最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷

文字の大きさ
97 / 132

第95話 転移者の血を引く者

しおりを挟む
 樹は王都にある屋敷へと帰るとそのまま、ギルドへと向かった。
ギルドに入るとちょうどギルマスが出てきた。

「おお、樹じゃないか。どうかしたか。そんなに慌てて」
「俺が昨日、保護をお願いした子ってどこに居ますか?」
「ああ、その子なら孤児院に預けたよ」
「どこの孤児院ですか?」
「ここだ」

 ギルマスは懐からメモ帳を取り出すと住所を書いて樹に渡した。

「ありがとうございます」

 メモを受け取ると樹はギルドを飛び出した。

「全く、慌ただしいな。珍しいこともあるもんだ」

 ギルマスから教えてもらった孤児院までは歩いてすぐであった。

「すみません。ここに昨日からお世話になっている紫色の髪の子いますか?」

 樹は孤児院の女性職員に声を掛けた。

「ああ、ナナちゃんのことね」
「え、彼女、名前を名乗ったんですか?」
「ええ、ところで、あなたは?」
「昨日、彼女を保護した綾瀬と申します」
「え、あ、これは失礼しました。お会いになられます?」
「是非」
「では、こちらへどうぞ」

 女性職員により、孤児院のロビーのようなところで待たされた。
数分後、昨日の少女は女性職員に連れられてやってきた。

「昨日はろくに挨拶もしないで悪かったな。綾瀬樹という。まあ、座ってくれ」

 樹はナナもソファーに座るように促した。

「あの、昨日はありがとうございました」
「いやあ、気にすんなよ」

 ナナはソファーに腰を下ろした。

「単刀直入に聞くぞ。昨日、俺はスキルをジャミングされた。君、転移者か?」

 そう聞くとナナの表情はわずかに強張った。

「何、そんなに怖がらなくてもいい。実を言うとな、俺は転生者だ」
「え、ほ、本当ですか?」
「ああ、普段は転生者ということは隠して生活しているがな」
「し、信じてもいいんですよね?」
「もちろんだ。話してくれるか?」
「はい」

 ナナはぽつぽつと話始めた。

「正確に言いますと私は転移者ではありません。私の母が転生者でした。この髪の色は遺伝です」
「そうだったのか……」
「母はそれはもう強い魔術師だったそうです。しかし、私がまだ幼い時、国への反逆という無実の罪を着せられ、殺されました」

 ナナは目を伏せた。

「それはどこの国だ?」
「分かりません。私はまだ幼かったですし、気付いた時には奴隷としてこの国に売り飛ばされていました」
「大変な思いをしてきたんだな。もし、良かったらうちに来ないか? うちに居れば基本安全だし、使用人として報酬も支払う」

 樹はナナに提案した。

「そんな、よろしいですか?」
「ナナさえよければだけどな」
「私は、是非お願いしたいです」
「よし、決まりだな」

 樹は孤児院の院長と話し、ナナを引き取ることに決めた。
樹の身元は国から保証されているため、すんなりと引き取ることを許可された。

「よし、一緒に帰ろう」
「ありがとうございます」

 こうして樹は転移者の血を引くナナを屋敷に迎え入れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

処理中です...