【完結済】悪役令嬢の妹様

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2章 気付けなかったフラグ

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 あれ以降、エリューシアの引き籠り具合も、警護ランクも上昇した。

 エリューシアの中身が年相応だったなら耐えられなかっただろうが、元々筋金入りのヒッキーオタクであった真珠深には全く問題が無い。
 それが良いかはどうかは、さておき、だが……。

 それもあって今の所、特に問題なく過ごせている。アイシアの5歳のお披露目会も、当然無事終了した。

 淡い水色のふんわりとしたドレスに、品よくシンプルなデザインで中央に少し大きめのサファイアをあしらった首飾り。深青の髪には魔法で作り出した青い薔薇の生花を刺し、サファイアの小石を揺れる様に散らし飾ったシアお姉様の姿を見た時、エリューシアは鼻血を吹くかと思った……ィェ、スミマセン、耐えきれず鼻血吹きました、悪いか……くそ。
 ふんわりと緩く波打つ髪はそのまま流していたので、耳飾りはあまり見えなかったが、首飾りと合わせたデザインになっていて、それもまた素晴らしかった。

 エリューシア自身は会には参加できないので、前日にシアお姉様の美麗ショットを脳内保管させてもらい、当日は自室で大人しくしていたのだが、やはりあんなことがあった為か、会そのものも、そこまで盛大に出来なかったようなのが悔やまれる。
 実の所、それで凹んでいたのだが、どうやら最初からあまり多くの貴族家に招待状を出しておらず、本当に身内だけに留めたようだ。
 困ったように笑いながら、母セシリアが凹むエリューシアに話してくれたのだが、あまり大きくしてしまうと、あちらもこちらもとなり、収拾がつかなくなるのだそうだ。
 まぁそれもそうか……あっちに招待状は出したのに、こっちには出さない、なんて出来ない訳で―――納得した。
 何より当のアイシア自身が盛大なのは拒否ったらしい。だったら何も言う事はない。


 それにしても平穏とは言え、エリューシアは不気味さも感じている。
 話せば心配させてしまうだろうから言った事はないが、例の件…噂の『う』の字もたっていないようなのだ。
 まぁ本当に銀色の人形と思って、そのまま忘れてくれるのなら良いのだが、そんなに都合良くいくだろうかと言う不安がどうしても拭えない。ニック達が怯えるほどの圧を持って問いただして来たらしいと聞いていたせいだろうが……。

 とはいえ悶々としていてもどうにかなるモノではないし、今出来ることをするのみだ。
 日々研鑽。




 そして時間は流れ―――


  ―――自己研鑽、事上磨錬、一意専心……ん? まぁ良い、兎に角自己鍛錬に励んだ。

 そんなある日、やっと中級魔法の許可を貰うことが出来た。
 今まで知らなかったが、邸の地下に魔法訓練場があるらしく、今後はそこで練習を行う予定だ。
 本当は誰かに師事した方が良いのだろうが、5歳のお披露目が済むまではそれもできない。なので父アーネストが暫くついてくれるらしい。

 ハスレーに案内されて一階の、奥まった部屋の更に奥にある扉を開けば、地下へと通じる階段が姿を現した。
 そのまま階下へ足を進めると、かなり広い空間が広がっている。
 結界が張られているらしく、途中少し抵抗を感じる場所があった。まぁ地下とは言え、魔法ぶっぱするのだから安全対策は必須だろう。
 空間の奥には的になる魔法人形らしいものが数台並んでいて、それを確認している人影があった。

「あぁ、エルル、きたね」

 父アーネストが早々に来ていたようだ。

「お父様、許可下さりありがとうございます」

 つい先ほどハスレーから許可が出た事を聞いただけだったので、まだ礼も何も言えていなかったのだ。

「本当はもっと早くに出しても良かったかもしれないが、エルルの身体はまだ小さいからね。
 とはいえそれだけの魔力を有しながらも、振り回される事なく安定させているようだから、まぁ大丈夫だろう。念の為、暫くは私が居る時だけの訓練になるが、それで構わないね?」
「はい」

 近づいてきた父を見上げながら頷けば、アーネストが優しく笑ってエリューシアの頭を撫でた。

「じゃあまずは思うようにやってごらん。
 ここはそのための場所だからね」

 父の許可が出た所で、訓練場の中央へ進み、的になる魔法人形に向き合う。
 知識は蓄えて来たし、これまで怠ることなく頑張ってきたが、初級以外を実際に発動させるのは初めてなので、微かな緊張を自分で感じる。
 それを振り払うように小さく息を吐けば、一気に集中した。

 グンとエリューシアを中心に魔力の風が渦巻く。
 淡く発光する長い銀髪が風に煽られ、まるで生き物のようにうねって舞い上がる。
 暴走させないように練り上げながら、視線も何も動かす事無く、方向を定め解き放つ。

 ドオオォォォォォンンン!!!

 的にされた魔法人形が数台、粉々に吹き飛んでいた。
 炎の魔法に風を複合させて、着弾範囲を広げたのがいけなかっただろうか。

「「「………」」」
「ぁ~、うん、流石エルルだね。気分が悪くなったりとかはないかい?」

 意識を取り戻すのは、アーネストが一番早かった。
 さっとエリューシアの様子を見た後、眉尻を困ったように下げて笑う。
 当のエリューシアはと言うと、少し放心していたらしく、父の声にも反応出来ず、ぼんやりとしてしまっていた。

「……………」
「エルル?」
「……ぁ……ぁっと…」

 気づけば粉砕された魔法人形は綺麗に片づけられ、新しいものが並んでいる。
 どういう機構になっているのか、何時か知る機会があるだろうか。

「大丈夫かい?」
「はい、その、ごめんなさい」

 流石に破壊してしまったのはマズかったかと謝れば、アーネストはけらりと笑う。

「その為の場所だと言ったろう? いくら壊しても構わない。
 だが、エルル……決して無理も無茶もしてはいけないよ? 人形はいくら壊しても構わないが、エルル自身を壊すようなことはしないでくれ、良いね?」
「はい」

 スミマセン、ゴメンナサイ、お父様の言いつけは守ります。だけど……



 ………だけど、魔法ぶっぱ、気持ちイイィィィィィィ!!!!!!



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