9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです

志野田みかん

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ごしょう!

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<俺様系マクシミリアンの醸し出す『デキる王太子感』ときたら……顔面力補正を差し引いても、まっとうすぎる……>

 アリーの全身を「じーん」が貫いた。まあこっちも風魔法を使っちゃいるんだが、隠密的にこっそり行使する魔法は、大舞踏会の流れを阻害しない。
 急病人が出ての治癒魔法なら話は別だが、ファーストダンス以降はどんどん踊る人数が増えるのだ。実際、四天王たちはそれぞれの婚約者の手を取って待機している。
 聖女ミアの空気を読まない行動は、周囲の貴族たちからもわりと白い目で見られていた。

《あの娘、心の中で『どういうこと? これってバグ?』とつぶやきましたよ》

 ティアラに貼りついている黒点アベルがつぶやく。

《また耳慣れない言葉だな。あの娘はごく自然にこの世界の言葉を話しているが、異世界にはあって、こちら側には存在しない概念なのだろうか?》

 ブローチたっくんが唸るように言った。

《あの娘が抱いている感情からすると、欠陥や不具合って意味ですかねえ。あ、光の天使が心にガードをかけました。しかしあの娘は心の声が煩すぎるので、光のクソどもに制御できるかどうか》
 
 ふん、と黒点アベルが鼻を鳴らす音が、アリーの心に直接響く。

<欠陥、不具合……聖女になったものの、ミアが思ったほどのフィーバーぶりではないことが、あの子の思い描くストーリーと違うということかしら>

 マクシミリアンとミアが、ダンスフロアの中央に立つ。ワルツの演奏が始まった。二人が優雅に踊り始め、今年デビューの娘たちとそのパートナーたちも一斉に踊り出す。 
 男らしい王太子と、この上なく美しい異世界の乙女。その組み合わせはまさに女性向け恋愛小説、男爵令嬢アリーとは違う意味で社交界に旋風を巻き起こすことは確実だ。
 なんたって国王夫妻、そしてオランドリア王国が保護と支援を行っているルーリシア教団が、聖女ミアの素晴らしい能力に激烈な期待を寄せているのだ。
 聖女ミアの筋書きでは、すべての貴公子はすべからく彼女に惹かれ、求婚する予定になっているはず。
 マクシミリアンがワルツに合わせてミアをリードする。彼の踊り方がとても洗練されているのは特訓のたまものだ。
 抱き合うように身体を寄せたがるミアを、優雅に導きながら節度を持った踊り方に矯正している。地獄のような日々を過ごしたかいがあった、とアリーはまた「じーん」となった。
 ミアは首をひねりながら、くるくる踊っている周囲のカップルたちを焦ったように見た。

<四天王たちが、ちっとも自分を見ないことに憤っているみたい。やっぱりあの子、他の『ルート』も同時に狙ってるんだわ>

 たしかに前回までの人生では、四天王たちは自分の婚約者との踊りにちっとも身が入らず、王太子と踊るミアをちらっちら見ていたっけ。
 しかし今回の四天王とアリーの親友たちは、それこそお互いしか目に入らないラブラブっぷりをご披露している。
 ミアはとりあえず目の前のマクシミリアンの心に入り込もうと決意したらしく、熱いまなざしを彼へと向けた。

<魅了魔法発動! しかしマクシミリアンにはきかなかった!>

 筋肉ガードがあるから大丈夫だろう、とは思いつつ、つい手に汗握ってしまった。
 マクシミリアンが超クールな顔で踊り続けているので、アリーはほうっと安堵の息を吐いた。
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