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エピローグ 『むかしむかし、はむかしの話』
③
しおりを挟む先生がため息まじりに言うので、俺は肩をすくめる。
「むしろ、なんでみんなにはないんだよ? ミアもホマレも、仲山先生が担任だって言うし」
「それが本来の、君たちの5年1組だ。私はこの街での潜入任務の間、怪しまれないように身分を偽造して先生となっていた。もちろん無断にではない、校長先生はCCCの協力者だ」
本当の担任だった仲山先生には、本間先生の任務中は体育教師ということに認識をカムフラージュしていたらしい。もっとも、そのあと2組でいろいろあって後藤先生の代理になったのは想定外だったみたいが。
「事件捜査中は君たちが私を怪しまないよう認識阻害のまじないをかけ、解決後は問題なく日常に戻れるよう、機密相当の記憶は封印させてもらった。そのあと、街全体に張りめぐらせていた捜査網結界を解除しているところに……君と出くわした、というわけだ」
「なあ、じゃあ、なんで俺の記憶は……?」
「私のかけたまじないがまだ残っていたかと思ったが――」
先生は俺を見て、ふむ、とうなずいた。
「どうやら、それはいつの間にか、君の力そのものとなっていたようだ。君は自分自身の意志で、君の自我を守れるようになったんだ」
「俺の力、そのもの――」
それを聞いて、俺はあるアイデアを思いつく。
「ってことはさ! 俺、素質あるんじゃね?! 先生みたいなエージェントになれるさぁ!」
「……私はもう、君の先生ではない。それにこんな仕事、就くもんじゃないさ」
「なんでだよ! 今回だって俺たちを助けて、」
「結果論だ、間に合わなかったかもしれない。いや……そもそも君の協力がなければ、我々はあの場にすら辿りつけなかった……!」
先生は片手で顔をおおい、苦々しく言う。
「ジュースに言われなかったか? ――CCCは、きれいなだけの組織じゃない。正義の味方なんかじゃあ、」
「それでも!」
俺の大きな声に、先生はハッとこちらを見た。
「こっちは憧れちまったんだっつーの! 言わせんなって恥ずかしい!!」
……言った途端に、顔から火が噴き出そうだ!!
俺はやぶれかぶれで、手にしていたブラックコーヒーのプルタブを開ける。
そのまま一気に飲みほ……すつもりが、ムリムリ! 苦すぎて飲めない!
俺コーヒー飲んだことないもん、それもブラックなんて!
「だ、大丈夫か、蒲帆」
うっ、先生が心配している……このままおめおめ引き下がれるか!
俺は覚悟を決めて、思いっきり缶をあおった。ドクドクと流れる苦いだけの汁。おかしい、こんなのわざわざ買って飲むとか大人は頭がどうかしている。
でも我に返ったら終わりだ、とにかくぜんぶ飲み下せ! よい子は絶対やるなよ!?
かくして無限に続くと思われたブラックコーヒーだったが、最後の一敵が俺の喉の奥に吸い込まれる。……勝った! 俺は勝ったぞ!! なんだか目がすげぇギラギラしてきた!!
勢いのまま立ち上がり、先生のまえにビシッと立つ。
「きれいじゃない? 上等じゃん! 俺が行って大掃除してやるよ、CCC!」
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