5 / 88
第1話 『魔法のカードでご招待、ウソみたいな夢の国!』
⑤
しおりを挟む◇◆◇
その晩、風呂に入って、食器も片付けて、まぁ宿題は明日やることにして、俺は部屋にひっこんだ。スマホで家族のメッセージラインにおやすみのスタンプを投げてから、例のものを用意する。
そう、放課後あのピエロにもらったカードだ。
「……まっ? キタイしてるわけじゃねーけど? 試してやるくらいなら、なぁ?」
なんて、誰に向けて言ってるのか自分でもわからなかったけど、俺はいそいそと枕の下にカードを入れる。それからソッコーで電気を消して、ベッドにもぐりこんだ。
おやすみ三秒が特技の俺は、今日もすぐさま眠りにつく。
そのまま気づいたら朝になって……なんて、ことにはならなかった!
「……ん? おあっ?! なんだここ……!!」
さっきパジャマを着て毛布をかぶって寝たはずの俺が、今はどこにいると思う?
快晴の空に、ポンポンと打ちあがる花火!
おとぎ話みたいな街並みと、三等身の動物マスコットたち!
どこからか陽気な音楽が流れてきて、思わず心も体も踊りだす、まるでかの有名な夢の国みたいな――ん? 夢の、国?
「フウキー! こっちこっちー!」
知ってる声が聞こえて、俺は振り返る。そしてすぐさま驚いた。
「えっ……おまえ、ミアかっ? そっちは……ホマレ、だよな!」
「フウキ、こんばんは……で、いいのかな?」
ミアとホマレは、たしかにミアとホマレだけど……ふだん学校で見るのとは全然ちがうかっこうだった。
ミアはカラフルなウエイトレスみたいな恰好で、なぜか頭に包丁のレプリカがぶっ刺さっている。全身に水色や黄緑で描かれた水玉は、よくみると、血ノリなのかこれ?
ホマレは豪華なシルクハットとタキシード、手に持った杖はなんだか絵筆に似ている。ミアの格好がぶっとんでるからマトモに見えるけど、ファンタジーっぽさがあるデザインだ。
それで気づいたけど、俺もパジャマ姿じゃなかった! まえに動画で見た音楽隊の一員みたいに、ピシッした衣装――へぇー、かっこいいじゃん!
「なんかフシギだよね。ミアたち、同じ夢見てるんだ!」
「こんなふうに、ミアやフウキと喋れるなんて、まるで起きてるみたいだよ」
「おいおい、これ、いったいどーいうことなんだ……?!」
俺は辺りを見渡す。見るからに人間じゃないマスコット以外に、俺たちと同じような子どもが何人かいるみたいだ。
そこで誰かが手をならし、俺たちはいっせいにそっちを見た。
そして思わず、あっ! と叫んだ。
「ウェルカム、ボーイズ&ガールズ&クィアーズ! 夢いっぱい興奮いっぱい、楽しい楽しいゲームの世界へ」
そう言って出迎えるように丁寧なおじぎをしたのは、あいつ――
俺たちにあのカードを渡した、謎のピエロだった!
0
あなたにおすすめの小説
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
異世界子供会:呪われたお母さんを助ける!
克全
児童書・童話
常に生死と隣り合わせの危険魔境内にある貧しい村に住む少年は、村人を助けるために邪神の呪いを受けた母親を助けるために戦う。村の子供会で共に学び育った同級生と一緒にお母さん助けるための冒険をする。
せかいのこどもたち
hosimure
絵本
さくらはにほんのしょうがっこうにかよっているおんなのこ。
あるひ、【せかいのこどもたち】があつまるパーティのしょうたいじょうがとどきます。
さくらはパーティかいじょうにいくと……。
☆使用しているイラストは「かわいいフリー素材集いらすとや」様のをお借りしています。
無断で転載することはお止めください。
荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~
釈 余白(しやく)
児童書・童話
今より少し前の時代には、子供らが荒川土手に集まって遊ぶのは当たり前だったらしい。野球をしたり凧揚げをしたり釣りをしたり、時には決闘したり下級生の自転車練習に付き合ったりと様々だ。
そんな話を親から聞かされながら育ったせいなのか、僕らの遊び場はもっぱら荒川土手だった。もちろん小学生最後となる六年生の夏休みもいつもと変わらず、いつものように幼馴染で集まってありきたりの遊びに精を出す毎日である。
そして今日は鯉釣りの予定だ。今まで一度も釣り上げたことのない鯉を小学生のうちに釣り上げるのが僕、田口暦(たぐち こよみ)の目標だった。
今日こそはと強い意気込みで釣りを始めた僕だったが、初めての鯉と出会う前に自分を宇宙人だと言う女子、ミクに出会い一目で恋に落ちてしまった。だが夏休みが終わるころには自分の星へ帰ってしまうと言う。
かくして小学生最後の夏休みは、彼女が帰る前に何でもいいから忘れられないくらいの思い出を作り、特別なものにするという目的が最優先となったのだった。
はたして初めての鯉と初めての恋の両方を成就させることができるのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる