夢の中で人狼ゲーム～負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが～

第５話 『ガチバトル！ 俺は負けねぇ、おまえも負けんな！』

②

　俺は今、現状維持ができた、それだけのことにすごく安心してる。でも、それだけなんだ。ここからどう攻めこむか、相手はどう打って出るか、考えるワクワク感が一切ない。

　だって投票で追い出されれば――狼に喰われれば――そいつは永遠に、この世界のどこにもいなくなってしまう。しかもその泥仕合を続けた果てに残るのは、プレイヤーを平らげて満腹になったＧＭのジュースだけ……。


　こんな楽しくもクソもないゲーム、絶対俺は認めない！


　とはいえ、同票による追放無効はあくまで時間稼ぎだ――バクストマック・ゲームを完全に壊すためには、本間先生が託してくれたあのまじないを使うしかない。

　たった一度だけ使えるラッパ吹きの力。だけどそれによって、本当にすべきウソとは、いったいどんなものなのか……俺はまだそのヒントすら掴めないでいる。

　そして、同じ手での時間稼ぎは多分もう通用しないだろう――俺の直感は、無情にもそう告げていた。


　　　◇◆◇


「まずは連絡事項だ――昨晩、オオカミに襲われたものは、いなかった」


　三度目のバクストマックで俺たちを出迎えたのは、ジュースのそんな報告だった。

　昨日と同じ７人が揃ってたからからわかっちゃいたけど、ＧＭから確定事項として伝えられると重みが違うな。

　ジュースが空々しく拍手する。問題はここからだ。


「狼投票の結果で追放者もでず、諸君ら七名のプレイヤーとふたたび会い見えることができたのは光栄の至り――しかし」


　そらきた、と俺は表情を変えずに心のなかで舌打ちする。


「ＧＭとしては、一刻も早く諸君らの願い叶う美しい日が訪うことを、望んでやまない！　かくして迅速なゲーム進行のためルール変更を提案する！」


　プレイヤーたちのざわめきを見こしたように、ジュースは続けた。


「『狼投票で同率一位が複数名いた場合、すべて追放する』――賛成する者は？」


　手を上げたのは竹内兄妹と中島。
　俺を含めたそれ以外のプレイヤーはだんまりだ。

　ジュースが一度手を下げるように言った。


「ふうむ、ばらけたねぇ。反対の諸君のご意見を聞こう」

「はいはいはーい！」


　俺はすかさず手を上げる。


「っつーか、ＧＭだからってゲーム中にルール変更とかありなの？　そんな話聞いてないんですけどー」