38 / 157
3章 フラグはへし折るもの、いえ、粉砕するもの
21
しおりを挟む【折角の綺麗な顔が台無しよ? さ、泣き止んで】
綺麗なも何も、何もかもが白に覆われていて見える訳でもないだろうにと、そう思えば、くすりと笑みがこみ上げた。
勿論『つもり』でしかないが、情報としてかどうなのかはわからないが、アマリアには伝わっているようだ。
【そうそう、エルルは笑顔が一番よ】
「…ありがと」
【それじゃぁ……どうしようかしら、伝えたい事は沢山あるのだけど、ありすぎてどれから伝えれば良いのか、わかんなくなっちゃってるわ。
そうだわ、エルルから聞きたい事質問してくれる?】
唐突に振られて、エリューシアも一瞬きょとんと呆けるが、直ぐに切り替えて、何か聞きたい事…と小さく零して考え込んだ。
「…………」
【…………】
その後思いつくままに時間の許す限り質問していった。
わかった事は守護神イヴサリア様は、世界の凍結に力の多くを使ってしまって、今は眠りについている事。その為アマリアが代わりにこうして伝えている事。
ヒロインの振るった道具が、かなり危険なものと思われるという事。
その道具の気配が感じられた後、いつもエリューシアは消息不明になっていたという事。
サネーラたちが負った傷はその道具というか武器でつけられた物なので、普通の回復では効果がなかった事。
その傷を癒したのは人々が『光の魔法』と呼んでいる力だという事。
エリューシアが持つ属性魔法以外の力の事……ただこちらは、アマリアのフルネームを聞いた事で、ついそっちのけになり、殆ど聞けなかった。
意識が浮上し、ゆっくり目を開けば見慣れた室内が見えた。
夜なのか照明が絞られて薄暗いが、誰も居らず、一人であることが確認できた。とは言え、傍らにいつも置かれている水差しが見当たらなかったので、水の交換に立っているだけかもしれない。
もっといろいろ聞きたい事はあったが、アマリアの家名を聞いて、つい心当たりがあった為にその話をしているうちに、白い闇の中でまた大地震に見舞われて、タイムアップとなってしまった。
(シモーヌが転生者かどうかとか、そう言うのも聞きそびれたわね、魅了の力を持ってるのかも……あぁ、聞き漏らしたことが多すぎるわ。
自分が死にかけの状態とか聞いて、やっぱりテンパってたのかもしれないわね…。まぁ過ぎてしまった事は仕方ない。
とりあえずシモーヌサイドは真っ黒って事は決定ね。
傷口に黒い靄が纏わりつく様な武器が普通のものであるはずがない。女神様が危険視するのも当たり前で、特級呪物と言って良いわよね。そしてそれを所有して振り回している……その特級呪物の今わかっている作用は、傷の回復を出来なくする。
勿論それだけでも十分厄介な代物ではあるけれど、シモーヌの狙いは私の銀髪なのよね? 私の気配が世界から消えた後、女神様にも追跡する事は出来なかったらしいから、私が誘拐された後、現れるヒロインとの因果関係は不明という事。
仮に私の色を奪ったのだとしても、その方法も不明……神様は現世に介入する事は禁止事項のようだし、この世界のように崩壊すると分かっている場合でも、実際に世界を守るのは私たち人間で、神様達はその手助けしかできない。
というか、その手助けするための仲介役の私にしか介入できない訳だから、その私が行方不明になれば手も足も出ないって事で、如何ともしがたい事態になるって事か…。
となると特級呪物の事や魅了の事、他についても調べたり壊したりできないのも仕方ないのかな。だってそれをするのが私の役目だったはずだし……何とも歯痒い。
……はぁ、わからない事が増えただけな気がしなくもないわ。何にせよ油断できないって事ね。
それにしても一体誰よ、そんな危ないものを世に出したのは……って、その辺りも私が調べないといけないのかしら……ぐぬぬ。
今言っても始まらない、か…無事目覚めることが出来た事をまずは喜びましょ)
――ガチャン!!
何かが割れた音に、ゆるりと首を巡らせれば、扉のことろでオルガが大粒の涙を浮かべて立ち尽くしていた。
「……ォ…ガ…」
喉が張り付いたかのように、上手く声が出せず、ベッドに寝たまま顔を顰めるエリューシアに、立ち尽くしていたオルガが駆け寄り手を握りしめてきた。
「お嬢様、お嬢様!!……あぁ、神よ感謝します!!」
握りしめて来るオルガの手が、堪える様に小さく震えていて、どれほど心配させてしまったのかと、顰めていた顔を更に顰める。
「お嬢様、何か飲まれますか? あぁ、水差しが……じゃない、誰か! 誰か!! 旦那様達に報せを!!」
一番に駆け込んできたのはアイシア、ついで父母、他にもハスレーやネイサン、ナタリアにサネーラやドリス達の姿も見えた。もう全員集合ではないだろうか。
皆涙ぐんで、エリューシアの目覚めを喜んでくれたが、聞けばどうやらエリューシアは倒れて以降、ずっと意識が戻らず、あれから既に3か月が経過していたという。5歳のお披露目会も当然おじゃんになっている。
(腕も何も痩せ細ってしまってたのも当然ね。というか3か月も良くまぁ飲まず食わずで生存できたわね…自分で自分に奇異の目を向けちゃうわ。
ただシアお姉様も、お父様お母様も、何ならオルガ達使用人達まで窶れていたのは、とんでもない事よ)
意識がなく食事もできずに衰弱していくかに思われたが、痩せ細りはしたものの、顔色はそこまで悪くなる事はなかったらしい。
ずっと精霊が周りを囲んでいるのが皆にも見えていたようで、不安で仕方なかったが、加護を信じていたのだと聞かされた。
だが容態は停滞したままで、誰もが信じて祈っていたけれど、どうしてもいつも通りには過ごせなかったらしい。
(アマリアも『死なせない』って言ってくれてたし、きっと彼女も何かしら支えててくれたのよね、きっと……でもまた会えるのは生死の狭間にまで落ちた時なのかしら……それは、困るわね)
アマリアの事も調べて話したいが、その度に昏睡状態になるとなれば、流石に気が引ける。エリューシアは大事な皆に心労をかけたくなんてないのだ。
しかもセシリアに至っては、一度は自分の命をとか叫んで自害しかけたらしい。
折角家族全員生存ルートに入れるように頑張ってきたのに、それでは本末転倒過ぎる。
エリューシアは誰一人欠けることなく未来を勝ち取るために、絶対に自分が犠牲になってはいけないのだと、今一度決意を新たにする。
自分も必ず生きてハッピーエンドを迎えるのだと。
55
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?
ラララキヲ
ファンタジー
わたくしは出来損ない。
誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。
それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。
水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。
そんなわたくしでも期待されている事がある。
それは『子を生むこと』。
血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……
政略結婚で決められた婚約者。
そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。
婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……
しかし……──
そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。
前世の記憶、前世の知識……
わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……
水魔法しか使えない出来損ない……
でも水は使える……
水……水分……液体…………
あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?
そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──
【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】
【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】
【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
心が折れた日に神の声を聞く
木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。
どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。
何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。
絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。
没ネタ供養、第二弾の短編です。
ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム
前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した
記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた
村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く
ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた
そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた
私は捨てられたので村をすてる
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。
【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する
影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。
※残酷な描写は予告なく出てきます。
※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。
※106話完結。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる