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さいしゅうしょう!
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飛び散る汗がダイヤモンドのように煌めく。燃え盛る情熱は太陽よりも熱い。アリーに引きずられるようにして筋トレを始めたアベルとマディロールは、スクワットを50回やったあたりでバテ始めた。
「無礼を承知で言いますが、魔王と智天使なのに軟弱すぎない?」
信じられない、という思いを込めたアリーの言葉に、マディロールが秒速で噛みついてくる。
『当り前だろ、普段運動なんかしてないんだから! しかもドリンク剤飲んで1週間寝ずに働いてたんだぞこっちはっ!』
いつもの裏山、マディロールががっくりと膝をつく。同時にアベルも膝をついて、四つん這いでいることも苦しいらしくごろんと土の上に転がった。
『だいたい、なんで好き好んで野外なんだ……』
『根性論は嫌いじゃないですが、自分の身に降りかかるとキッツいですね……』
『でも、こいつら筋肉で魔力増強したんだよな。もしかして光の天使や闇の使徒も、筋トレやったら強くなるのか……?』
マディロールが指先で目の辺りを押さえ、眉間に皺を寄せてアベルを睨みつける。
『やってみたらいいじゃないですか。堕天はせずに、あくまでも天界で上り詰めたいんでしょ。働き方を改革したいんでしょ。今の神って、ひいひいひい祖父さんたちが追い出された時の喧嘩相手ですよね? 長生きしすぎだと思うし老害極まってるし、そりゃ殺意の波動は感じますけど、だからといって魔界に丸投げされても困るんですよ』
『言っちゃ悪いが魔族も鈍ってると思うぜ? 種族としては同じものなんだから、お前らだってやろうと思えば回復魔法出せるはずなのに』
「そうなのっ!?」
お尻を後ろに突き出して重心を落とし、背中は曲げずに立ち上がるということを繰り返しながら、アリーは血沸き肉躍るのを感じた。アベルを見つめる目は、間違いなく肉食獣っぽいと思う。
『できませんよ! 魔界の現役世代は堕天四代目ですよ! しかも私エリートじゃなくて末端から魔王まで成り上がった身ですよ!』
「でもアベルから貰った魔法石かざしたら、マクシミリアンもおばあちゃんたちも元気になってたよ?」
『え? いやあの石にはそんな効果ありませんけど。単に魅了魔法を弾く防御効果が与えてあるだけで……』
スクワットのせいだけではなく、アリーの心臓が早鐘のように打ち始めた。これはもしかしてもしかすると、希望の光だったりするのでは?
マディロールが興味津々の表情で身を乗り出し、アベルの手を無断で握る。アベルはものすごく嫌そうな顔をしたものの、その手を振り払うことはしなかった。
『おい堕天使、お前先祖返りの兆候があるぞ。おかしいと思ったんだよ、人間に対して基本無関心で、気まぐれに相手するだけでオッケーなゆるゆる職場のくせして、このお嬢ちゃん達には妙に肩入れして。お前、末端だったころに公爵令嬢アリーシアの呼びかけに応じてるな?』
「そうなのっ!?」
お尻を何度も何度も上げたり下げたりしながら、アリーは叫んだ。
《ご主人、ここでバラされるのはアベル的には痛恨の極みだと思うから、一旦スクワット辞めてやろう》
たっくんのツッコミに、アリーはラストワンでスクワットをフィニッシュし、アベルの前に膝をついた。
「本当に? アベルって、わたしが処刑される瞬間まで側にいてくれた、あのひょろひょろで弱そうだった末端闇の使徒なの?」
『ひょろひょろで弱そうは余計です。まあアリーの第一回目の人生に限って言えば、私でした。時空から切り離された変な世界があるな、と興味本位で覗いたんです。べ、べつにアリーが可哀そうだと思ったから魔王まで上り詰めたわけじゃありませんからねっ!?』
アベルの突然のツンデレに「そうでしたか」とアリーとたっくんが同時にうなずいた。マディロールが爆笑する。それが嘲笑とか失笑ではなく純粋に楽しそうだったため、場の空気がちょっと和んだ。
『あーおもしれえ。悪いな堕天使、こういう時って『自分のためにそこまでっ!?』胸キュンするはずなのに、当の本人はスクワットしながら聞いてんだもんな』
『別にいいです。ていうか智天使、見た目は優雅なのに内面は俗っぽいですね』
マディロールが慰めるように肩に回してきた腕を、アベルはぺしっと手で払いのけた。気を取り直したような顔をして、両手を前にかざす姿が激烈に魔王っぽい。いや現役魔王だけど。
『ふむ、何となく出せそうな気がします。でもまだ無理ですね。しかし魔族としては痛恨の極み、ひとりの人間に肩入れしすぎたか……』
『ほらほら、必死になれよ。胎児だった頃の記憶を引っ張り出せ! 堕天使らが逃げちまったから天界は人手不足だし少子化だしで大変だったんだぞ、期待の無所属新人になってくれ!』
『だから魔族は追い出された側だって言ってんでしょうが! それに胎児の頃から生粋の堕天使ですよ!』
『いやマジで堕天使らが回復魔法思い出したら天界に新しい風が吹くって! ひゃっはー興奮してきたっ! こうなったら筋トレしようぜアベルっ!』
排他的なはずの天使が、無理やりのように魔王の肩を抱く。天使と悪魔ってもっと違う感じじゃなかったっけという感想も抱くが、不機嫌そうに顔をしかめるアベルの顔は、ちょっとだけ楽しそうだった。
「無礼を承知で言いますが、魔王と智天使なのに軟弱すぎない?」
信じられない、という思いを込めたアリーの言葉に、マディロールが秒速で噛みついてくる。
『当り前だろ、普段運動なんかしてないんだから! しかもドリンク剤飲んで1週間寝ずに働いてたんだぞこっちはっ!』
いつもの裏山、マディロールががっくりと膝をつく。同時にアベルも膝をついて、四つん這いでいることも苦しいらしくごろんと土の上に転がった。
『だいたい、なんで好き好んで野外なんだ……』
『根性論は嫌いじゃないですが、自分の身に降りかかるとキッツいですね……』
『でも、こいつら筋肉で魔力増強したんだよな。もしかして光の天使や闇の使徒も、筋トレやったら強くなるのか……?』
マディロールが指先で目の辺りを押さえ、眉間に皺を寄せてアベルを睨みつける。
『やってみたらいいじゃないですか。堕天はせずに、あくまでも天界で上り詰めたいんでしょ。働き方を改革したいんでしょ。今の神って、ひいひいひい祖父さんたちが追い出された時の喧嘩相手ですよね? 長生きしすぎだと思うし老害極まってるし、そりゃ殺意の波動は感じますけど、だからといって魔界に丸投げされても困るんですよ』
『言っちゃ悪いが魔族も鈍ってると思うぜ? 種族としては同じものなんだから、お前らだってやろうと思えば回復魔法出せるはずなのに』
「そうなのっ!?」
お尻を後ろに突き出して重心を落とし、背中は曲げずに立ち上がるということを繰り返しながら、アリーは血沸き肉躍るのを感じた。アベルを見つめる目は、間違いなく肉食獣っぽいと思う。
『できませんよ! 魔界の現役世代は堕天四代目ですよ! しかも私エリートじゃなくて末端から魔王まで成り上がった身ですよ!』
「でもアベルから貰った魔法石かざしたら、マクシミリアンもおばあちゃんたちも元気になってたよ?」
『え? いやあの石にはそんな効果ありませんけど。単に魅了魔法を弾く防御効果が与えてあるだけで……』
スクワットのせいだけではなく、アリーの心臓が早鐘のように打ち始めた。これはもしかしてもしかすると、希望の光だったりするのでは?
マディロールが興味津々の表情で身を乗り出し、アベルの手を無断で握る。アベルはものすごく嫌そうな顔をしたものの、その手を振り払うことはしなかった。
『おい堕天使、お前先祖返りの兆候があるぞ。おかしいと思ったんだよ、人間に対して基本無関心で、気まぐれに相手するだけでオッケーなゆるゆる職場のくせして、このお嬢ちゃん達には妙に肩入れして。お前、末端だったころに公爵令嬢アリーシアの呼びかけに応じてるな?』
「そうなのっ!?」
お尻を何度も何度も上げたり下げたりしながら、アリーは叫んだ。
《ご主人、ここでバラされるのはアベル的には痛恨の極みだと思うから、一旦スクワット辞めてやろう》
たっくんのツッコミに、アリーはラストワンでスクワットをフィニッシュし、アベルの前に膝をついた。
「本当に? アベルって、わたしが処刑される瞬間まで側にいてくれた、あのひょろひょろで弱そうだった末端闇の使徒なの?」
『ひょろひょろで弱そうは余計です。まあアリーの第一回目の人生に限って言えば、私でした。時空から切り離された変な世界があるな、と興味本位で覗いたんです。べ、べつにアリーが可哀そうだと思ったから魔王まで上り詰めたわけじゃありませんからねっ!?』
アベルの突然のツンデレに「そうでしたか」とアリーとたっくんが同時にうなずいた。マディロールが爆笑する。それが嘲笑とか失笑ではなく純粋に楽しそうだったため、場の空気がちょっと和んだ。
『あーおもしれえ。悪いな堕天使、こういう時って『自分のためにそこまでっ!?』胸キュンするはずなのに、当の本人はスクワットしながら聞いてんだもんな』
『別にいいです。ていうか智天使、見た目は優雅なのに内面は俗っぽいですね』
マディロールが慰めるように肩に回してきた腕を、アベルはぺしっと手で払いのけた。気を取り直したような顔をして、両手を前にかざす姿が激烈に魔王っぽい。いや現役魔王だけど。
『ふむ、何となく出せそうな気がします。でもまだ無理ですね。しかし魔族としては痛恨の極み、ひとりの人間に肩入れしすぎたか……』
『ほらほら、必死になれよ。胎児だった頃の記憶を引っ張り出せ! 堕天使らが逃げちまったから天界は人手不足だし少子化だしで大変だったんだぞ、期待の無所属新人になってくれ!』
『だから魔族は追い出された側だって言ってんでしょうが! それに胎児の頃から生粋の堕天使ですよ!』
『いやマジで堕天使らが回復魔法思い出したら天界に新しい風が吹くって! ひゃっはー興奮してきたっ! こうなったら筋トレしようぜアベルっ!』
排他的なはずの天使が、無理やりのように魔王の肩を抱く。天使と悪魔ってもっと違う感じじゃなかったっけという感想も抱くが、不機嫌そうに顔をしかめるアベルの顔は、ちょっとだけ楽しそうだった。
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