頭に包丁のレプリカがぶっ刺さっている。全身に水色や黄緑で描かれた水玉は、よくみると、血ノリなのかこれ?

 ホマレは豪華なシルクハットとタキシード、手に持った杖はなんだか絵筆に似ている。ミアの格好がぶっとんでるからマトモに見えるけど、ファンタジーっぽさがあるデザインだ。

 それで気づいたけど、俺もパジャマ姿じゃなかった! まえに動画で見た音楽隊の一員みたいに、ピシッした衣装――へぇー、かっこいいじゃん!


「なんかフシギだよね。ミアたち、同じ夢見てるんだ!」

「こんなふうに、ミアやフウキと喋れるなんて、まるで起きてるみたいだよ」

「おいおい、これ、いったいどーいうことなんだ……?!」


 俺は辺りを見渡す。見るからに人間じゃないマスコット以外に、俺たちと同じような子どもが何人かいるみたいだ。

 そこで誰かが手をならし、俺たちはいっせいにそっちを見た。
 そして思わず、あっ! と叫んだ。


「ウェルカム、ボーイズ&ガールズ&クィアーズ! 夢いっぱい興奮いっぱい、楽しい楽しいゲームの世界へ」


 そう言って出迎えるように丁寧なおじぎをしたのは、あいつ――
 俺たちにあのカードを渡した、謎のピエロだった!

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