夢の中で人狼ゲーム～負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが～

第７話 『とびこえてその先できみの声を聞く』

⑧

「な、なによぉ、そんな怒って……やっぱ図星なんじゃん、あんたらデキてんでしょぉー……!!」


　やっぱりこいつ、なにもわかってない！

　小３、同じクラスだったとき、ホマレをからかってたときからなにも変わってない……！

　気づいたら、おもいきり腕を振り上げていた……でもそれを、誰かが掴んで止める。


「……ありがとう、フウキ」

「ホマレ、止めんな！　こいつだけは絶対許さねぇ!!」

「君がどれだけ怒ってくれても……かなしいことに、こういう人にはなにを言ったって、届かない。僕の、おじいちゃんとおばあちゃんみたいに」


　ホマレ、そんな、泣きそうな顔……するなよ。

　俺のなかの怒りが、見る見るうちにしぼんでいく。やるせなくてなにも言えないでいる間に、ホマレがとつとつと、ふるえる声で話しだした。


「竹内さん、君はわけがわからないと笑うだろうけど……僕は、確かに女の子の身体に生まれついた。でも、女の子として振る舞うのも、扱われるのも、窒息しそうになるんだ」


　竹内妹はなにか言いたげにしていたが、俺が睨むと口を閉じた。
　ちょっとだけ、ホマレの声のふるえが治まる。


「男の子として振る舞っていると、少しは楽になる。だけど、他の男子みたいに乱暴な言葉づかいや行動をするのも、たえがたいんだ」


　ホマレは右手を胸にあてて、大切なものを確かめるように言った。


「僕は、僕が一番僕らしくいられる状態をずっと探している。お父さんもお母さんも、それでいいって言ってくれた。どんな僕でも、〝誉れ〟だって。だからそう名付けたんだって。そして――フウキとミアはその名前を、お父さんお母さんと同じように呼んでくれる。僕は、女の子でも男の子でもなく、東間ホマレ――そのままでいていいんだって、ふたりが思わせてくれたんだ。だから僕は、フウキを信じる。それだけなんだよ」