43 / 88
第6話 『入り口の向こう側――水鏡にうつるもの』
①
しおりを挟む「そうか――バクストマック・ゲームはそこまで進んだか」
「うん。っていっても、勝負はあらかたついてる。オオカミは2人、村人は……3人」
放課後、5年1組の教室。4時44分の結界のなか。
俺が本間先生に状況報告したいと言って、結界をしいてもらった。ここなら、俺たち以外に話がもれることがない。なにを話しても、大丈夫だ。
――マコトが、消えた。
正直、予想外だった。昨日の竹内の様子を見るに、今回も俺を狙ってくるだろうとタカをくくってた。だけど、朝学校に来て確認したら……どこにも、マコトの姿は見えなかった。図書委員の顧問にも聞いたけど、そんな子はいないって……。
俺は拳をじっと見つめた。『絶対、勝とうね』――そう言って、マコトと突きあわせた拳。
……俺は、勝つ。ぜんぶに勝つ。
それを再確認するために、こうして先生に報告することにしたんだ。人に話すのって、状況整理にはぴったりだからな。
「でも、ま、ラクショーだぜ! 残った村人のホマレもルリアも、俺に乗ってくれてる。狼陣営がヘイト溜めてる俺以外を狙う、なんて冷静さを残してたのは、ちょっと意外だったけどな! でも、それより問題なのは、いつ、どうやってラッパ吹きの力を使うか――」
「蒲帆、無理に笑わなくていい」
静かな声に、気づいたら俺は口を止めていた。
俺が目を向けると、先生は――まっすぐ、真剣に、俺を見つめていた。
「なにかあるのだろう、心に支えるものが。話してごらんなさい」
ああ、なんだ、さすがアクマの本間……ぜんぶ、お見通しか。
自分でもはぐらかしていた本音は頭のなかでぐちゃぐちゃ絡まっていたけど、俺はひとつひとつ、手繰り寄せて言葉にした。
「……なあ、先生知ってた? 2組の後藤先生、クラスのいじめをかばって教頭に叱られたんだって」
「それは、本当か……?!」
さすがに驚いたみたいで、本間先生は息を呑んだ。
「いや、寝耳に水だ。職員会議では、休職されたのはカードゲーム騒動が原因だと……しかし、その話にまちがいないとすれば、」
「……別に俺、だから自分は悪くないって言いたいわけじゃねーんだ」
俺はなんとなく、窓の外を見た。
「オトナだってそうやってウソをつく。だから俺だってついたっていいだろ? ……ずっと、ずーっと、そう思ってたんだ。それで、どーでもいいウソばっかあれこれつきまくった。先生が言う、軽いウソばっかり」
「…………」
「でも……今回は、それじゃいけない。つけるウソはたったひとつだけで――あのジュースを、負かさなきゃいけない」
これまでの、あのピエロの行動が頭をよぎった。
姿かたちもそうだけど、あいつがおぞましいのは、なによりも、あの得体のしれなさだ。
「先生の言ったとおり、あいつマジでズルいわ。昨日もいきなりルール変更なんて言い出してきたし――気づいてる、俺がなにかしようとしてるって。ゲームも終わりにさしかかってきた今、またどんな妨害しかけてくるかわからねぇ……でもマコトは言ったんだ。絶対勝とう、って」
俺は、握り締めた拳をじっと見つめる。
マコトと突きあわせたときの感覚は、まだ残っている。
そしてあのとき感じた重さは――もっと、ずっと、のしかかるようで。
0
あなたにおすすめの小説
こちら第二編集部!
月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、
いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。
生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。
そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。
第一編集部が発行している「パンダ通信」
第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」
片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、
主に女生徒たちから絶大な支持をえている。
片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには
熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。
編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。
この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。
それは――
廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。
これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、
取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。
こわモテ男子と激あま婚!? 〜2人を繋ぐ1on1〜
おうぎまちこ(あきたこまち)
児童書・童話
お母さんを失くし、ひとりぼっちになってしまったワケアリ女子高生の百合(ゆり)。
とある事情で百合が一緒に住むことになったのは、学校で一番人気、百合の推しに似ているんだけど偉そうで怖いイケメン・瀬戸先輩だった。
最初は怖くて仕方がなかったけれど、「好きなものは好きでいて良い」って言って励ましてくれたり、困った時には優しいし、「俺から離れるなよ」って、いつも一緒にいてくれる先輩から段々目が離せなくなっていって……。
先輩、毎日バスケをするくせに「バスケが嫌い」だっていうのは、どうして――?
推しによく似た こわモテ不良イケメン御曹司×真面目なワケアリ貧乏女子高生との、大豪邸で繰り広げられる溺愛同居生活開幕!
※じれじれ?
※ヒーローは第2話から登場。
※5万字前後で完結予定。
※1日1話更新。
※noichigoさんに転載。
※ブザービートからはじまる恋
その怪談、お姉ちゃんにまかせて
藤香いつき
児童書・童話
小学5年生の月森イチカは、怖がりな妹・ニコのために、学校でウワサされる怪談を解いてきた。
「その怪談、お姉ちゃんにまかせて」
そのせいで、いつのまにか『霊感少女』なんて呼ばれている。
そんな彼女の前に現れたのは、学校一の人気者——会長・氷室冬也。
「霊感少女イチカくん。学校の七不思議を、きみの力で解いてほしい」
怪談を信じないイチカは断るけれど……?
イチカと冬也の小学生バディが挑む、謎とホラーに満ちた七不思議ミステリー!
美少女仮面とその愉快な仲間たち(一般作)
ヒロイン小説研究所
児童書・童話
未来からやってきた高校生の白鳥希望は、変身して美少女仮面エスポワールとなり、3人の子ども達と事件を解決していく。未来からきて現代感覚が分からない望みにいたずらっ子の3人組が絡んで、ややコミカルな一面をもった年齢指定のない作品です。
【完】888字物語
丹斗大巴
児童書・童話
どこからでも読み始められる888字完結型のショートショート集。
・888字でコワイ話
・888字でミステリ
・888字でふしぎ
とっても怖~いお話もあります。
夜トイレに行けなくなっちゃうかも…!?
宇宙人は恋をする!
山碕田鶴
児童書・童話
【第2回きずな児童書大賞/奨励賞を受賞しました。ありがとうございました。】
私が呼んでいると勘違いして現れて、部屋でアイスを食べている宇宙人・銀太郎(仮名)。
全身銀色でツルツルなのがキモチワルイ。どうせなら、大大大好きなアイドルの滝川蓮君そっくりだったら良かったのに。……え? 変身できるの?
中学一年生・川上葵とナゾの宇宙人との、家族ぐるみのおつきあい。これは、国家機密です⁉
(表紙絵:山碕田鶴/人物色塗りして下さった「ごんざぶろ」様に感謝)
モブの私が理想語ったら主役級な彼が翌日その通りにイメチェンしてきた話……する?
待鳥園子
児童書・童話
ある日。教室の中で、自分の理想の男の子について語った澪。
けど、その篤実に同じクラスの主役級男子鷹羽日向くんが、自分が希望した理想通りにイメチェンをして来た!
……え? どうして。私の話を聞いていた訳ではなくて、偶然だよね?
何もかも、私の勘違いだよね?
信じられないことに鷹羽くんが私に告白してきたんだけど、私たちはすんなり付き合う……なんてこともなく、なんだか良くわからないことになってきて?!
【第2回きずな児童書大賞】で奨励賞受賞出来ました♡ありがとうございます!
化け猫ミッケと黒い天使
ひろみ透夏
児童書・童話
運命の人と出会える逢生橋――。
そんな言い伝えのある橋の上で、化け猫《ミッケ》が出会ったのは、幽霊やお化けが見える小学五年生の少女《黒崎美玲》。
彼女の家に居候したミッケは、やがて美玲の親友《七海萌》や、内気な級友《蜂谷優斗》、怪奇クラブ部長《綾小路薫》らに巻き込まれて、様々な怪奇現象を体験する。
次々と怪奇現象を解決する《美玲》。しかし《七海萌》の暴走により、取り返しのつかない深刻な事態に……。
そこに現れたのは、妖しい能力を持った青年《四聖進》。彼に出会った事で、物語は急展開していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる