【完結済】悪役令嬢の妹様

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3章 フラグはへし折るもの、いえ、粉砕するもの

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【折角の綺麗な顔が台無しよ? さ、泣き止んで】

 綺麗なも何も、何もかもが白に覆われていて見える訳でもないだろうにと、そう思えば、くすりと笑みがこみ上げた。
 勿論『つもり』でしかないが、情報としてかどうなのかはわからないが、アマリアには伝わっているようだ。

【そうそう、エルルは笑顔が一番よ】
「…ありがと」
【それじゃぁ……どうしようかしら、伝えたい事は沢山あるのだけど、ありすぎてどれから伝えれば良いのか、わかんなくなっちゃってるわ。
 そうだわ、エルルから聞きたい事質問してくれる?】

 唐突に振られて、エリューシアも一瞬きょとんと呆けるが、直ぐに切り替えて、何か聞きたい事…と小さく零して考え込んだ。

「…………」
【…………】

 その後思いつくままに時間の許す限り質問していった。

 わかった事は守護神イヴサリア様は、世界の凍結に力の多くを使ってしまって、今は眠りについている事。その為アマリアが代わりにこうして伝えている事。
 ヒロインの振るった道具が、かなり危険なものと思われるという事。
 その道具の気配が感じられた後、いつもエリューシアは消息不明になっていたという事。
 サネーラたちが負った傷はその道具というか武器でつけられた物なので、普通の回復では効果がなかった事。
 その傷を癒したのは人々が『光の魔法』と呼んでいる力だという事。
 エリューシアが持つ属性魔法以外の力の事……ただこちらは、アマリアのフルネームを聞いた事で、ついそっちのけになり、殆ど聞けなかった。











 意識が浮上し、ゆっくり目を開けば見慣れた室内が見えた。
 夜なのか照明が絞られて薄暗いが、誰も居らず、一人であることが確認できた。とは言え、傍らにいつも置かれている水差しが見当たらなかったので、水の交換に立っているだけかもしれない。

 もっといろいろ聞きたい事はあったが、アマリアの家名を聞いて、つい心当たりがあった為にその話をしているうちに、白い闇の中でまた大地震に見舞われて、タイムアップとなってしまった。

(シモーヌが転生者かどうかとか、そう言うのも聞きそびれたわね、魅了の力を持ってるのかも……あぁ、聞き漏らしたことが多すぎるわ。
 自分が死にかけの状態とか聞いて、やっぱりテンパってたのかもしれないわね…。まぁ過ぎてしまった事は仕方ない。

 とりあえずシモーヌサイドは真っ黒って事は決定ね。

 傷口に黒い靄が纏わりつく様な武器が普通のものであるはずがない。女神様が危険視するのも当たり前で、特級呪物と言って良いわよね。そしてそれを所有して振り回している……その特級呪物の今わかっている作用は、傷の回復を出来なくする。
 勿論それだけでも十分厄介な代物ではあるけれど、シモーヌの狙いは私の銀髪なのよね? 私の気配が世界から消えた後、女神様にも追跡する事は出来なかったらしいから、私が誘拐された後、現れるヒロインとの因果関係は不明という事。
 仮に私の色を奪ったのだとしても、その方法も不明……神様は現世に介入する事は禁止事項のようだし、この世界のように崩壊すると分かっている場合でも、実際に世界を守るのは私たち人間で、神様達はその手助けしかできない。
 というか、その手助けするための仲介役の私にしか介入できない訳だから、その私が行方不明になれば手も足も出ないって事で、如何ともしがたい事態になるって事か…。

 となると特級呪物の事や魅了の事、他についても調べたり壊したりできないのも仕方ないのかな。だってそれをするのが私の役目だったはずだし……何とも歯痒い。

 ……はぁ、わからない事が増えただけな気がしなくもないわ。何にせよ油断できないって事ね。
 それにしても一体誰よ、そんな危ないものを世に出したのは……って、その辺りも私が調べないといけないのかしら……ぐぬぬ。
 今言っても始まらない、か…無事目覚めることが出来た事をまずは喜びましょ)



 ――ガチャン!!

 何かが割れた音に、ゆるりと首を巡らせれば、扉のことろでオルガが大粒の涙を浮かべて立ち尽くしていた。

「……ォ…ガ…」

 喉が張り付いたかのように、上手く声が出せず、ベッドに寝たまま顔を顰めるエリューシアに、立ち尽くしていたオルガが駆け寄り手を握りしめてきた。

「お嬢様、お嬢様!!……あぁ、神よ感謝します!!」

 握りしめて来るオルガの手が、堪える様に小さく震えていて、どれほど心配させてしまったのかと、顰めていた顔を更に顰める。

「お嬢様、何か飲まれますか? あぁ、水差しが……じゃない、誰か! 誰か!!  旦那様達に報せを!!」


 一番に駆け込んできたのはアイシア、ついで父母、他にもハスレーやネイサン、ナタリアにサネーラやドリス達の姿も見えた。もう全員集合ではないだろうか。
 皆涙ぐんで、エリューシアの目覚めを喜んでくれたが、聞けばどうやらエリューシアは倒れて以降、ずっと意識が戻らず、あれから既に3か月が経過していたという。5歳のお披露目会も当然おじゃんになっている。

(腕も何も痩せ細ってしまってたのも当然ね。というか3か月も良くまぁ飲まず食わずで生存できたわね…自分で自分に奇異の目を向けちゃうわ。
 ただシアお姉様も、お父様お母様も、何ならオルガ達使用人達まで窶れていたのは、とんでもない事よ)

 意識がなく食事もできずに衰弱していくかに思われたが、痩せ細りはしたものの、顔色はそこまで悪くなる事はなかったらしい。
 ずっと精霊が周りを囲んでいるのが皆にも見えていたようで、不安で仕方なかったが、加護を信じていたのだと聞かされた。
 だが容態は停滞したままで、誰もが信じて祈っていたけれど、どうしてもいつも通りには過ごせなかったらしい。

(アマリアも『死なせない』って言ってくれてたし、きっと彼女も何かしら支えててくれたのよね、きっと……でもまた会えるのは生死の狭間にまで落ちた時なのかしら……それは、困るわね)

 アマリアの事も調べて話したいが、その度に昏睡状態になるとなれば、流石に気が引ける。エリューシアは大事な皆に心労をかけたくなんてないのだ。
 しかもセシリアに至っては、一度は自分の命をとか叫んで自害しかけたらしい。
 折角家族全員生存ルートに入れるように頑張ってきたのに、それでは本末転倒過ぎる。
 エリューシアは誰一人欠けることなく未来を勝ち取るために、絶対に自分が犠牲になってはいけないのだと、今一度決意を新たにする。

 自分も必ず生きてハッピーエンドを迎えるのだと。





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